四つの前世を持つ青年、冒険者養成学校にて「元」子爵令嬢の夢に付き合う 〜護国の武士が無双の騎士へと至るまで〜

最上 虎々

文字の大きさ
141 / 177
第九章 在るべき姿の世界

第百三十一話 未来、或いは過去の力 その四

しおりを挟む
 石碑ゴーレムが倒れ、砕けると同時に、地面が微かに光ったような気がした。

「風が反応してんなァ……。この辺りから……?うおおッ!?」

 皆が視線を向けている辺りの地面は、徐々にモコモコと雪が膨れ上がる。
 そして、地中から雪を喰い破るように、石碑ビットが姿を現した。

「で、出たッ!私の足元からもだッ!確かに光っている所から、石碑が飛び出してきたぞッ!」

「マーズ!これは……霊脈から湧いているのかしら……?魔物みたいに、ロボットが……?」

「ううん。魔物とは、出てくる時の様子が違う。下に、霊脈とは別の……石碑を出すための倉庫みたいなのがある。どうする、ジィンお兄ちゃん?」

「そんなの決まってる!ビットが湧いてくる場所が分かったんだ。すぐに……」

「「「「すぐに……?」」」」

「ここを離れる!さあ逃げるんだ!俺がいいって言うまで、後ろに走り続けろッ!」

「「「「ええっ!?」」」」

 俺達は一斉に後方へ走り出す。
 追いかけてくる石碑ビットの攻撃を避けながら、ただただ霊脈から遠ざかるように逃げ続けた。

 石碑ビットの多くは再び石碑ゴーレムへと合体し直し、残りの合体に使われなかった石碑ビット達と一緒に、雪を崩しながらこちらへ走ってくる。
 しかし、逃げ続けること十分程度。

「……そろそろか」

「どうしたの、ジィン?」

「今に分かりますよ。……皆!そろそろ止まっても良いぞー!」

「お、そうなのか!?でも石碑が……あれ?」

「あ?あの石ころ共……突然動きを止めやがって……どうしたってんだァ?」

 突然、石碑ゴーレム達が移動を止め、こちらを見つめたまま動かなくなった。

「もしかして、ここ……霊脈から遠い?」

「ファーリちゃん、大正解!霊脈から俺達が離れたことで、あいつらが動きを止めて、そのまま攻撃もしてこなくなったってことは……ここはテリトリーの外とみて間違いない。そして霊脈が石碑の動力に関係してるってのも、ビットが霊脈の近くから湧いてきたってことも踏まえれば、多分そうだと思う。……つまり」

「つまり、何だよ?」

「ここは、少なくともさっきの場所よりかは俺達に有利ってこと。何なら、攻撃し放題な可能性もあるってことだッ!」

 俺は両手に風の弾丸を作り出し、放つ。
 それは石碑ゴーレムの胴体に命中し、石碑ゴーレムは思い出したかのようにこちらを再び攻撃しようと拳を振り上げるが、明らかに動きが鈍っていた。

 当然、今もオバケになったままの俺にその攻撃は効かない。
 すると、石碑ゴーレムは再び思い出したかのように、霊の魔力を両手に溜め始めた。

「そうはさせないわ。撃たれる前に、その腕……粉々にしてあげる」

 しかし、ビームにしてそれを放たれる前に、ガラテヤ様は高く飛び上がり、風を纏った右脚で石碑ゴーレムの左手を砕いた。

「ピギギギギギ、ギギギ、ギギ」

「隙アリだッ!」

 そして石碑ゴーレムがよろめいている間に、マーズさんが大剣を振るい、辺りの地面ごと石碑ゴーレムを再びビットへと分離させた。

「さあて、決めにかかろうぜェ……!」

 多くのビットが、しかしどれも力無く飛び回っている今、まさにその時は訪れる。

「……ピキュキュキュ、キュウウウン」

 バグラディが構えた斧を振り下ろすまでもなく、俺達の周りを確かに飛び回っていたハズの石碑ビット達は、一斉に動きを停止する。

「……ああ?……ンだよ、拍子抜けしちまうじゃアねェか」

 俺達が逃げている間に、ビームをばら撒きすぎたことが原因だろう。
 やはり石碑ビットにバッテリー的なものは積まれておらず、エネルギー供給源である霊脈から離れ過ぎてしまった奴らは、身体中に残っていた魔力を全て俺達への攻撃に割いてしまったばかりに、エネルギー切れを起こしてしまったのだ。

