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当て馬にされた公爵令息は、今も隣国の王太子に愛されている
祝福の始まり①
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朝の光が王宮の高窓から差し込み、白亜の大理石の床を金色に染めていた。
その光を受けて、淡い銀髪がふわりと揺れて、僕自身が光を纏っているみたい。
「……殿下、そんなに見つめられると、衣装係が困ってしまいます」
さっきからすごい形相で、僕の採寸をしている衣装係を見ている、マクシミリアン殿下。
微笑を浮かべて僕が振り返ると、
「困るのは私ではない。……ああ、どうして君は、こんなに眩しいのか。……何を着ても似合うんだろうな」
ため息まじりの殿下の声に、衣装係たちは顔を見合わせてそっと視線を逸らす。
「殿下、溺愛もほどほどに」
と、すぐ背後からレイナ様が小声で注意を入れる。
僕が思わず目を伏せると、隣に立つレイナ様はくすりと笑った。
「殿下の隣に立つ方ですもの。眩しいくらい光に包まれていなくては、ね」
「そんな、僕なんて……」
否定しかけた声が、背後から届いた低い笑いにかき消された。
「エリアスは、光そのものだよ」
殿下が穏やかな微笑みを浮かべながら歩み寄り、指先で僕の髪をそっとすくう。
銀糸のような髪が、陽光を受けて一層輝きを増した。
「こんなに美しい人を、どうやって皆が見慣れるというんだろうね」
真顔でそんなことを言う王太子に、レイナ様がため息をついた。
「殿下、準備のたびに同じことをおっしゃっております。エリアス様が恥ずかしがっていらっしゃいますわ」
「だって本当のことだろう?」
殿下は悪びれもせず、僕の手を取った。
その指先の熱が、心臓の奥まで届く気がして、僕は思わず目を伏せる。
「……もう、殿下は本当に」
レイナ様が呆れていると、部屋の端で控えていたマルクが静かに一礼した。
「殿下、エリアス様が照れておられます。お気をつけください」
忠実な従者らしい声音に、僕は顔を上げる。
「マルク……いいよ、慣れてるから」
「いいえ、慣れてはいけません。殿下の甘言に慣れるなど、エリアス様の命が縮みます」
「マルク、それはちょっと言いすぎでは……」
声が小さくなりながら、僕が話すと
「まったく正しいと思いますよ」
レイナ様が笑いながら相づちを打つ。
その肩越しに、アンドリア王子が軽く手を振っていた。
「僕はそのくらい言われてみたいけどな、マルク殿に」
「あら、アンドリア殿下。軽口はほどほどに」
レイナ様が素早く振り向き、涼しい声で返す。
そのやり取りに、マクシミリアン殿下が目を細めた。
「アンドリアとレイナは相変わらず息が合ってるね」
「お仕事がしやすいというだけです」
レイナ様の答えに、アンドリア王子が苦笑を浮かべる。
そんな周囲の空気を感じながら、僕は胸に手を当てた。
祖国ルヴァニエールで、王太子妃の当て馬にされた僕は、従者のマルクと隣国のドラヴァールに渡った。
そこで出会ったマクシミリアン殿下。
アンドリア王子、レイナ様。
マクシミリアン殿下たちと魔獣討伐をしたことで、僕は精霊の力を授かった。
マクシミリアン殿下への思いが結んで、僕は隣国の王太子の腕の中で幸せになった。
卒業と同時に女神様や精霊たちに結婚の誓いをした僕たちは、いわば『婚約』の状態。
正式な婚姻の儀が開かれるために、壮大な準備を進めた。
本当は何年もかけて準備を進めるというのだが、殿下が「早くエリアスと暮らしたい」と言ったか言わないんだか、で、一年で準備を進めて、正式に結婚して夫夫に、ということになった……。
でも、僕が衣装合わせに向かうと、いつもマクシミリアン殿下は政務を抜けて同席する。
衣装係が
「殿下、エリアス様の衣装の色をどうなさいますか?」
と問うても、マクシミリアン殿下は
「エリアスに似合う色で」と即答。
「殿下、それでは全部白と金になってしまいますわよ」
レイナ様が苦笑い。
