(新章開始)当て馬だった公爵令息は、隣国の王太子の腕の中で幸せになる

蒼井梨音

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春告げの宴④

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翌朝。

王宮の大広間は、春の陽光に満ちていた。 

魔獣討伐の報告会。

明日は、戦いの終結を祝う祝賀会。
貴族や学園関係者が列席し、華やかな衣装と笑い声があふれる。

僕は白を基調とした礼服に袖を通す。

マルクが襟を整えながら、穏やかに囁いた。

「堂々と行ってください。
エリアス様は殿下の“仲間”としてここにいるんです」

「……仲間、か」

「ええ。殿下はエリアス様をそう呼ばれると思います」

扉が開かれ、光の中に足を踏み入れる。

壇上にはマクシミリアン殿下。

レイナ様がその少し後ろに控えていた。
王族の一員なんだね。

マクシミリアン殿下は僕に気づくと、わずかに目を細め、やわらかく微笑んだ。

「——アーデント公爵家令息、エリアス・アーデント。前へ」

呼ばれた名に、会場の視線が集まる。

歩み出たエリアスの足取りは静かで、迷いがなかった。

「君の勇気が、この国を救った。……誇りに思う」

「身に余るお言葉です、殿下」

「エリアス、これからも、共に歩んでほしい」

その一言に、周囲がざわめいた。

けれどマクシミリアン殿下は、気にも留めない。

「戦いは終わったが、これからは再建のときだ。君の知恵と力を貸してほしい」

「……殿下」

胸の奥が熱くなる。

恋ではなくても、想いが繋がっていると感じた。

それが、何より嬉しかった。

「はい。微力ながら、務めさせていただきます」

「ありがとう」

視線が重なる。
僕と殿下の間にあった“壁”は、ほんの少しだけ、形を変えていた。

(殿下の隣で——今度は、支える者として)
僕は胸の内で静かにそう誓った。


春の光が、僕たちの肩を等しく照らしていた。
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