ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ

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第十一話「クルーア・ダンジョン第二層」

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 クルーア・ダンジョン、第二層。空気が少し冷たく、岩肌には苔や湿り気が目立つようになっていた。

「風が通らないな」
「そうだね、空気がどんよりしている。でも、魔物も冒険者もいるから、気を抜かないでね」

 魔物の襲撃にも当然気をつけねばならないが、冒険者同士のトラブルも避けないとならない。注意することは多いが、それにしたって視界が悪いな。

「一層よりも、少し暗い気がするね」

 エルが周囲を見回しながらそう言った。確かに、魔石灯なしでは足元すら見えないほど、暗闇が濃くなっている。

「魔物の気配も、少し変わった気がする。さっきから、かすかにだけど、低い唸り声が聞こえないか?」

 耳を澄ますと、奥の方から微かに、獣のような声が聞こえてくる。コブイノシシとは明らかに違う、もっと獰猛で、底知れない気配を孕んだ唸り声だ。

「警戒しておいた方がよさそうだな」

 俺は片手槍を再び構え、エルに目配せをする。エルは弓に手をかけ、いつでも射撃できる態勢を取った。
 慎重に足を進めていくと、やがて広い空間に出た。天井は高く、鍾乳石が垂れ下がっている。そして、その奥には、蠢く影が見えた。

「あれは……?」

 エルが小さく息を呑む。影がゆっくりと近づいてくるにつれて、その姿が明らかになった。
 それは、巨大なムカデだった。体長はゆうに三メートルを超え、硬質な外殻に覆われている。無数の足が不気味に動き、鋭い鎌のような顎をカチカチと鳴らしている。

『オオムカデ
硬い外殻を持つ巨大なムカデ型の魔物。鋭い顎と毒液に注意が必要』

 鑑定の結果が表示される。その名の通りの姿だ。にしても毒持ちか。厄介だな。

「嫌なのが出てきたね……動きは遅そうだけど、防御力が高そう」
「ああ、真正面から槍で突いても、歯が立たないかもしれないな」

 オオムカデは、こちらを威嚇するように鎌状の顎を大きく開いた。その奥には、毒々しい緑色の液体が見える。

「まず、動きを止める! エル!」

 俺の合図と同時に、エルが放った矢がオオムカデの胴体に命中する。しかし、硬い外殻に阻まれ、深々と突き刺さるには至らない。それでも、オオムカデの動きは一瞬だけ鈍った。

「今だ!」

 その隙を突き、俺はオオムカデの側面に回り込んだ。狙うのは、外殻の継ぎ目、わずかに防御が薄そうな部分だ。渾身の力を込めて槍を突き出すと、鈍い音と共に、槍先が僅かに食い込んだ。

「キシャーッ!」

 オオムカデが怒り狂ったように体を捻る。無数の足が岩肌を擦り、鋭い鎌状の顎が俺を捉えようと迫ってくる。

「危ないっ!」

 エルの叫びと同時に、新たな矢がオオムカデの頭部を掠める。その衝撃で、オオムカデの注意が一瞬逸れた。

「エル、回り込んで!」
 俺はオオムカデの動きを牽制しながら、エルに指示を出す。エルは素早く岩陰に身を隠し、オオムカデの背後へと回り込んだ。

「ナオ君、今度はどこを狙えばいい?」
「尻尾の付け根だ! あそこなら、少しは柔らかいはずだ!」

 俺の言葉を受け、エルが放った矢がオオムカデの尻尾の付け根に命中する。今度は、外殻を貫き、深々と突き刺さったようだ。

「キギャアアアア!」

 断末魔のような叫びを上げ、オオムカデは激しく体を捩らせる。そして、そのまま地面に崩れ落ち、動かなくなると同時に霧散し始める。

「やった……倒せた!」

 エルが安堵の息を吐く。俺も、槍についた体液を拭いながら、オオムカデに近づいた。

「なかなか手強い相手だったな。素材は……外殻と魔石か。毒液は出なかったな」

 鑑定しながら、素材を収納していく。外殻は防具の素材になるかもしれない。毒ポーションを作るのに毒液を確保したかったが、まだ倒す機会はたくさんあるだろう。

「連携も、少しずつ上手くなってきたんじゃないか?」

 エルに向かってそう言うと、エルは照れたように笑った。

「そうだね。ナオ君の指示が的確だから助かるよ」

 お互いを褒め合いながら、俺たちは再びダンジョンの奥へと足を進めた。第二層は、一層よりも魔物の種類が増え、少しずつ危険度が増しているようだ。それでも、エルとの協力があれば、きっと乗り越えられる。
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