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当て馬にされた公爵令息は、今も隣国の王太子に愛されている
束の間の安息、迫りくる試練 『マクシミリアン』②
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森を抜け、馬の蹄が乾いた道を刻む。
私は背後に瘴気の僅かに残る森を見やりながら、静かに息をついた。
——終わった……ヴァルデシア討伐。
しかし、胸の中には戦いの疲労だけでなく、エリアスへの思いが渦巻く。
——エリアスがいなかったのなら、ここまで順調に進めなかった……
——か弱いエリアスを戦地に送り出してしまったことが、本当に申し訳なく思う……
目を閉じると、
あの優しい光——戦場で包まれた加護の感触——
が蘇る。
あれは、王都から私を想ってくれたエリアスの力だ。
離れていても、こうして私を支え、仲間を守ってくれた。
道中に立ち寄った小さな集落。
討伐中に、瘴気の影響で苦しんでいた村人たちが助けられ、笑顔を取り戻している。
——それは、きっとエリアスの加護の力だ。
胸に熱いものが込み上げる。
目の前の人々を守ることができた喜びも、すべてエリアスの力によるものだと思うと、感謝でいっぱいになる。
馬の上で、手綱を握る手に力を込める。
ーー思えば最初にエリアスがドラヴァールに来ると知ったとき、ルヴァニエールで婚約したばかりの王太子が振った美しい人だと聞いた
ーーどんな人だろうと、会いに行ったら、とても美しかった……
ーーなんとか振り向いてもらいたくて、たくさん話しかけた
ーーあの可憐な姿で、かける加護の力は目を奪われた
ーー初めて一緒に戦って、彼の力を目の当たりにして、そして彼を守りたいって思った
エリアス。
私の愛しい人……
——王都に戻ったら、一番最初にエリアスに会おう。
——無事に、笑顔で再会して、しっかり抱きしめてやる——
風が頬を撫で、馬の蹄音がリズムを刻む。
私の胸には、戦いの疲労よりも、エリアスへの感謝と愛情、再会への期待が力強く広がっていた。
王都の城門が見え始めた。
遠くから紅炎宮の屋根が輝きを放ち、心臓が高鳴る。
——もうすぐだ……エリアスの笑顔に、会える——
深呼吸を一つし、馬の背を前に押す。
戦いを越え、無事に帰還するために。
そして、何よりも——エリアスの元へ帰るために。
暗くなったあたりに灯りが灯ってきた。
城門を抜け、紅炎宮の庭に駆け込む。
そこには、心配そうに私を待つエリアスの姿があった。
「エリアス……!」
声が震えて、急いで駆け寄り、抱きしめる。
「殿下……無事に……!」
涙が頬を伝い、二人の額が触れ合う。
戦いの緊張も、疲労も、今はすべて溶けてしまったように、ただ抱きしめ合う。
私が少し顔を離し、息を整えながら言った。
「ヴァルデシア……討伐してきた。もう大丈夫だ、もう怖いものはない」
エリアスはうんうん、と頷いてわたしの胸に顔をうずめている。
「エリアス、君の加護のおかげだよ……」
エリアスの背を撫でながらそう言うと、うんうん頷く。
それから、エリアスは顔をあげて、
「僕ね……僕、僕とマクシミの赤ちゃんができたよ」
その言葉に、私は言葉を失った。
次の瞬間、笑いと涙が混ざり合った表情で、エリアスを抱きしめ返す。
「……本当か!……本当なんだな!……なんて……嬉しい……!」
泣き笑いする声が夜の庭に響き渡り、私ちちの胸の中には、戦いの緊張も不安も、すべて消え去っていった。
戦いは終わり、未来への希望と命の喜びに包まれた夜。
私はエリアスの額にそっと唇を寄せ、静かに誓った——
——君も赤ちゃんも、絶対に守る、と。
※第二部があと9話なので、明日から1日3回更新します。
その後、番外編を挟んで、第三部を始めます。よろしくお願いします。
私は背後に瘴気の僅かに残る森を見やりながら、静かに息をついた。
——終わった……ヴァルデシア討伐。
しかし、胸の中には戦いの疲労だけでなく、エリアスへの思いが渦巻く。
——エリアスがいなかったのなら、ここまで順調に進めなかった……
——か弱いエリアスを戦地に送り出してしまったことが、本当に申し訳なく思う……
目を閉じると、
あの優しい光——戦場で包まれた加護の感触——
が蘇る。
あれは、王都から私を想ってくれたエリアスの力だ。
離れていても、こうして私を支え、仲間を守ってくれた。
道中に立ち寄った小さな集落。
討伐中に、瘴気の影響で苦しんでいた村人たちが助けられ、笑顔を取り戻している。
——それは、きっとエリアスの加護の力だ。
胸に熱いものが込み上げる。
目の前の人々を守ることができた喜びも、すべてエリアスの力によるものだと思うと、感謝でいっぱいになる。
馬の上で、手綱を握る手に力を込める。
ーー思えば最初にエリアスがドラヴァールに来ると知ったとき、ルヴァニエールで婚約したばかりの王太子が振った美しい人だと聞いた
ーーどんな人だろうと、会いに行ったら、とても美しかった……
ーーなんとか振り向いてもらいたくて、たくさん話しかけた
ーーあの可憐な姿で、かける加護の力は目を奪われた
ーー初めて一緒に戦って、彼の力を目の当たりにして、そして彼を守りたいって思った
エリアス。
私の愛しい人……
——王都に戻ったら、一番最初にエリアスに会おう。
——無事に、笑顔で再会して、しっかり抱きしめてやる——
風が頬を撫で、馬の蹄音がリズムを刻む。
私の胸には、戦いの疲労よりも、エリアスへの感謝と愛情、再会への期待が力強く広がっていた。
王都の城門が見え始めた。
遠くから紅炎宮の屋根が輝きを放ち、心臓が高鳴る。
——もうすぐだ……エリアスの笑顔に、会える——
深呼吸を一つし、馬の背を前に押す。
戦いを越え、無事に帰還するために。
そして、何よりも——エリアスの元へ帰るために。
暗くなったあたりに灯りが灯ってきた。
城門を抜け、紅炎宮の庭に駆け込む。
そこには、心配そうに私を待つエリアスの姿があった。
「エリアス……!」
声が震えて、急いで駆け寄り、抱きしめる。
「殿下……無事に……!」
涙が頬を伝い、二人の額が触れ合う。
戦いの緊張も、疲労も、今はすべて溶けてしまったように、ただ抱きしめ合う。
私が少し顔を離し、息を整えながら言った。
「ヴァルデシア……討伐してきた。もう大丈夫だ、もう怖いものはない」
エリアスはうんうん、と頷いてわたしの胸に顔をうずめている。
「エリアス、君の加護のおかげだよ……」
エリアスの背を撫でながらそう言うと、うんうん頷く。
それから、エリアスは顔をあげて、
「僕ね……僕、僕とマクシミの赤ちゃんができたよ」
その言葉に、私は言葉を失った。
次の瞬間、笑いと涙が混ざり合った表情で、エリアスを抱きしめ返す。
「……本当か!……本当なんだな!……なんて……嬉しい……!」
泣き笑いする声が夜の庭に響き渡り、私ちちの胸の中には、戦いの緊張も不安も、すべて消え去っていった。
戦いは終わり、未来への希望と命の喜びに包まれた夜。
私はエリアスの額にそっと唇を寄せ、静かに誓った——
——君も赤ちゃんも、絶対に守る、と。
※第二部があと9話なので、明日から1日3回更新します。
その後、番外編を挟んで、第三部を始めます。よろしくお願いします。
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