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当て馬にされた公爵令息は、今も隣国の王太子に愛されている
祝福の始まり⑤
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部屋の中さ柔らかな光が漏れていた。
いや、光ではないのかもしれない。
「エリアス様、素敵です。眩しいくらいです」
マルクが僕を見て言う。
精霊たちが祝福をしてくれているようで、僕自身が光を放ってるように見える。
侍従が扉を開けると、王家の正装を召したマクシミリアン殿下が現れた。
僕のもとへ歩を進めるたびに、威厳のある表情から、笑顔が溢れて、足取りが軽やかになる。
「殿下……?」
僕が、控えめに微笑むと、殿下も照れたような顔をする。
「美しい……。触れてもいいだろうか……」
殿下が恐る恐る手を伸ばしてくる。
白と金の衣が、朝の陽に溶けてゆくように揺れている、薄絹の重なりに手が触れる。
風に触れて、ひとひらごとに光を返す。
「まるで光そのものが形をとって人になったかのようだ」
「マクシミリアン様……」
「……美しい」
殿下の声にならぬ吐息が零れる。
殿下が僕の肩に触れると、衣の上から微かな温もりが伝わる。
「どうしてそんな顔を……」
僕が恥ずかしくなって目を伏せる。
殿下がその頬にかかる髪を指先でそっと払う。
「……目が離せないんだ。
君がここにいる、それだけで世界に祝福されている気がする」
殿下が大げさに言う。
僕はただ静かに笑った。
「では、今日の光は……マクシミリアン様がくださった祝福ですね」
もう言葉はいらなかった。
殿下が僕の手を取り、ゆっくりと口づけを落とす。
外では、鐘の音が鳴りはじめていた。
光が扉の隙間からあふれ、二人の影を柔らかく包みこむ。
――世界が祝福している
ううん、僕たちが世界そのものの祝福をしてるんだ。
王都全体は、祝福ムードで、街中に花飾りや鐘の音、人々の歌声が満ちている。
「王太子殿下と光の加護を受けた公爵令息の結婚式」で、たくさんの人々が集まっている。
お披露目のバルコニーの前室で、国王陛下夫妻と顔を合わせる。
「準備はよいか、マクシミリアン、エリアス」
低く響く声に、僕は声のする方を向いた。
国王陛下――紅炎の王子の父にして、王国を治めるその威厳は、ただ立っているだけで空気を支配する。
金色の刺繍が施された王衣は朝日に輝き、玉座に座らなくとも、王としての力と威厳を民に示していた。
王妃陛下も並び、柔らかい微笑みを浮かべる。
「エリアス、マクシミリアンを頼みますよ」
アンドリア王子とレイナ様もいる。
「兄上、エリアス、おめでとう。
エリアス、あんまり緊張すんなよ……」
「大丈夫ですわよ、今日こそは、マクシミリアン殿下とずっとくっついていられますからね」
レイナ様がからかうように言う。
僕は緊張と期待で胸を押さえながら、バルコニーの向こうに広がる王都の街並みを見下ろした。
下には祝福のために集まった民衆が、きらきらと笑顔を輝かせている。
祝福の鐘が鳴り響く。
国王陛下夫妻がバルコニーに歩き出した。
声にならない歓声が響き渡る。
「皆の者、このたび我が王太子マクシミリアンと、精霊の光を宿す伴侶エリアスが結ばれたことを、ここにお知らせする!」
陛下の宣言がバルコニーに響き渡る。
民衆の歓声が揺れる。
「……さぁ行くよ」
マクシミリアン殿下にエスコートされて、僕たちは肩を並べて歩き、バルコニーに足を踏み入れた。
精霊の光が僕の周りをふんわりと包み、民衆からも祝福のざわめきが届く。
手を握るマクシミリアンの掌はあたたかく、力強い。
「緊張するな、エリアス。君の光が、皆を幸せにするんだ」
その言葉に、自然と胸の奥の不安が溶けていく。
バルコニーに立つと、精霊たちの光が僕たちを祝福するように舞った。
花びらのように、羽のように、透明な光がひらひらと降り注ぐ。
民衆の歓声と光が、まるで世界全体が僕たちを祝福しているかのようだった。
すると後方で声がした。
「わあ、やっぱり王太子妃は光が違うわね!」
アンドリア王子は僕の方を見ながら言うと、婚約者のレイナ様を伴ってバルコニーに登場した。
民衆の視線を集めながら、さりげなく微笑む二人。
レイナ様の視線が僕に向いたとき、思わず少し照れてしまった。
「今日から、二人は我が王国の希望となる」
国王陛下の声が重く、温かく響く。
胸の奥で、僕は誓う――マクシミリアン殿下と共に、この光を正しく導き、世界を守るのだ、と。
手を握るマクシミリアン殿下の指先に力を込め返し、僕は微笑む。
その瞬間、民衆の歓声も、精霊の光も、全てが僕たちの絆を祝福してくれているように感じられた。
殿下はいつも、まっすぐに僕を見つめる。
誰よりも多くの民に慕われ、王国の未来を背負う人なのに、
今この瞬間だけは、世界のすべてが僕たち二人だけのものになったように感じる。
歓声が上がり、聖樹の鐘が再び鳴り響く。
まるで天がこの結びつきを祝福してくれているように、光が溢れて止まらなかった。
僕は見上げる。
