(新章開始)当て馬だった公爵令息は、隣国の王太子の腕の中で幸せになる

蒼井梨音

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当て馬にされた公爵令息は、今も隣国の王太子に愛されている

北への進軍13

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森を抜け、丘陵を越えて、僕たちの部隊は進んだ。
隙間から差し込む冷たい風が肌を刺し、魔獣の気配が濃く漂ってきた。
地鳴りのような低い唸りが聞こえる。

「気を緩めるな……」
リュシアンが淡々と指示を出す。
声は冷静だが、その目には戦場を見据える鋭さが見える。
僕は胸元のリングを握りしめて、微かに光るリングに力をもらうように息を整えた。
孤独な責任感が肩に重くのしかかる。
けれど、光が胸を温める。
ーー殿下の力が、確かにここにあるから。


マクシミリアン殿下たちのいる集落に到着した。
殿下たちの部隊は分散して、住民の避難支援に奔走している。
倒木を跨ぎ、負傷者を馬に乗せ、子どもたちを守りながら進む。
僕はまだ孤独を感じている──それでも、皆と共に戦うことで、少しだけ支えられている感覚があった。

遠く、木立の向こうに光と影が揺れる。
マクシミリアン殿下のいる主力討伐部隊が魔獣に立ち向かっていた。
剣の閃き、魔力の奔流、馬の蹄の衝撃。
戦場は大きな炎と突風が起こり、緊張が頂点に達する。

そして、魔獣が倒れた瞬間、静寂が訪れる。
埃と煙が舞う中、マクシミリアン殿下の姿が見えた。
鎧は戦いの痕で光を反射し、馬上からゆっくりとこちらに視線を感じた。

僕は胸が熱くなった。
「……殿下……」
孤独だった日々、恐怖や不安、すべてが一瞬で押し流される。
胸元のリングが光を強め、加護の力と共鳴する。
その温かさが、離れたとこにいる殿下の存在を、現実として伝えてくれる。

マクシミリアン殿下は馬を降り、ゆっくりと歩み寄る。
「……無事だったか、エリアス」
声には優しさと安堵が混ざっていた。
感極まり、僕は目に涙を浮かべながら駆け寄る。
「殿下……!」
僕たちは戦場の騒音を忘れるように抱き合った。
涙が流れて、止まらなかった。
戦いの緊張、孤独、そして互いを信じる力が一つになった瞬間。
胸元のリングは淡く光り続け、二人の絆を静かに祝福しているかのようだった。

しかし、その瞬間、森の奥から魔獣の咆哮が響く。
完全に倒したと思った個体が、わずかにうめき声を上げ、なおも抵抗を続けていた。

「まだ油断するな!」
マクシミリアン殿下が鋭く声を上げ、剣を振るう。
僕は胸元のリングに手を置き、光の共鳴を感じる。
「僕も、殿下と一緒に……!」

二人の力が一体となった瞬間、加護と魔力が絡み合い、光の渦が魔獣を取り巻く。
魔獣は圧倒され、逃げ場を失ったまま大地に崩れ落ちる。

僕は光を放ちながら、仲間たちを守る防御壁を形成。
その中でマクシミリアン殿下は攻撃の指揮を取りつつ、瞬間的に魔獣の動きを封じる。
僕たちな連携は息を合わせた舞のように滑らかで、戦場に静かな威圧感を生み出す。

「エリアス、視界を広く持て!」
「はい!」
言葉は少ないが、動きは完全に呼吸が合っている気がする。
敵の一撃も、互いの力でカバーされ、部隊全体が安全に退避できる。

魔獣が最後の咆哮を上げ、完全に倒れた瞬間、戦場に静寂が戻る。
マクシミリアン殿下は僕を見つめて、短く微笑む。
「よくやったな。君がいれば、もう恐れるものはない」

僕も胸の高鳴りを感じながら、リングを握りしめ、力強く頷く。
「殿下と一緒なら、僕も戦えます!」

戦場に残る光の余韻が、僕たちの絆と共闘の力を静かに祝福していた。
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