「それの何が悪いのか?」
殿下の一言に、レイナ様がため息をついて、僕は頬を染める。
周囲は「また始まった」とあたたかく見守る。
そして、殿下がなかなか首を縦に振らないので、衣装がなかなか決まらないっていうのがいつものパターン……。
その光を受けて、淡い銀髪がふわりと揺れて、僕自身が光を纏っているみたい。
「……殿下、そんなに見つめられると、衣装係が困ってしまいます」
さっきからすごい形相で、僕の採寸をしている衣装係を見ている、マクシミリアン殿下。
微笑を浮かべて僕が振り返ると、
「困るのは私ではない。……ああ、どうして君は、こんなに眩しいのか。……何を着ても似合うんだろうな」
ため息まじりの殿下の声に、衣装係たちは顔を見合わせてそっと視線を逸らす。
「殿下、溺愛もほどほどに」
と、すぐ背後からレイナ様が小声で注意を入れる。
僕が思わず目を伏せると、隣に立つレイナ様はくすりと笑った。
「殿下の隣に立つ方ですもの。眩しいくらい光に包まれていなくては、ね」
「そんな、僕なんて……」
否定しかけた声が、背後から届いた低い笑いにかき消された。
「エリアスは、光そのものだよ」
殿下が穏やかな微笑みを浮かべながら歩み寄り、指先で僕の髪をそっとすくう。
銀糸のような髪が、陽光を受けて一層輝きを増した。
「こんなに美しい人を、どうやって皆が見慣れるというんだろうね」
真顔でそんなことを言う王太子に、レイナ様がため息をついた。
「殿下、準備のたびに同じことをおっしゃっております。エリアス様が恥ずかしがっていらっしゃいますわ」
「だって本当のことだろう?」
殿下は悪びれもせず、僕の手を取った。
その指先の熱が、心臓の奥まで届く気がして、僕は思わず目を伏せる。
「……もう、殿下は本当に」
レイナ様が呆れていると、部屋の端で控えていたマルクが静かに一礼した。
「殿下、エリアス様が照れておられます。お気をつけください」
忠実な従者らしい声音に、僕は顔を上げる。
「マルク……いいよ、慣れてるから」
「いいえ、慣れてはいけません。殿下の甘言に慣れるなど、エリアス様の命が縮みます」
「マルク、それはちょっと言いすぎでは……」
声が小さくなりながら、僕が話すと
「まったく正しいと思いますよ」
レイナ様が笑いながら相づちを打つ。
その肩越しに、アンドリア王子が軽く手を振っていた。
「僕はそのくらい言われてみたいけどな、マルク殿に」
「あら、アンドリア殿下。軽口はほどほどに」
レイナ様が素早く振り向き、涼しい声で返す。
そのやり取りに、マクシミリアン殿下が目を細めた。
「アンドリアとレイナは相変わらず息が合ってるね」
「お仕事がしやすいというだけです」
レイナ様の答えに、アンドリア王子が苦笑を浮かべる。
そんな周囲の空気を感じながら、僕は胸に手を当てた。
祖国ルヴァニエールで、王太子妃の当て馬にされた僕は、従者のマルクと隣国のドラヴァールに渡った。
そこで出会ったマクシミリアン殿下。
アンドリア王子、レイナ様。
マクシミリアン殿下たちと魔獣討伐をしたことで、僕は精霊の力を授かった。
マクシミリアン殿下への思いが結んで、僕は隣国の王太子の腕の中で幸せになった。
卒業と同時に女神様や精霊たちに結婚の誓いをした僕たちは、いわば『婚約』の状態。
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でも、僕が衣装合わせに向かうと、いつもマクシミリアン殿下は政務を抜けて同席する。
衣装係が
「殿下、エリアス様の衣装の色をどうなさいますか?」
と問うても、マクシミリアン殿下は
「エリアスに似合う色で」と即答。
「殿下、それでは全部白と金になってしまいますわよ」
レイナ様が苦笑い。
「それの何が悪いのか?」
殿下の一言に、レイナ様がため息をついて、僕は頬を染める。
周囲は「また始まった」とあたたかく見守る。
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