ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ

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第七話「休息」

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「はい、焼きたてのパンとスープね!」
「うわ、おいしそ……!」

 ギルド併設の食堂で、俺たちは酒飲みから離れた席に座り、昼食をとることにした。出されたメニューは焼きたてのパンに、香草と根菜の入った白いスープ。塩気と香りが胃を刺激する。

「いただきます」
「はい、いただきます」

 どうやらこちらの世界でも食前の挨拶はいただきますでいいらしい。つい当たり前のように口にしていたが、妙に思われなくてよかった。ともあれパンをひと口食べて、思わず目を細める。

「うま……」
「でしょ? セフィーロの町は小麦の産地だからね。パン焼き職人も多くて、みんな腕がいいんだよ」

 エルが嬉しそうに微笑みながら、スープをひと口すする。
 森で過ごしたあの数日が嘘のように、体も心もじんわりと温まっていく。やっぱり、人の作った料理ってすごいな……。森に放り出される前、つまり日本で暮らしていた頃だってインスタント麺やエナジードリンクばかりでちゃんとした食事だなんて本当に久しぶりだ。

「そういえばエルはあの森でなんの依頼をこないていたんだ?」
「あぁ、ウルフの討伐よ。木々の上から狙い撃ちしてあっさり終わらせられるはずだったんだけど、登った木が実はトレントでね。トレントって分かる? 木に擬態する魔物なんだけど――」

 トレントを怒らせてしまい振り落とされ、そこにたまたまウルフもいて、一気にピンチに陥ってしまったところを、ちょうど俺と出会ったというわけか。

「弓矢を新調しないと狩りにもいけないね」
「そっか。じゃあ……なんで昨日のうちにやらなかったんだろう。錬金術で直せるか試してみたい。集中できる場所が欲しいな……」
「じゃあ、私の家においでよ。それに、泊まる場所もないんでしょ? しばらく家にいたらいいよ」

 エルはやっぱりこの町に家があるんだ。……というか、拠点にさせてもらえるなんて。これはラッキーだけど、ちょっと緊張するな。いや、相手は十も年下なんだ。多分。なにを緊張する必要がある。

「助かるよ。じゃあ、行ってみよう」

 食事を済ませた俺はエルに案内されて街はずれの小さな家へとたどり着いた。他に家族はいないようで、あまり手入れが行き届いているようには見えなかった。

「ごめんね、掃除とかできてなくて。ここ、炊事場だから使っていいよ」

 土間の空間で錬金術を使い、錬金釜を出現させる。服を作った時、エルは背中を向けていたから錬金の様子を見るのは初めてだったか。

「あんまり見ない方がいい?」
「いや、別に平気」

 錬金釜にエルから受け取った壊れた弓とよくしなる素材としてボトルプラント、それから採取したつる性植物も投入する。出来上がる弓をイメージしながら太い枝でかき混ぜていると、錬金釜から完成品の弓が飛び出してきた。

「おっとっと。よし、こんな感じでどうかな?」

 エルに手渡して弦の張り具合を確認してもらう。

「いい感じだよ。矢は買い置きしているものがあるから、ちょっと裏で試射してくるね」

 そう言ってエルは勝手口から外へと出て行った。せっかくだから矢も錬金釜で作りたいところだが、木材はあっても鏃になる金属がない。まぁ、必要に応じて作ればいいか。
 せっかく落ち着いて錬金術に臨めるのだから、採取しておいた素材で作れるものがないか試行錯誤してみよう。ポーションもエルに飲ませた一本しか持っていなかったし、これから必要になるだろう。作っておいて損はない。
 俺はしばらく集中してアイテム作成に取り掛かるのだった。
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