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第八章 終末のようなものについて
第百三話 悩める射手 前編
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翌日、夕暮れ時。
講義を受け終えた俺とガラテヤ様は、ケーリッジ先生に呼び出され、訓練場まで向かった。
私用であるとのことだったが……何だろうか。
少なくとも、ケーリッジ先生に怒られるようなことはしていないつもりだが……。
「この間ぶりね。ジィンさん、ガラテヤさん」
「先日はありがとうございます、ケーリッジ先生」
「構わないわ。私も有事の際には備えておきたいとは思っていたし」
「ところで……私達が呼び出された理由について、伺ってもよろしくって?」
「そうね、早速本題に入るわ」
ガラテヤ様に促されたケーリッジ先生は、壁に立てかけていた長弓を手に取った。
「どうしたんですか、いつもクロスボウ使ってたのに」
「それが本題よ。私、昔の怪我が原因で、左腕と左脚が上手く動かなくて。だからロングボウは家に置いて、クロスボウを使い始めたの。でも戻れるならば、またロングボウを使いたいと思ってる」
「入学前から、長弓の名手だというお話は耳にしていたわね」
そういえば、まだ若いのに冒険者養成学校の先生をやっているのは、後遺症のせいで激しくは戦えなくなってしまったからだとか言っていたような。
信頼できる相手だからとはいえ、即応性重視のパーティに加わって欲しいと、特に意識していなかったとはいえ学生の立場から頼んで、こうして実際に加わってもらってしまった。
彼女には、悪いことをしまったかもしれない。
「……はは、そう言ってくれる人もいたわね。でも私なんか、まだまだよ。……まだまだなのに、まともに弓を引けなくなった。クロスボウが嫌いって訳じゃない。でも、やっぱり……長弓を引きたいの」
「は、はぁ」
どうしよう、一向に話が見えてこない。
そんなに深刻そうで、医療が関わりそうな悩みに、俺達がどう協力できるというのだろうか。
「そこで、お願いがあるの。……バグラディさんと、アドラさん?って武器職人の人よね。その二人を呼んで欲しいの」
「これまた意外な面子ね。よりによって、どうしてその二人を?」
「アドラさんは、言わずもがな武器職人でしょ?そして、バグラディさんは革命団に関わっていた。……強化人間について、何か知ってるかも」
「ああ、その件なんですけど……バグラディ、どうやら知らなかったみたいなんですよ」
「えっ、そうなの」
「はい。だから、聞いても無駄だと思います。……というか、何でその二人を?」
「私の腕を機械で補助できるかもしれないと思って。勿論、それにいつまでも頼るつもりではないけれど……背に腹は変えられないでしょ?」
バグラディが強化人間の技術を覚えていたとても、それを使ってパワードスーツを作ろうとしていたということだろうか。
現役時代からなのだろうか、この人、中々に手段を選ぶということを知らないのかもしれない。
「でも、これで私達にできることは無くなってしまったのだけれど……」
「いや、まだ心当たりならあるわ」
「な、何ですか」
前科があるだけに、次の言葉を聞くことに若干の抵抗がある。
「カルテューナ錬金術研究所跡。そこに行けば、或いは」
また物騒な言葉を。
カルテューナ錬金術研究所といえば、ファーリちゃんを探す時に寄って、マーズさんがテーブルを壊しかけたところである。
一体、その錬金術の残りカスを使って何をする気なのやら。
ケーリッジ先生のことだ、悪いことではないのだろうが……少し危険な香りがする。
しかし、ここで変に止める訳にもいかない。
俺達は数日間、学園に顔を出せないことを先生達に伝えた。
そして念のため、強化人間であるファーリちゃんも連れ、明日からカルテューナ錬金術研究所跡へ向かうこととなった。
講義を受け終えた俺とガラテヤ様は、ケーリッジ先生に呼び出され、訓練場まで向かった。
私用であるとのことだったが……何だろうか。
少なくとも、ケーリッジ先生に怒られるようなことはしていないつもりだが……。
「この間ぶりね。ジィンさん、ガラテヤさん」
「先日はありがとうございます、ケーリッジ先生」
「構わないわ。私も有事の際には備えておきたいとは思っていたし」
「ところで……私達が呼び出された理由について、伺ってもよろしくって?」
「そうね、早速本題に入るわ」
ガラテヤ様に促されたケーリッジ先生は、壁に立てかけていた長弓を手に取った。
「どうしたんですか、いつもクロスボウ使ってたのに」
「それが本題よ。私、昔の怪我が原因で、左腕と左脚が上手く動かなくて。だからロングボウは家に置いて、クロスボウを使い始めたの。でも戻れるならば、またロングボウを使いたいと思ってる」
「入学前から、長弓の名手だというお話は耳にしていたわね」
そういえば、まだ若いのに冒険者養成学校の先生をやっているのは、後遺症のせいで激しくは戦えなくなってしまったからだとか言っていたような。
信頼できる相手だからとはいえ、即応性重視のパーティに加わって欲しいと、特に意識していなかったとはいえ学生の立場から頼んで、こうして実際に加わってもらってしまった。
彼女には、悪いことをしまったかもしれない。
「……はは、そう言ってくれる人もいたわね。でも私なんか、まだまだよ。……まだまだなのに、まともに弓を引けなくなった。クロスボウが嫌いって訳じゃない。でも、やっぱり……長弓を引きたいの」
「は、はぁ」
どうしよう、一向に話が見えてこない。
そんなに深刻そうで、医療が関わりそうな悩みに、俺達がどう協力できるというのだろうか。
「そこで、お願いがあるの。……バグラディさんと、アドラさん?って武器職人の人よね。その二人を呼んで欲しいの」
「これまた意外な面子ね。よりによって、どうしてその二人を?」
「アドラさんは、言わずもがな武器職人でしょ?そして、バグラディさんは革命団に関わっていた。……強化人間について、何か知ってるかも」
「ああ、その件なんですけど……バグラディ、どうやら知らなかったみたいなんですよ」
「えっ、そうなの」
「はい。だから、聞いても無駄だと思います。……というか、何でその二人を?」
「私の腕を機械で補助できるかもしれないと思って。勿論、それにいつまでも頼るつもりではないけれど……背に腹は変えられないでしょ?」
バグラディが強化人間の技術を覚えていたとても、それを使ってパワードスーツを作ろうとしていたということだろうか。
現役時代からなのだろうか、この人、中々に手段を選ぶということを知らないのかもしれない。
「でも、これで私達にできることは無くなってしまったのだけれど……」
「いや、まだ心当たりならあるわ」
「な、何ですか」
前科があるだけに、次の言葉を聞くことに若干の抵抗がある。
「カルテューナ錬金術研究所跡。そこに行けば、或いは」
また物騒な言葉を。
カルテューナ錬金術研究所といえば、ファーリちゃんを探す時に寄って、マーズさんがテーブルを壊しかけたところである。
一体、その錬金術の残りカスを使って何をする気なのやら。
ケーリッジ先生のことだ、悪いことではないのだろうが……少し危険な香りがする。
しかし、ここで変に止める訳にもいかない。
俺達は数日間、学園に顔を出せないことを先生達に伝えた。
そして念のため、強化人間であるファーリちゃんも連れ、明日からカルテューナ錬金術研究所跡へ向かうこととなった。
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