 俺達は武器を納め、拠点へと歩き出す。
 さほど距離は離れていない。
 
 方向は風で探ればすぐに分かるだろう。
 俺達は雪道へ足を踏み出し、そして数十分後。

「……あれ、どうしたんですか」

 俺達は、何故かこちらへ向かって歩く先生達に遭遇するのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~

こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』 公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル! 書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。 旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください! ===あらすじ=== 異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。 しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。 だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに! 神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、 双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。 トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる! ※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい ※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております ※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

異世界転生特典『絶対安全領域(マイホーム)』~家の中にいれば神すら無効化、一歩も出ずに世界最強になりました~

夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が転生時に願ったのは、たった一つ。「誰にも邪魔されず、絶対に安全な家で引きこもりたい!」 その切実な願いを聞き入れた神は、ユニークスキル『絶対安全領域(マイホーム)』を授けてくれた。この家の中にいれば、神の干渉すら無効化する究極の無敵空間だ! 「これで理想の怠惰な生活が送れる!」と喜んだのも束の間、追われる王女様が俺の庭に逃げ込んできて……? 面倒だが仕方なく、庭いじりのついでに追手を撃退したら、なぜかここが「聖域」だと勘違いされ、獣人の娘やエルフの学者まで押しかけてきた! 俺は家から出ずに快適なスローライフを送りたいだけなのに! 知らぬ間に世界を救う、無自覚最強の引きこもりファンタジー、開幕!

おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様

あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。 死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。 「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」 だが、その世界はダークファンタジーばりばり。 人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。 こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。 あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。 ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。 死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ! タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。 様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。 世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。 地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

チートスキルより女神様に告白したら、僕のステータスは最弱Fランクだけど、女神様の無限の祝福で最強になりました

Gaku
ファンタジー
平凡なフリーター、佐藤悠樹。その人生は、ソシャゲのガチャに夢中になった末の、あまりにも情けない感電死で幕を閉じた。……はずだった! 死後の世界で彼を待っていたのは、絶世の美女、女神ソフィア。「どんなチート能力でも与えましょう」という甘い誘惑に、彼が願ったのは、たった一つ。「貴方と一緒に、旅がしたい!」。これは、最強の能力の代わりに、女神様本人をパートナーに選んだ男の、前代未聞の異世界冒険譚である! 主人公ユウキに、剣や魔法の才能はない。ステータスは、どこをどう見ても一般人以下。だが、彼には、誰にも負けない最強の力があった。それは、女神ソフィアが側にいるだけで、あらゆる奇跡が彼の味方をする『女神の祝福』という名の究極チート! 彼の原動力はただ一つ、ソフィアへの一途すぎる愛。そんな彼の真っ直ぐな想いに、最初は呆れ、戸惑っていたソフィアも、次第に心を動かされていく。完璧で、常に品行方正だった女神が、初めて見せるヤキモチ、戸惑い、そして恋する乙女の顔。二人の甘く、もどかしい関係性の変化から、目が離せない! 旅の仲間になるのは、いずれも大陸屈指の実力者、そして、揃いも揃って絶世の美女たち。しかし、彼女たちは全員、致命的な欠点を抱えていた! 方向音痴すぎて地図が読めない女剣士、肝心なところで必ず魔法が暴発する天才魔導士、女神への信仰が熱心すぎて根本的にズレているクルセイダー、優しすぎてアンデッドをパワーアップさせてしまう神官僧侶……。凄腕なのに、全員がどこかポンコツ! 彼女たちが集まれば、簡単なスライム退治も、国を揺るがす大騒動へと発展する。息つく暇もないドタバタ劇が、あなたを爆笑の渦に巻き込む! 基本は腹を抱えて笑えるコメディだが、物語は時に、世界の運命を賭けた、手に汗握るシリアスな戦いへと突入する。絶体絶命の状況の中、試されるのは仲間たちとの絆。そして、主人公が示すのは、愛する人を、仲間を守りたいという想いこそが、どんなチート能力にも勝る「最強の力」であるという、熱い魂の輝きだ。笑いと涙、その緩急が、物語をさらに深く、感動的に彩っていく。 王道の異世界転生、ハーレム、そして最高のドタバタコメディが、ここにある。最強の力は、一途な愛! 個性豊かすぎる仲間たちと共に、あなたも、最高に賑やかで、心温まる異世界を旅してみませんか? 笑って、泣けて、最後には必ず幸せな気持ちになれることを、お約束します。

処理中です...