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当て馬にされた公爵令息は、隣国の王太子と精霊の導きのままに旅をします
旅立つ二人④
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「父上に許可をいただいて、王宮の通信室を使おう。
精霊関連だ、神殿も協力してくれるはずだ。」
それから、マクシミリアン殿下と一緒向かったのは、王宮の神殿にある魔導儀式室。
そこで、遠く離れた相手と音声と映像のやりとりのできる通信用の水晶球を使ってルヴァニエールと連絡をとってもらう。
この魔道具の水晶通信陣を扱うのは、魔術のすぐれた外交官である通信士。
「ありがとう、マクシミ……。
僕、セドリック兄さまに、すぐ話がしたい」
通信士が魔法陣を描いて、水晶球が反応する。
「……回線、開きます。
ルヴァニエール王宮、応答願います」
しばらくして、ルヴァニエール側が応答する。
『こちらルヴァニエール王宮通信室。
ドラヴァール殿下か?』
通信士と並んで、マクシミリアン殿下とその半歩後ろに僕が控えている。
「然り。急ぎ、アーデント公爵殿に取り次ぎを願う」
ルヴァニエールの通信士が応える。
『公爵殿は現在王都にて執務中。
呼び出し、明朝となります』
兄さまとの約束をとりつけると、僕は胸を押さえながら小さく口に出していた。
「……兄上……」
マクシミリアン殿下がそっと手を重ねて
「もうすぐ話せる」と微笑んでくれた。
明朝、マクシミリアン殿下と通信室に向かった。
通信士が水晶円卓に魔法陣を作り、光が揺らいで通信陣が開いた。
『……エリアス?』
一瞬、息を飲むような間。
次の瞬間、柔らかく崩れる声。
『エリアス! 久しいな。ずっと連絡を待っていたよ』
「兄さま……久しぶりです。お元気でしたか?」
『エリアスに“元気でしたか”だと? ふん、元気なわけがないじゃないか。
可愛い弟が、ドラヴァール命の危険にさらされているのではないかと、心臓が休まる暇がないよ』
『あんなに美しくて、か弱いエリアスがこき使われてるんじゃないか心配なんだよ』
相変わらず心配性な兄さま。
僕はもう王太子妃だし、アレクシオとセリオの双子の親なんだけどなぁ。
僕は苦笑して、でも目は少し赤くなっている。
「……ごめんなさい。でもね、僕のことは守ってくれてるから。マクシミが」
横でマクシミリアン殿下が僕の腰を抱き寄せて、静かに一礼した。
「アーデント公爵殿、……ご安心を。エリアスは必ず、私が守ります」
『当たり前だ。お前に任せている』
照れも遠慮もない、兄さまの圧倒的信頼と貫禄。
昔から優秀で、やっぱり兄さまは頼りになる。
少し懐かしい思いに浸って
「兄さま……お願いがあります」
僕は本題に移る。
「――精霊王、女神さまに会うためには、“ルヴァニエールのリング”が必要だと」
一瞬の沈黙。
兄さまの顔から冗談の色が消える。
『……そうか。ついに、お前は“選ばれた道”を歩くのだな』
兄さまの声には誇りと、寂しさと、祈りが混じっている。
『よい。任せろ。 あの王家には……貸しがあるからな』
兄さまの笑顔が冷たい感じがした。
『我が弟を軽んじ、縁を手放した代償――カタをつけてやる』
僕が慌てて、
「お兄さま、ケンカはしないでね?!」
『ケンカではない。正当なる交渉だ。
……そして、“弟を泣かせた家”に礼儀を示させるだけだ』
マクシミリアン殿下が小声で「こわ……いや、頼もしいな……」と呟く。
通信が切れる前、兄さまの表情がふっと柔らかくなる。
『エリアス、……君は私たちの誇りだ。
どんな選択をしても、私はお前の兄だ。
帰ってきたら……抱きしめてやるからな」
「……うん。約束」
通信が途切れた。
「お兄さま、変わらないなぁ……」
僕は鼻をすする。
