（新章開始）当て馬だった公爵令息は、隣国の王太子の腕の中で幸せになる

当て馬にされた公爵令息は、隣国の王太子と精霊の導きのままに旅をします

プロローグ

夜の静寂を破るように、窓からひんやりとした風が吹き込んだ。
僕は寝室のベッドで目を覚まして、薄暗い部屋の中でひと呼吸置いた。
隣には眠っいているマクシミリアン殿下の姿があって、その寝顔は穏やかで、胸がぎゅっと熱くなる。

頬を風が撫でた瞬間、胸の奥で何かがざわついた。
——封印の光が、微かに揺らいでいる……？

僕はそっとベッドから起き上がり、窓の外に目をやる。
月明かりに照らされた庭の向こう、何かが淡く揺れているように見えた。

「…エリアス？」
半分寝ぼけた声で、マクシミリアン殿下が呼びかける。

「マクシミ…ちょっと変なの、感じた……」
僕は静かに囁き、手を伸ばしてマクシミリアン殿下の腕に触れる。

「大丈夫、俺がいるから」
ぎゅっと抱きしめられて、僕は安心して小さい吐息を漏らす。
…そうだよね…。

窓の外の微かな光の揺らぎを前に、僕たちはまだその意味を完全には理解していなかった。
けれど、世界の何かが静かに動き始めていることだけは、確かだった。