（新章開始）当て馬だった公爵令息は、隣国の王太子の腕の中で幸せになる

春告げの宴⑦

音楽が流れ、大広間の中心に誘われる。

殿下の手が僕の手を包むと、心臓が跳ねるように高鳴った。

「準備はいいか？」

「はい……マクシミィ」

僕がいたずらっぽく殿下を呼ぶと、殿下が笑みをもらして、僕を安心させる。

「マクシミィ？　そんな呼び方、初めて聞いたぞ」

低く笑う声に、胸がきゅっとなる。　

「だって……僕だけの殿下ですから……」

耳元で囁くと、殿下がぎゅっと僕を抱き寄せる。

回転するたび、彼の腕の温もりと体の近さに、息が止まりそうになる。

「可愛い……エリアス」

「……マクシミィ♡」

甘く呼び合うだけで、世界が二人だけのように溶けていった。

緊張もしてたけど、ダンスがとても楽しかった。　


祝賀会の後、夜の回廊で二人きりになった。

月光が床に銀色の光を落とし、静寂が優しく包む。

「……マクシミィ」

「エリアス」

その呼び方だけで、胸が震える。

「僕……マクシミリアン殿下が、好きです」

殿下はそっと僕の肩に顔を寄せ、手のひらで僕の髪を撫でる。

温かくて、強くて、安心感が全身に広がる。

「エリアス、私も好きだ」

耳元で囁かれ、胸がいっぱいになる。

「ずっとそばにいてくれ」

「はい……ずっと、お側にいさせてください」

殿下は僕を抱きしめ、唇を優しく重ねる。
口付けは長く、甘く、心の奥まで響く。
殿下の手が背中を滑り、腰を包み込む。
全身で僕を受け止めてくれる温かさに、思わず息が詰まるほどだった。

「エリアス……君を離すつもりはない」

低く、甘く、少し命令めいた声。

僕は思わず頷き、唇を再び重ねる。
手と手、体と体が触れ合うたび、胸の奥が熱く膨らみ、心まで満たされていく。

世界に二人しかいないような錯覚——それが心地よく、離れたくなかった。

「君を、永遠に守る」

その言葉に、涙が溢れた。

「……僕も、ずっと、殿下のおそばに」

月明かりの下、二人で何度も唇を重ね、抱き合い、言葉よりも確かな想いでつながった。

——これが、僕の望んだ未来。

殿下と生きる、温かく、甘く、確かな日々。