マクシミリアン殿下が、そっと腕で抱き寄せる。
「お義兄上は、良い方だ。……強い」
「うん。僕の自慢のお兄さまです」
精霊関連だ、神殿も協力してくれるはずだ。」
それから、マクシミリアン殿下と一緒向かったのは、王宮の神殿にある魔導儀式室。
そこで、遠く離れた相手と音声と映像のやりとりのできる通信用の水晶球を使ってルヴァニエールと連絡をとってもらう。
この魔道具の水晶通信陣を扱うのは、魔術のすぐれた外交官である通信士。
「ありがとう、マクシミ……。
僕、セドリック兄さまに、すぐ話がしたい」
通信士が魔法陣を描いて、水晶球が反応する。
「……回線、開きます。
ルヴァニエール王宮、応答願います」
しばらくして、ルヴァニエール側が応答する。
『こちらルヴァニエール王宮通信室。
ドラヴァール殿下か?』
通信士と並んで、マクシミリアン殿下とその半歩後ろに僕が控えている。
「然り。急ぎ、アーデント公爵殿に取り次ぎを願う」
ルヴァニエールの通信士が応える。
『公爵殿は現在王都にて執務中。
呼び出し、明朝となります』
兄さまとの約束をとりつけると、僕は胸を押さえながら小さく口に出していた。
「……兄上……」
マクシミリアン殿下がそっと手を重ねて
「もうすぐ話せる」と微笑んでくれた。
明朝、マクシミリアン殿下と通信室に向かった。
通信士が水晶円卓に魔法陣を作り、光が揺らいで通信陣が開いた。
『……エリアス?』
一瞬、息を飲むような間。
次の瞬間、柔らかく崩れる声。
『エリアス! 久しいな。ずっと連絡を待っていたよ』
「兄さま……久しぶりです。お元気でしたか?」
『エリアスに“元気でしたか”だと? ふん、元気なわけがないじゃないか。
可愛い弟が、ドラヴァール命の危険にさらされているのではないかと、心臓が休まる暇がないよ』
『あんなに美しくて、か弱いエリアスがこき使われてるんじゃないか心配なんだよ』
相変わらず心配性な兄さま。
僕はもう王太子妃だし、アレクシオとセリオの双子の親なんだけどなぁ。
僕は苦笑して、でも目は少し赤くなっている。
「……ごめんなさい。でもね、僕のことは守ってくれてるから。マクシミが」
横でマクシミリアン殿下が僕の腰を抱き寄せて、静かに一礼した。
「アーデント公爵殿、……ご安心を。エリアスは必ず、私が守ります」
『当たり前だ。お前に任せている』
照れも遠慮もない、兄さまの圧倒的信頼と貫禄。
昔から優秀で、やっぱり兄さまは頼りになる。
少し懐かしい思いに浸って
「兄さま……お願いがあります」
僕は本題に移る。
「――精霊王、女神さまに会うためには、“ルヴァニエールのリング”が必要だと」
一瞬の沈黙。
兄さまの顔から冗談の色が消える。
『……そうか。ついに、お前は“選ばれた道”を歩くのだな』
兄さまの声には誇りと、寂しさと、祈りが混じっている。
『よい。任せろ。 あの王家には……貸しがあるからな』
兄さまの笑顔が冷たい感じがした。
『我が弟を軽んじ、縁を手放した代償――カタをつけてやる』
僕が慌てて、
「お兄さま、ケンカはしないでね?!」
『ケンカではない。正当なる交渉だ。
……そして、“弟を泣かせた家”に礼儀を示させるだけだ』
マクシミリアン殿下が小声で「こわ……いや、頼もしいな……」と呟く。
通信が切れる前、兄さまの表情がふっと柔らかくなる。
『エリアス、……君は私たちの誇りだ。
どんな選択をしても、私はお前の兄だ。
帰ってきたら……抱きしめてやるからな」
「……うん。約束」
通信が途切れた。
「お兄さま、変わらないなぁ……」
僕は鼻をすする。
マクシミリアン殿下が、そっと腕で抱き寄せる。
「お義兄上は、良い方だ。……強い」
「うん。僕の自慢のお兄さまです」
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