四つの前世を持つ青年、冒険者養成学校にて「元」子爵令嬢の夢に付き合う 〜護国の武士が無双の騎士へと至るまで〜

最上 虎々

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第八章 終末のようなものについて

第百十五話 先駆者

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 全弾命中。

 用意されていた十五の的にビームを命中させたのは、拳銃を持って三分後のことであった。

「お、お疲れさま、ジィン……?」

「つ、使いにくかった……」

 流石に、ビームガンを使ったのは初めてであった。
 反動は実弾のそれよりも弱いものの、射出されるビームがいわゆる魔力の塊であるため、思うように真っ直ぐ飛ぶ訳でもなく、最初の数発は、その勝手に悩まされたものであった。

 そしてもう一つ問題であったのは、おそらく時間制限があったであろうということ。
 だんだんと熱くなっていくビームガンは、少し銃身を休めようとビームの発射を止めても熱くなる一方であり、おそらくノコノコと冷却を待っていようものなら、その場で爆発四散。
 馬車で待機しているメイラークム先生とアドラさんを除いて、パーティ全滅も大いにあり得ただろう。

 おそらく洞窟へ入り、帰ってきた者がいないというのは、ビームガンどころか拳銃の使い方が分からないまま時間をロスしてしまったということになるのだろう。

 壁面には、何かの衝撃もとい、時間切れによるビームガンの爆発によって削られたのであろう跡がいくつもみられる。

 それにしては、あたかもこの仕掛けが施された当初から同じビームガンを使っていると言わんばかりに鎖へ繋がれていたものだが……人が死ぬ程の威力で魔力か何かを爆発させても壊れないほど、ビームガンが丈夫であるということの証明になるのだろうか。 

 いずれにせよ、この世界には無いか、失われた技術の産物であることは、これでハッキリした。

 さて、喜んでいる間もなく、破壊した的の奥に見えた扉が開錠され、自らそれを開く。

「おお、これはこれは……先程から、驚きの連続ですな。心臓が持つと良いのですがな」

 俺とガラテヤ様が先導し、一同は扉の奥へ。

 すると、そこには見慣れたものに限りなく似た内装の部屋が現れた。

 現代日本の、俺達が幼かった頃にあたる家電……に似た物の数々。
 しかし、それらのような機能はついていないようであり、またかなり風化しているようであることから、あくまでも、かつての故郷が恋しくて作ってしまったというような、ガワだけの飾りであると思われる。

「この見た目……二人が言ってた世界の。ジィンお兄ちゃんとガラテヤお姉ちゃんが、『そうじゃなかった頃』のもの……?」

 ファーリちゃんは、俺とガラテヤ様の話から、それがすぐに前世の世界にあるものだと理解したようだ。

 対ロディア用のパーティ、つまり今回の旅に同行しているメンバーでのみ共有されている前世の情報。

 ファーリちゃんを皮切りに、他のパーティメンバーも続々と、俺とガラテヤ様の前世に存在したものらしいと気づいた。

 しかし、その中にあれば浮くような、古びた封筒が一つ。

「ん……?なにこれ、手紙?」

「よ、読んでみるか……」

 家電モドキもそうだったが、封筒はより一層風化していることから、中の紙に書かれているであろう文字は読めるか心配だったが……何とか、読める程度には状態が残っていたようで一安心。

 手紙は今から百年近く前の、前世からしてみれば戦前程度の古めかしさを感じる文体で記されていた。

 そこに書かれていたのは、間違いなく前世を同じ世界で生きた人間の言葉。

 使命に心を打ちひしがれた、嘆きの言葉であった。
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