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当て馬にされた公爵令息は、今も隣国の王太子に愛されている
束の間の安息、迫りくる試練⑥
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王都が見えてきた。
もうすぐ到着すると思うと、ずっと感じていた気持ち悪さも和らいでくる気がしてくる。
馬車が宮廷の門をくぐると、出迎えのレイナ様とマルクの姿があった。
二人とも、僕の体調の異変を知らされてはいないようだった。
馬車から降り僕の顔色の悪さと、少しふらつく歩き方を見て、驚いたのと、心配そうな表情が見てとれた。
「エリアス様、大丈夫ですか!」
レイナ様が駆け寄り、マルクもすぐに支えに手を差し伸べる。
「……はい……少し疲れただけです」
気丈に微笑もうとするが、唇はわずかに震えて、声も弱々しい。
その様子に、二人とも言葉を失う。
深刻さが、誰の目にも明らかだった。
離宮の自室に辿り着き、僕はベッドに横たわる。
埃っぽくて、しばらくしてないけど、湯浴みも今はとりあえずできない。
それでも、ふかふかの布団に包まれると、少しずつ吐き気も和らぎ、呼吸も落ち着いてきた。
レイナ様とマルクは、心配そうに、ずっと僕に寄り添ってくれていた。
落ち着いたところで、僕は二人を見上げ、静かに告げた。
「……実は、赤ちゃんができました」
レイナ様とマルクは驚いて、目を見開いた。
表情の奥には喜びと安堵が交じっている。
僕は微笑みながらも、心配そうに自分のお腹に手を添えた。
「……無事に戻れたから、二人には、早く伝えたくて」
ベッドに横たわりながら、心の中でホッと息をつく。
つわりと疲労で体はまだ重いが、王都に無事戻り、秘密を打ち明けられた安心感が、少しずつ心を軽くしていった。
日が暮れて、部屋の明かりはほのかに灯り、外の月光が窓から差し込む。
僕はベッドに横たわる。
まだ少し疲れが残っていて、体も重い。
「……マルク……殿下は、無事に討伐を終えて戻ってきてくれるかな……」
小さな声に、胸の奥の不安がにじむ。
涙がこぼれそうになるのを、必死にこらえる。
マルクはそっと隣に腰を下ろし、手を背中に回す。
「大丈夫です、殿下も無事に戻られます。私がついていますから」
けれど、僕は小さく肩を震わせ、涙を落とす。
「……でも、妊娠しちゃったから、僕が体調を崩したら……殿下に迷惑をかけちゃう……かな……」
甘えたい気持ちと、不安と、情緒不安定さが混じって、涙が出てくる。
マルクは背中を優しくさする。
「そんなことは考えなくていいです、エリアス様。
今は休むことだけ考えましょう」
温かい手の感触に、僕はさらに涙をこぼし、肩を震わせながら小さく嗚咽した。
少し落ち着くと、僕はまた震える声で話す。
「……マルク、赤ちゃんができたこと、殿下にはまだ言えなかった。でも、誰かに聞いてほしかった……。本当はマクシミに一番に話したかった……」
「分かりました。そうですね。秘密は私が守ります。殿下には、帰ったらお話ししましょう」
その言葉に、僕は涙を拭い、少しだけ安心したように微笑んだ。
マルクはそっと添い寝し、背中をさすりながら眠りに誘ってくれた。
重くて暖かい手に包まれ、僕はやっと心から深い安らぎを感じた。
夜は静かにふけていって、二人だけの世界が広がる。
疲れ切った体と揺れる心を、ゆっくりと癒していく夜だった。
朝の光が離宮の窓から差し込む。
昨夜、マルクに背中をさすってもらいながら泣き疲れた体はまだ重いが、僕は布団からゆっくりと起き上がった。
鏡に映る自分の顔を見て、深呼吸を一つ。
もう泣くのは終わり。
今日から、王都で休みながら、誰にも心配をかけないように振るまおう。
「……大丈夫、僕は気丈にやらないと」
小さな声で自分に言い聞かせ、柔らかく微笑む。
昨夜の涙と甘えは、もう胸の奥にしまい込んだ。
ベッドの脇にはマルクが控えている。
