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第七章 もう一度
第八十九話 怒り
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「やれやれ。挑発にすらなっていないハズの言葉に乗ってくれるなんてね」
「黙れぇぇぇぇッ!」
ロディアは空中を飛び回りながら、マーズさんの攻撃をギリギリで躱している。
さながら虫取り網で飛び回るトンボを捕まえようとする子供のように振り回されているが、その刃に込められた殺意は明らかなものであった。
「当たらない当たらない。そもそも、僕は空を飛んでるんだよ?当たる訳ないじゃん」
「くそッ……降りて来い、卑怯者!」
「卑怯なんかじゃあないさ。正当な戦法だとも」
マーズさんに空を飛ぶ力は無い。
それどころか、ファーリちゃんのように木々の合間を飛び回ることもできず、飛ぶ敵を落とす技があるでも無いマーズさんに、もはや打つ手は無いように思えた。
しかし。
「おぉぉぉぉぉぉぉらァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」
マーズさんは、愛用の大剣をロディアめがけて投擲した。
「うぉぉ、っと……!?よ、避けきれない……!」
使い慣れているマーズさんであっても、片手で振り回すことが容易では無い程に重い大剣は、ゆうに槍投げを超える速さでロディアへ飛んで行く。
その刃がロディアの肉体に触れることは無かったが、回避したロディアが持っていた杖の先端を見事に砕いた。
「杖、粉々になってる」
杖を失ったロディアは、そのまま木々の合間を落ちて行き、しかしストンと着地する。
「や、やるね……今のは流石に想定外だったよ.ただ、今分かったことがある。そして、期待すべきことも。……君ごときに興味なんか無いという発言は、取り消さないといけなさそうだ。今になって初めて、君に興味が湧いてきたよ」
「フン、今更謝ったところで遅い!畳みかけてやるぞッ!」
武器を失ったマーズさんは、しかし両手の拳を握りしめて、更にロディアとの距離を詰めた。
一方で杖を失ったロディアだが、何も無かったかのように右手を突き出して呪文を唱え始める。
「さあ、来なよ。【デモンアーマー】!」
そして、ロディアは闇の魔力を全身に纏って武装した。
しかし、マーズさんを相手に「飛ぶ」という選択をしていないということは、魔力の面に難があるのだろうか、或いは杖が無いと空を飛ぶことができる魔法を制限されてしまうのか。
少なくとも、ロディアに何かしらの制限がかかっていることは間違い無いとみて良いだろう。
そして、それにマーズさんも気づいていたのか。
「はァァァァァッ!」
ロディアが飛び上がる可能性を捨て、一切の意識を空中へやらず、目の前に立つ裏切り者へ拳を叩き込んだ。
「……それで、攻撃したつもり?」
しかし闇の魔力に防がれ、マーズさんのパンチは全くもって意味を為さない。
「なっ」
「パンチっていうのはね。こうやるんだよ、マーズ?」
「べぁっ」
そして、瞬時に突き出されたロディアの右腕は、マーズさんの腹部を抉るように食い込んだ。
「口ほどにも無いね。でも、君は僕が持った興味を裏切らない結果を見せてくれたよ」
「がはぁっ、がぁ……な、何、を……」
重傷を負ったマーズさんに、ロディアが吐いた言葉。
「君は……自分の無力も、無能も、無関係も自覚できない、やる気と礼節くらいしか脳が無い、滑稽な戯けだと、その度合いが……僕の予想以上だったと思ったって、ただそれだけだよ。いやいや全く、面白くってしょうがないや」
「貴、様……!ま、だ、愚弄、するか……!」
「当然さ。君がパーティの中で、一番甘っちょろいからね」
「……ッッッ!そ、そんな、こと、が……ぁ」
それは、戦闘の続行が不可能になってしまったマーズさんが持つ、騎士の娘として抱いてきたプライドを粉々に打ち砕くものであった。
「黙れぇぇぇぇッ!」
ロディアは空中を飛び回りながら、マーズさんの攻撃をギリギリで躱している。
さながら虫取り網で飛び回るトンボを捕まえようとする子供のように振り回されているが、その刃に込められた殺意は明らかなものであった。
「当たらない当たらない。そもそも、僕は空を飛んでるんだよ?当たる訳ないじゃん」
「くそッ……降りて来い、卑怯者!」
「卑怯なんかじゃあないさ。正当な戦法だとも」
マーズさんに空を飛ぶ力は無い。
それどころか、ファーリちゃんのように木々の合間を飛び回ることもできず、飛ぶ敵を落とす技があるでも無いマーズさんに、もはや打つ手は無いように思えた。
しかし。
「おぉぉぉぉぉぉぉらァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」
マーズさんは、愛用の大剣をロディアめがけて投擲した。
「うぉぉ、っと……!?よ、避けきれない……!」
使い慣れているマーズさんであっても、片手で振り回すことが容易では無い程に重い大剣は、ゆうに槍投げを超える速さでロディアへ飛んで行く。
その刃がロディアの肉体に触れることは無かったが、回避したロディアが持っていた杖の先端を見事に砕いた。
「杖、粉々になってる」
杖を失ったロディアは、そのまま木々の合間を落ちて行き、しかしストンと着地する。
「や、やるね……今のは流石に想定外だったよ.ただ、今分かったことがある。そして、期待すべきことも。……君ごときに興味なんか無いという発言は、取り消さないといけなさそうだ。今になって初めて、君に興味が湧いてきたよ」
「フン、今更謝ったところで遅い!畳みかけてやるぞッ!」
武器を失ったマーズさんは、しかし両手の拳を握りしめて、更にロディアとの距離を詰めた。
一方で杖を失ったロディアだが、何も無かったかのように右手を突き出して呪文を唱え始める。
「さあ、来なよ。【デモンアーマー】!」
そして、ロディアは闇の魔力を全身に纏って武装した。
しかし、マーズさんを相手に「飛ぶ」という選択をしていないということは、魔力の面に難があるのだろうか、或いは杖が無いと空を飛ぶことができる魔法を制限されてしまうのか。
少なくとも、ロディアに何かしらの制限がかかっていることは間違い無いとみて良いだろう。
そして、それにマーズさんも気づいていたのか。
「はァァァァァッ!」
ロディアが飛び上がる可能性を捨て、一切の意識を空中へやらず、目の前に立つ裏切り者へ拳を叩き込んだ。
「……それで、攻撃したつもり?」
しかし闇の魔力に防がれ、マーズさんのパンチは全くもって意味を為さない。
「なっ」
「パンチっていうのはね。こうやるんだよ、マーズ?」
「べぁっ」
そして、瞬時に突き出されたロディアの右腕は、マーズさんの腹部を抉るように食い込んだ。
「口ほどにも無いね。でも、君は僕が持った興味を裏切らない結果を見せてくれたよ」
「がはぁっ、がぁ……な、何、を……」
重傷を負ったマーズさんに、ロディアが吐いた言葉。
「君は……自分の無力も、無能も、無関係も自覚できない、やる気と礼節くらいしか脳が無い、滑稽な戯けだと、その度合いが……僕の予想以上だったと思ったって、ただそれだけだよ。いやいや全く、面白くってしょうがないや」
「貴、様……!ま、だ、愚弄、するか……!」
「当然さ。君がパーティの中で、一番甘っちょろいからね」
「……ッッッ!そ、そんな、こと、が……ぁ」
それは、戦闘の続行が不可能になってしまったマーズさんが持つ、騎士の娘として抱いてきたプライドを粉々に打ち砕くものであった。
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