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淡き春の夢④
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僕は公爵家の馬車に乗った。
傍らには僕の従者マルクが控えてる。
僕はマルクに殿下からもらった白薔薇を見せながら今日の出来事を話した。
「殿下は僕と過ごして楽しいのかな。そう思ってくださるといいなぁ」
「エリアス様、殿下もきっと楽しそうに過ごされていますよ」
マルクは僕より一つ年上で、幼いから一緒にいる。
マルクの母親が幼子を抱えて我が家の下働きをしていたのを年が近いから、という理由で僕の遊び相手をするようになった。 最初はただ一緒に遊んでいるだけだったけど、僕と一緒に勉強しているうちに、こうして従者となって僕を支えてくれる存在になった。
「マルクもそう思う?……そうだといいなぁ」
恋というものがどんなものか知らなかったけれど、たぶん、あの瞬間がそうだったのだと思う。
それから夏季休暇の始まる前に、王太子主催の舞踏会が催されることになった。
学園生が多く集まるから夜会よりは早い時間に設定されている。
ダンスの練習は王太子妃教育にもあって、僕は殿下と踊るのだから、マルクに付き合ってもらい女性側の振り付けもちゃんと覚えた。
舞踏会の少し前に殿下から衣裳が送られてきた。
「わぁ、エリアス様のお色によくお似合いです」
マルクがそう言うタキシードは、クリーム色というか金色というか光沢のあるお色で碧い差し色が入っていた。
「…殿下の色です…」
僕はそのタキシードを抱きしめた。
マルクは傍らで僕と同じように嬉しそうにしてくれていた。
舞踏会は王城の広間で、すでに華やかな催しの準備が整っていて、開始を待っているかのようだった。
公爵家の馬車を降りると、殿下がエスコートし、会場へと歩く。
「エリアス、よく似合っているよ」
殿下の言葉に胸が暖かくなる。
殿下の正装は真っ白で、まさに王子様。
装飾品も美しく、よくお似合いになっていたが、そのお色が僕の瞳の色じゃなかったのが、少し残念だった。
殿下は忙しいのか、僕に会釈をするとどちらかに行かれた。
「エリアス様、今日の殿下も素敵でしたね」
少しぼうっとしてた僕にマルクが話しかけてくれた。
いけない、ちゃんとしなきゃ。
僕は婚約者候補なんだから。
「…そうだね、マルク。僕もがんばるね」
パーティーが始まり、僕も挨拶周りをしないといけない。
僕が頼りないのか、兄さまは代わりに付いてくるとか言い出してたっけ。
今日は王城で開かれてるけど、学園の延長みたいな会だから家族は参加しないことになっている。
僕だけ兄さまと一緒じゃおかしいよね。
兄さまは渋々、マルクに頼んだぞって託してたな。
会場に流れていた音楽が変わった。
ダンスが始まる。
僕のところに殿下がやってきて、手をとる。
ファーストダンスは僕と踊ってくださる。
会場の誰もが僕と殿下を見ている。
『アンドリュー殿下もエリアス様も素敵』
『よくお似合いのお二人』
『エリアス様は可憐でお美しい』
みんなが僕と殿下のダンスを見ている。
僕が苦手なステップも殿下はリードしてくださり、とても踊りやすい。
一曲終わると、殿下は僕から離れていった。
僕も他の相手とダンスをしなくちゃいけない。
僕はダンスしながら殿下の方を見た。
会場で一際華やかで、優しい光に包まれているような。
それは見たことのない笑顔だった。
とても慈愛に満ちた笑顔だった。
そして、殿下のお相手の胸元には白薔薇が刺さっていた。
僕は胸が痛んだ。
……白薔薇はその人の好きな花だったんですね……
曲が終わったタイミングで、僕はマルクの所へ下がった。
「エリアス様、お顔の色がすぐれません。お疲れですか」
マルクが僕を介抱する。
水を少し飲んで顔を上げる。
「…誰?…殿下のお相手の方は……」
僕の声にマルクは
「あれはハートレイ伯爵令息のジュリアン様です」
そう…。
「……殿下とは幼い頃から仲良くされていらっしゃるようです」
そうなんだ…。
知らなかった、殿下にそんな相手がいたなんて。
「マルク、少し疲れちゃったみたい。もう殿下のお相手は務めたから今日は帰りたい」
あんな優しそうな殿下の笑顔を見た後に、僕はどんな顔していいのかわからない。