マルクの視線に微かに頷き返し、体調の悪さを隠しつつも、今日一日を乗り切る覚悟を胸に刻む。
——これからも、殿下を、そしてこの命を守るために。
もうすぐ到着すると思うと、ずっと感じていた気持ち悪さも和らいでくる気がしてくる。
馬車が宮廷の門をくぐると、出迎えのレイナ様とマルクの姿があった。
二人とも、僕の体調の異変を知らされてはいないようだった。
馬車から降り僕の顔色の悪さと、少しふらつく歩き方を見て、驚いたのと、心配そうな表情が見てとれた。
「エリアス様、大丈夫ですか!」
レイナ様が駆け寄り、マルクもすぐに支えに手を差し伸べる。
「……はい……少し疲れただけです」
気丈に微笑もうとするが、唇はわずかに震えて、声も弱々しい。
その様子に、二人とも言葉を失う。
深刻さが、誰の目にも明らかだった。
離宮の自室に辿り着き、僕はベッドに横たわる。
埃っぽくて、しばらくしてないけど、湯浴みも今はとりあえずできない。
それでも、ふかふかの布団に包まれると、少しずつ吐き気も和らぎ、呼吸も落ち着いてきた。
レイナ様とマルクは、心配そうに、ずっと僕に寄り添ってくれていた。
落ち着いたところで、僕は二人を見上げ、静かに告げた。
「……実は、赤ちゃんができました」
レイナ様とマルクは驚いて、目を見開いた。
表情の奥には喜びと安堵が交じっている。
僕は微笑みながらも、心配そうに自分のお腹に手を添えた。
「……無事に戻れたから、二人には、早く伝えたくて」
ベッドに横たわりながら、心の中でホッと息をつく。
つわりと疲労で体はまだ重いが、王都に無事戻り、秘密を打ち明けられた安心感が、少しずつ心を軽くしていった。
日が暮れて、部屋の明かりはほのかに灯り、外の月光が窓から差し込む。
僕はベッドに横たわる。
まだ少し疲れが残っていて、体も重い。
「……マルク……殿下は、無事に討伐を終えて戻ってきてくれるかな……」
小さな声に、胸の奥の不安がにじむ。
涙がこぼれそうになるのを、必死にこらえる。
マルクはそっと隣に腰を下ろし、手を背中に回す。
「大丈夫です、殿下も無事に戻られます。私がついていますから」
けれど、僕は小さく肩を震わせ、涙を落とす。
「……でも、妊娠しちゃったから、僕が体調を崩したら……殿下に迷惑をかけちゃう……かな……」
甘えたい気持ちと、不安と、情緒不安定さが混じって、涙が出てくる。
マルクは背中を優しくさする。
「そんなことは考えなくていいです、エリアス様。
今は休むことだけ考えましょう」
温かい手の感触に、僕はさらに涙をこぼし、肩を震わせながら小さく嗚咽した。
少し落ち着くと、僕はまた震える声で話す。
「……マルク、赤ちゃんができたこと、殿下にはまだ言えなかった。でも、誰かに聞いてほしかった……。本当はマクシミに一番に話したかった……」
「分かりました。そうですね。秘密は私が守ります。殿下には、帰ったらお話ししましょう」
その言葉に、僕は涙を拭い、少しだけ安心したように微笑んだ。
マルクはそっと添い寝し、背中をさすりながら眠りに誘ってくれた。
重くて暖かい手に包まれ、僕はやっと心から深い安らぎを感じた。
夜は静かにふけていって、二人だけの世界が広がる。
疲れ切った体と揺れる心を、ゆっくりと癒していく夜だった。
朝の光が離宮の窓から差し込む。
昨夜、マルクに背中をさすってもらいながら泣き疲れた体はまだ重いが、僕は布団からゆっくりと起き上がった。
鏡に映る自分の顔を見て、深呼吸を一つ。
もう泣くのは終わり。
今日から、王都で休みながら、誰にも心配をかけないように振るまおう。
「……大丈夫、僕は気丈にやらないと」
小さな声で自分に言い聞かせ、柔らかく微笑む。
昨夜の涙と甘えは、もう胸の奥にしまい込んだ。
ベッドの脇にはマルクが控えている。
マルクの視線に微かに頷き返し、体調の悪さを隠しつつも、今日一日を乗り切る覚悟を胸に刻む。
——これからも、殿下を、そしてこの命を守るために。
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