ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ

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第八話「冒険者ギルド」

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 エルの家で一泊し、ついでに使っていない金属製品を譲り受けて追加の矢とか片手
扱える槍を錬金した俺は、エルと二人で再びギルドへとやってきた。エルも服と防具を新調しやる気十分だ。
依頼を受けようと掲示板に近づこうとする俺たち、後ろから大男が声をかけてきた。

「よぉエル、いい加減ソロなんてやめて俺らとパーティ組もうぜ?」
「何度も言ってますがグローツさんたちとは組みません。それに今は、コンビを組んでますので」

 声をかけてきた男はグローツというのか。金属鎧を着て背中に戦斧を担いでいる。髪はなくまさにパワーファイターのおっさん冒険者といういでたちだ。その後ろに似たようなむさい男たちがいる。どうやらグローツのパーティメンバーのようだ。

「エルから離れてくれ。今は俺とコンビを組んでいるんでな」

 俺の声にようやくグローツが俺に視線を向けた。こちらの世界に来て見た目も若返ったが、同時に少し背も小さくなったようで、俺はグローツを見上げる形になった。

「ガキが一丁前な口利きやがって」
「ナオだ」

 睨みつけるように割り込んだ俺にムカついてのことか、グローツは舌打ちしてから俺を睨み返してきた。

「この剛腕のグローツとやろうってか。いい度胸だ」

 流石に斧を構えるわけではないが、グローツは拳をふりかぶった。金属製の籠手に覆われた拳だ。殴るだけで生身の俺は耐えられまい。戦闘態勢を取ったのは相手が先、だったらこちらも遠慮は無用だ。

「お前なんてこれで十分だろ」

 収納から一本のボトルを取り出し、中身をグローツに浴びせる。それは森で採取した唐辛子のような実の成分を溶かした液体、催涙スプレーのようなものだ。

「ぎゃあっ! 何しやがったコラァッ!!」
「今だっ!」

 グローツが怯んだ隙にエルの手を掴むと、混乱の中を駆け抜けてギルドの外へ飛び出した。背後から怒号が追ってくるが、明らかに相手が先に手を出してきたのだ。他の冒険者が制止してくれているようだ。
 ほどほどに逃げて一呼吸置く。

「っ、はぁ……トラブル起こしちまったなぁ」

 いざ逃げると、逃げなければならなかったのか疑問が浮かんでくる。まぁ、目に染みるだけでそれ以上の害はないから危険はないだろう。

「ナオ君……!」

 エルが抱きついてくる。震える肩が胸に触れて、心臓が跳ねた。

「ありがとう。……あの人、しつこくパーティに誘ってきて、けっこう迷惑してたの。ガツンと言ってくれて、ありがとう」
「そっか。なら、良かった。でも、今からギルドに行くのはちょっとあれだよなぁ」
「なら、依頼は受けずに魔物討伐に行こう。素材納品系の依頼なら、先にやっておいても大丈夫だから」

 ギルドが頻繁に採取依頼を出す素材をエルは覚えているらしい。出会ったあの森へ向かいながら、俺はエルに一つ尋ねた。

「なんでソロにこだわってるんだ?」

 初めて会った時にも抱いた疑問だがアーチャーが単独で狩りをするというのが、この世界では普通なのかもしれない。でも、俺はどこか違和感がぬぐい切れなかった。

「私、セフィーロの町を出て行くつもりなの。でも、あの人たちはこの森や近くのダンジョンを狩場にしているから。抜ける時に揉めるのが嫌で入らなかったら、それはそれで揉める原因になるんだから、困っちゃうよね……」
「そっか。……どこか、目指している場所があるのか?」
「……姉もね、冒険者なんだ。依頼を受けてあちこち旅してて、でも手紙はくれたの。その手紙が来なくなったのが……三か月前。私、姉を探すために旅に出たい。たった一人の家族だもん」

 エルの双眸には決意の光が宿っていた。

「乗り掛かった舟だ。俺も協力する。錬金術と収納があれば、けっこう役に立てると思う」

 俺の言葉にエルは目を丸くした。

「いいの? ……そっか、ありがとうナオ君」

 エルはまた俺を抱きしめる。こんなにも真っすぐに感謝を伝えられたのは初めてかもしれない。そう思うと、照れくさくてまともな返事なんてできなかった。
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