魔女が住まう街にて〜Incident analysis by modern witches〜

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file5:魔女と女王に従う転生者

第2節 転移と転生④

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PM 7:00 如月邸

仮面の魔女ジャンヌ』の工房から戻り、すすきのの街を抜け邸に着く。リビングに着くと、2人はくつろいでいた。どうやら、食事の方はもう終わっていたようだ。

「お帰りなさい。遅かったね」
「ただいま。少し厄介なのに捕まってね。そいつらの相手をしていたよ」

 ラスティアは、心配した顔をしている。どうやら、私の身に何かあったのではと心配しているようだ。

「そうなんだ。それとね、昼間に姉さんが言ってた組織が来たの」
「何だって? どこか怪我していない?」
「大丈夫だよ。その後セシリアが来たから、引き渡しけど」
「そう。君に何もなくて安心したよ」

 私は、ラスティアの肩に触れながら身を案じる。どうやら、私がいないことを油断したのか、返り討ちにしたみたいだ。
 それなそれで、私は安心するが、彼女の身に何かあれば危ないのだ。

「何イチャイチャしてるの?」

 私たちの行為を、ニヤニヤしながら明日香は見ていたようだ。私とラスティアは、慌てて離れる。

「何だ、テレビでも見ているかと思ったよ」
「君たちがそういうのしていると、気になるのは当然じゃん。それより、彼女に会えたの?」

 明日香は、私が美生と会ったことを聞く。

「まぁね。その後、足早に行ってしまったけど」
「説得はまだ出来てないって事だね。まぁ、その内説得に応じるでしょう?」
「どうかな? あの様子だと、何かを1人で背負ってるみたいだ。改めて説得をするけどさ」

 明日香は、再びソファーに寝っ転がる。ウィズは明日香の胸元に飛び移ると、明日香は首の所を撫でる。

「リリムが、やるなら早めにしろって。じゃないと、状況は深刻になるんだってさ」

「了解だ」っといい、私はシャワーを浴びる。シャワーから上がり、ラスティアに髪を乾かしてもらい、そして就寝する。
 今日はとにかく疲れた。疲れに流されるまま、私は眠りにつくのだった。

 ――――――――――――――

 夢をみる。それは、無機質で幻想的な部屋だった。歩き進めると、1つの椅子があり、誰かが足を組んで座っていた。
 その後ろ足を見て、私は誰かがわかった。
 
『やぁ。眠りについたところ悪いな。お前を呼んだのは他でもない。あれの件だ』

魔女やつ』だ。こうして夢の中で、邂逅するのはいつ以来だろうか。いつもは、私の頭に直で話しかけるが、『魔女やつ』が夢に現れるのも珍しくない。
 
「私は、お前には用はない」
『そういうな。お前に1つ要件があってだな。それを言うために来ただけだ』
「なら早く言え。お前の戯言を聞く時間は私にはない」

魔女やつ』は、私に何かを言う。それは助言なのか、戯言なのか、私にはわからない。だが、この場合はよっぽどマズい時だ。

『急ぐといい。出なければ、危険な状況になるだろう』
「どう言うことだ?」
『その辺のことは、ジャンヌから聞いていよう。ならば、ジャンヌの助言に従い、行動を起こせ。そして、『女王』とその配下を再び黄泉に送るのだ』
「あぁ、奴らには、また眠ってもらうさ」
『無論だ。わたしの目の前で暴れられていては、目障りの他にない』

 そういい、『魔女やつ』は足を組み直す。そして、視界がぼんやりとし始めた。どうやら、目覚めの時が来たみたいだ。

 ――――――――――――――――――――――――

 目が覚める。時刻は早朝5時のようだ。ラスティアはまだ起きていないようだ。
 私は服を着替えて、邸を出る。いつも1人になる場所へ行くと、そこに美生がいた。

「お久しぶりです、キサラギさん。昨日はその、『白い私』が迷惑をおかけして」
「美生、久しぶりだね。元気だったかい?」
「はい。キサラギさんも、お変わりなく」

 久々に、美生と話す。彼女が『井崎美生』本人だ。正確には、主人格と言っていいだろう。
 彼女は、先天性の二重人格者だ。何かしらの影響で人格ができたわけではなく、成長する毎に別の人格ができたタイプの多重人格者なのだ。
 さっそくだけど、私は本題に入ろうと思う。
 
「久々に会って申し訳ないけど、戻ってはくれないだろうか? セシリア達が心配しているんだ」
「……」

 彼女は黙り込む。本来の彼女なら、即答するが、何やら事情があるらしい。

「あぁ、何だ、その、君が嫌と言うのならいいん――――――――」
「お断りします!」

 彼女の声から、はっきりと断る声が聞こえた。

「どうしてだい?」
「今の私では、キサラギさん達と協力することが出来ません。気持ちはありがたいのですが、今は出来ないんです」
「でも、それじゃ理由には」
「私は、『転生者』ですから、出来ないんです。いや、『白い私』が、なのです」

 彼女の発言に、違和感をおばえる。どうやら、訳ありみたいだ。それほど何かしらの事情があるのだ。

「『白美生クー・フーリン』が、そう言ってるのか?」
「はい。私『個人』は、そうした方がいいと思ってる。でも、これは『かのじょ』の問題なんです」
「どう言うことだ?」

 美生は、後ろに振り向きながら、あることを言う。

「『コノートの戦士』。キサラギさんも、実態は知っていますよね? その中には、かつて『コノート』と言う国にゆかりのある人物が幹部としている。特に、『かのじょ』の会いたくない人物がいる。『かのじょ』と戦った『女王』が」
「『女王』だって!? そいつが『白美生クー・フーリン』が会いたくないやつだと?」

 美生は、喋り始める。その人物に、私は驚きを隠せないでいた。

「『女王メイヴ』。それが『コノートの戦士』のボスで、この事件の真犯人なのです。一連のことも、彼女が『転生』したことで、始まった。彼女は自分のかつての戦士を『転生』させ、議長に不満を持つ魔術師達を引き入れました。そして、彼らに異世界の少年少女を『転移』させ、今に至る。『かのじょ』はそれを察知して、今日になります。今度こそ、メイヴを殺すため。騙し討ちにあったあの時の、仕切り直しの意味も込めて、『かのじょ』と共に、私は執行者から外れてメイヴを殺すための算段を取ってました。今日はただ、キサラギさんと話すために出てますが、ここ最近は、『かのじょ』に主導権を渡していたのです」
「それが、君らが私たちと動くことを拒む理由か? なら、私にも協力させてもらえないか? メイヴを倒せば、それで終わりじゃないか?」
「それは出来ません。さっきも言いましたが、これは『かのじょ』の問題。たとえキサラギさんが言おうと、今の私は誰とも協力することは出来ません」

 彼女の目を見て、私は彼女の説得を諦める。それはもう、絶対に屈しない目だった。

「わかったよ。君がそうしたいなら、私にどうこう言う権利はない」
「ありがとうございます。『かのじょ』の我儘を聞き入れてくれて」

 美生は深々と頭を下げる。これで私たちの希望は潰えてしまい、美生抜きで作戦を進める必要になったわけだ。

「それじゃね。私は戻るよ」
「はい。セシリアさんにごめんなさいって伝えてください」

 セシリアへの伝言を頼まれ、私はその場を後にする。しかし、彼女のあの目は見たことなかった。
 こうして、私は事務所を開く準備をするのだった。
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