好きな人のあんな笑顔は僕に向けて欲しい。
「…はい。エリアス様、馬車の準備をいたします」
傍らには僕の従者マルクが控えてる。
僕はマルクに殿下からもらった白薔薇を見せながら今日の出来事を話した。
「殿下は僕と過ごして楽しいのかな。そう思ってくださるといいなぁ」
「エリアス様、殿下もきっと楽しそうに過ごされていますよ」
マルクは僕より一つ年上で、幼いから一緒にいる。
マルクの母親が幼子を抱えて我が家の下働きをしていたのを年が近いから、という理由で僕の遊び相手をするようになった。 最初はただ一緒に遊んでいるだけだったけど、僕と一緒に勉強しているうちに、こうして従者となって僕を支えてくれる存在になった。
「マルクもそう思う?……そうだといいなぁ」
恋というものがどんなものか知らなかったけれど、たぶん、あの瞬間がそうだったのだと思う。
それから夏季休暇の始まる前に、王太子主催の舞踏会が催されることになった。
学園生が多く集まるから夜会よりは早い時間に設定されている。
ダンスの練習は王太子妃教育にもあって、僕は殿下と踊るのだから、マルクに付き合ってもらい女性側の振り付けもちゃんと覚えた。
舞踏会の少し前に殿下から衣裳が送られてきた。
「わぁ、エリアス様のお色によくお似合いです」
マルクがそう言うタキシードは、クリーム色というか金色というか光沢のあるお色で碧い差し色が入っていた。
「…殿下の色です…」
僕はそのタキシードを抱きしめた。
マルクは傍らで僕と同じように嬉しそうにしてくれていた。
舞踏会は王城の広間で、すでに華やかな催しの準備が整っていて、開始を待っているかのようだった。
公爵家の馬車を降りると、殿下がエスコートし、会場へと歩く。
「エリアス、よく似合っているよ」
殿下の言葉に胸が暖かくなる。
殿下の正装は真っ白で、まさに王子様。
装飾品も美しく、よくお似合いになっていたが、そのお色が僕の瞳の色じゃなかったのが、少し残念だった。
殿下は忙しいのか、僕に会釈をするとどちらかに行かれた。
「エリアス様、今日の殿下も素敵でしたね」
少しぼうっとしてた僕にマルクが話しかけてくれた。
いけない、ちゃんとしなきゃ。
僕は婚約者候補なんだから。
「…そうだね、マルク。僕もがんばるね」
パーティーが始まり、僕も挨拶周りをしないといけない。
僕が頼りないのか、兄さまは代わりに付いてくるとか言い出してたっけ。
今日は王城で開かれてるけど、学園の延長みたいな会だから家族は参加しないことになっている。
僕だけ兄さまと一緒じゃおかしいよね。
兄さまは渋々、マルクに頼んだぞって託してたな。
会場に流れていた音楽が変わった。
ダンスが始まる。
僕のところに殿下がやってきて、手をとる。
ファーストダンスは僕と踊ってくださる。
会場の誰もが僕と殿下を見ている。
『アンドリュー殿下もエリアス様も素敵』
『よくお似合いのお二人』
『エリアス様は可憐でお美しい』
みんなが僕と殿下のダンスを見ている。
僕が苦手なステップも殿下はリードしてくださり、とても踊りやすい。
一曲終わると、殿下は僕から離れていった。
僕も他の相手とダンスをしなくちゃいけない。
僕はダンスしながら殿下の方を見た。
会場で一際華やかで、優しい光に包まれているような。
それは見たことのない笑顔だった。
とても慈愛に満ちた笑顔だった。
そして、殿下のお相手の胸元には白薔薇が刺さっていた。
僕は胸が痛んだ。
……白薔薇はその人の好きな花だったんですね……
曲が終わったタイミングで、僕はマルクの所へ下がった。
「エリアス様、お顔の色がすぐれません。お疲れですか」
マルクが僕を介抱する。
水を少し飲んで顔を上げる。
「…誰?…殿下のお相手の方は……」
僕の声にマルクは
「あれはハートレイ伯爵令息のジュリアン様です」
そう…。
「……殿下とは幼い頃から仲良くされていらっしゃるようです」
そうなんだ…。
知らなかった、殿下にそんな相手がいたなんて。
「マルク、少し疲れちゃったみたい。もう殿下のお相手は務めたから今日は帰りたい」
あんな優しそうな殿下の笑顔を見た後に、僕はどんな顔していいのかわからない。
好きな人のあんな笑顔は僕に向けて欲しい。
「…はい。エリアス様、馬車の準備をいたします」
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