四つの前世を持つ青年、冒険者養成学校にて「元」子爵令嬢の夢に付き合う 〜護国の武士が無双の騎士へと至るまで〜

最上 虎々

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第九章 在るべき姿の世界

第百四十話 二度目のゴング

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「……やるじゃないか、ケーリッジ先生」

 左半身に、ぽっかりと大穴が空いたロディアは、そう言いながら、肉体を変異させ始める。

「現役以上に身体が動くんだから、当然よ!アン・ケーリッジの力……ちょっとは堪能してもらえたかしら?」

「あア、そレはモう、本気ヲ出サないト、耐えラれナい程ニね……!」

 着ていたローブを破りながら全身の肉を裂き、中からドス黒いヘドロのようなものが姿を現した。

 ここからは俺の父、ジノア・セラムを依代とした、真の姿でかかってくると、そういうことだろう。

「なあ、ロディア。俺とガラテヤ様が生きてた世界の特撮ヒーローものって、知ってるか?」

「エ?アあ、勿論ダよ」

「あれってさ、ほとんどのヒーローが変身してる最中に攻撃されることって無いじゃん?」

「そウ、だね?」

「でも、お前はヒーローじゃないし、そもそも今は特撮の撮影じゃなくて、現実だろ?」

「そリゃアそウだよ。……何?現実逃避デもしたイのかイ?」

「いやあ。ただ、変身中に攻撃したら、どうなるのかと思って。……やっ!」

 霊の魔力を使った影響で、まだ身体に十分な魔力が回っているとは言えないが……それでも、ガラテヤ様と一体になった分、負担も半分に分かれているため、ちょっとした魔術を使うくらいはできる。

 俺は風の魔力を刃にして飛ばした。

 それは今まさに、ジノア・セラムの面影を感じつつも邪悪そのものであるかのような姿へ変わろうとしているロディアの首を掠める。

「オおっと、惜しイねェ。でモ……どノ道、僕ハこうして変身を完了スル……!」

「結構ズレたな……ダメか」

 やはり、まだ魔力の制御も上手くいかないようだ。

「皆!一点に固まっていてもメリットが無いわ!散りましょう!」

「ん!」

「了解!」

 ガラテヤ様はロディアを囲むため、皆に散らばるように右手で指示を出した。

 俺はガラテヤ様と共に、ロディアの真正面で武器を構える。

「攻撃開始よ!覚悟しなさい、ロディア!」

 そしてガラテヤ様の号令と共に、全員が攻撃を始める。

「ジィンお兄ちゃんの仇……。ここで、殺す……!【闢雷びゃくらい】……!」

「はぁぁぁぁっ!覚悟しろ!裏切り者がぁぁぁぁっ!」

「ナメた真似しやがって、このクソ悪魔が。久しぶりだぜェ、こんなに誰かを殺してェと思ったのはよォ……!」

「俺は何がなんでもお前を殺す……。天国どうこう、じゃない……俺が殺されたから、ガラテヤ様を悲しませたから!俺達が裏切られたから、殺す!」

 革命団残党だった者達は先生達に任せ、俺、ガラテヤ様、ファーリちゃん、マーズさん、バグラディの五人は、マルコシアスへ刃を向ける。

「先生方ァ。……オレの部下達を……頼めねェか」

「任せてっ!殲滅作戦に強い冒険者、アン・ケーリッジの真髄、堪能させてあげるわ!」

「ホッホッホ。普通なら、絶対に勝てない数……腕が鳴りますな。私も、現役時代を少しだけ、思い出してみましょうかァ……!!!」

「ジィン君達。こっちの残党は大人に任せて、思いっきり戦ってきなさい」

 フラッグ革命団だったもの……マルコシアス魔導兵団とでも呼ぶべきだろうか、それらを引きつける三人の先生の声に、俺は呑気にも、背中を押されたように感じた。

 今、ここに第二ラウンド開始のゴングは鳴らされる。
 裏切り者の元友人にして、名のある悪魔。

 ロディア・マルコシアスとの戦いは、ますます熾烈を極めようとしていた。
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