マクシミリアン殿下――いいえ、僕の愛しい人。
この国の王となるその人の微笑みは、どんな光よりもまぶしかった。
いや、光ではないのかもしれない。
「エリアス様、素敵です。眩しいくらいです」
マルクが僕を見て言う。
精霊たちが祝福をしてくれているようで、僕自身が光を放ってるように見える。
侍従が扉を開けると、王家の正装を召したマクシミリアン殿下が現れた。
僕のもとへ歩を進めるたびに、威厳のある表情から、笑顔が溢れて、足取りが軽やかになる。
「殿下……?」
僕が、控えめに微笑むと、殿下も照れたような顔をする。
「美しい……。触れてもいいだろうか……」
殿下が恐る恐る手を伸ばしてくる。
白と金の衣が、朝の陽に溶けてゆくように揺れている、薄絹の重なりに手が触れる。
風に触れて、ひとひらごとに光を返す。
「まるで光そのものが形をとって人になったかのようだ」
「マクシミリアン様……」
「……美しい」
殿下の声にならぬ吐息が零れる。
殿下が僕の肩に触れると、衣の上から微かな温もりが伝わる。
「どうしてそんな顔を……」
僕が恥ずかしくなって目を伏せる。
殿下がその頬にかかる髪を指先でそっと払う。
「……目が離せないんだ。
君がここにいる、それだけで世界に祝福されている気がする」
殿下が大げさに言う。
僕はただ静かに笑った。
「では、今日の光は……マクシミリアン様がくださった祝福ですね」
もう言葉はいらなかった。
殿下が僕の手を取り、ゆっくりと口づけを落とす。
外では、鐘の音が鳴りはじめていた。
光が扉の隙間からあふれ、二人の影を柔らかく包みこむ。
――世界が祝福している
ううん、僕たちが世界そのものの祝福をしてるんだ。
王都全体は、祝福ムードで、街中に花飾りや鐘の音、人々の歌声が満ちている。
「王太子殿下と光の加護を受けた公爵令息の結婚式」で、たくさんの人々が集まっている。
お披露目のバルコニーの前室で、国王陛下夫妻と顔を合わせる。
「準備はよいか、マクシミリアン、エリアス」
低く響く声に、僕は声のする方を向いた。
国王陛下――紅炎の王子の父にして、王国を治めるその威厳は、ただ立っているだけで空気を支配する。
金色の刺繍が施された王衣は朝日に輝き、玉座に座らなくとも、王としての力と威厳を民に示していた。
王妃陛下も並び、柔らかい微笑みを浮かべる。
「エリアス、マクシミリアンを頼みますよ」
アンドリア王子とレイナ様もいる。
「兄上、エリアス、おめでとう。
エリアス、あんまり緊張すんなよ……」
「大丈夫ですわよ、今日こそは、マクシミリアン殿下とずっとくっついていられますからね」
レイナ様がからかうように言う。
僕は緊張と期待で胸を押さえながら、バルコニーの向こうに広がる王都の街並みを見下ろした。
下には祝福のために集まった民衆が、きらきらと笑顔を輝かせている。
祝福の鐘が鳴り響く。
国王陛下夫妻がバルコニーに歩き出した。
声にならない歓声が響き渡る。
「皆の者、このたび我が王太子マクシミリアンと、精霊の光を宿す伴侶エリアスが結ばれたことを、ここにお知らせする!」
陛下の宣言がバルコニーに響き渡る。
民衆の歓声が揺れる。
「……さぁ行くよ」
マクシミリアン殿下にエスコートされて、僕たちは肩を並べて歩き、バルコニーに足を踏み入れた。
精霊の光が僕の周りをふんわりと包み、民衆からも祝福のざわめきが届く。
手を握るマクシミリアンの掌はあたたかく、力強い。
「緊張するな、エリアス。君の光が、皆を幸せにするんだ」
その言葉に、自然と胸の奥の不安が溶けていく。
バルコニーに立つと、精霊たちの光が僕たちを祝福するように舞った。
花びらのように、羽のように、透明な光がひらひらと降り注ぐ。
民衆の歓声と光が、まるで世界全体が僕たちを祝福しているかのようだった。
すると後方で声がした。
「わあ、やっぱり王太子妃は光が違うわね!」
アンドリア王子は僕の方を見ながら言うと、婚約者のレイナ様を伴ってバルコニーに登場した。
民衆の視線を集めながら、さりげなく微笑む二人。
レイナ様の視線が僕に向いたとき、思わず少し照れてしまった。
「今日から、二人は我が王国の希望となる」
国王陛下の声が重く、温かく響く。
胸の奥で、僕は誓う――マクシミリアン殿下と共に、この光を正しく導き、世界を守るのだ、と。
手を握るマクシミリアン殿下の指先に力を込め返し、僕は微笑む。
その瞬間、民衆の歓声も、精霊の光も、全てが僕たちの絆を祝福してくれているように感じられた。
殿下はいつも、まっすぐに僕を見つめる。
誰よりも多くの民に慕われ、王国の未来を背負う人なのに、
今この瞬間だけは、世界のすべてが僕たち二人だけのものになったように感じる。
歓声が上がり、聖樹の鐘が再び鳴り響く。
まるで天がこの結びつきを祝福してくれているように、光が溢れて止まらなかった。
僕は見上げる。
マクシミリアン殿下――いいえ、僕の愛しい人。
この国の王となるその人の微笑みは、どんな光よりもまぶしかった。
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