結婚したくない腐女子が結婚しました

折原さゆみ

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番外編【ファンが増えました】2百合展開

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「さすがにこれはうざいな」

「江子先輩。私、先輩のためにお弁当を作ってきたんです。最近、料理にはまっていて、今日はだし巻き卵と筑前煮を作ってきたんですよ!」

「わざわざありがとう。筑前煮ってかなり大変だよね?それなのに、私がもらっちゃっていいの?」

「いいに決まっています。先輩のため、いえ、作り過ぎて余ってしまったので、先輩にはぜひ食べて消費してもらわないと」

「そこまで言うのなら、もらおうかな。紗々先輩の分も」

「ああ、ごめんなさい。丁度二人分で終わりそうです。倉敷さん、また今度、大目に作ったときにあげますね」

 昼休憩になり、私が控え室に入るとそこにはすでに先客がいた。この前に引き続き、梨々花さんと一緒になってしまった。梨々花さんの隣には河合さんもいた。

 そこで繰り広げられていた会話につい、暴言が出てしまったというわけだ。幸いにして、会話に夢中で彼女達は私の言葉を聞いていなかったようだ。河合さんが私に気付いて声をかけてくる。

「先輩、今朝の話の続きですけど」

「江子先輩、聞いてください!当間君、今日も私以外の人をじいと見つめていたんですよ!これはもう、浮気ですよね?私もほかに好きな人ができたので、やっぱりすぐにでも別れ話を」

「梨々花ちゃん、私は先輩とお話がしたいんだけど」

「私に構わず、河合さんは梨々花さんと話しの続きをどうぞ。私は隅の方で勝手にお弁当を食べますので」

 なんとしてでも、梨々花さんは私と河合さんが話すのを阻止したいらしい。今朝からずっと、ことあるごとに会話の邪魔をしてくる。河合さんも職場の後輩に強く言えないのか、あいまいに笑って私との会話より梨々花さんとの会話を優先している。

 ていうか、筑前煮を作り過ぎたとはいったい何事だ。いや、すでに先輩の為にとか言っていた。

「本当に私の予想が当たってしまったのか、これは」

 この前、私が予想した3つ目の可能性が現実味を帯びてきた。河合さんは私よりも他人の機微に敏感だ。あんなにも猛アタックしている梨々花さんの気持ちに気付くのも時間の問題だろう。

 好きでもない人からの筑前煮など、もらえなくても何とも思わないが、河合さんがもらえて私の分はないと、はっきり言われるとむかつく。梨々花さんは本当に私のことが嫌いらしい。私だって、そこまであからさまなひいきをする人間はお断りだ。


 あの日から、あっという間に一週間が経過した。大鷹さんが河合さんに電話をして、その電話で河合さんと梨々花さんが一緒に夕食を取っていたという衝撃の事実が発覚した日。その日以来、梨々花さんは河合さんにびったりとひっついていた。仕事中は別々だが、出退勤の時間や昼休憩が一緒のときは、必ず、河合さんと一緒に居るようになった。

 そのため、私は河合さんとゆっくりと二人きりの時間が取れていない。だから、大鷹さんの機嫌について、河合さんには話せていないわけだ。

 これではまるで、私に構いたがる河合さんみたいだ。いや、それよりも酷い執着かもしれない。

 とりあえず、私は自分の言葉通りに、彼女達から少し離れた席に座ってお弁当を広げる。筑前煮なんてものを作る甲斐性はないので、私の今日のお弁当は昨日の夕食の残りを詰めたものである。大鷹さんが作ってくれたシチューを保温ジャーに入れて持ってきた。

「いただきます」

 控室には私以外にも人がいるのに、まるでボッチ飯を食べているかのような空しい気持ちになりながら、私はシチューを食べるのだった。


「聞いてください!大鷹さん」

「なんですか?紗々さんの話は、わざわざ聞いてくださいなんて言わなくても、聞いていると思いますけど」

「そうですけど!」

 帰宅後、私は大鷹さんに愚痴をこぼしていた。私が帰宅すると、既に大鷹さんがいたので、私たちはリビングのテーブルに向かい合わせになって座る。

 梨々花さんのことが主な内容だが、それ以上に退勤後の出来事が私には衝撃的だったので話したくて仕方なかった。

「あのですね。朝から、職場の後輩と河合さんが……。あとは退勤後、ある現場に出くわしまして……」


 退勤後、残業もなく定時で帰れると安心して更衣室で着替えをした私は、河合さんを発見した。近くに梨々花さんはいなかったので、河合さんに声をかけようとしたが、それを阻むものが現れた。仕方ないので、その相手と河合さんの二人の会話が終わるのを陰から見守ることにする。

「河合さん、ちょっとこの後、少し二人きりで話ができたりしないかな?時間は取らせないから」

「ええええ!いいんですかあ?確か、当間さんって、梨々花さんとお付き合いしていたでしょう?私と二人きりになったら、浮気だと勘違いされません?」

「エエト……。たぶん、大丈夫だと思う。本当に5分だけでいいから外で少しはな」

「外は寒いので嫌ですう。何なら、ちょうど今、この場に人がいないので、用件を言ってもらってもいいですかあ」

「エエト、でも、今は人はいなくても、いつどこから人が来るのかわからないから」

「誰かに聞かれたらまずいことを私に話すつもりだったのなら、遠慮しますう。どう考えても面倒ごとの匂いしかしないので。ああ、そうだ。この条件だったら聞いてあげてもいいですよ」

 河合さんはあたりをきょろきょろと見回して、急に当間に近付き、耳元で何かを囁く。

「いや、それはさすがに。第一、二人きりじゃないよね?」

「でもお、当間さんと二人きりではないので、それだったら、私は安心してお話を聞けますよお」

 先ほどから、河合さんの話し方が気になって仕方ない。どうして、仕事中や私に話すような普通の話し方ではないのか。なぜ、梨々花さんが私に話しかけるときの語尾が伸びたあざと可愛い話し方をしているのか。

「まあでも、それで話を聞いてくれるのなら」

「あれ、河合さんと、当間君?どうして二人が話をしているの?仲良かったっけ?」

 そこにさらに新たな人物が現れた。こうなってしまうと、私が河合さんに話しかけるスキマはない。今日はおとなしくそのまま家に帰った方がよさそうだ。下手にこの三人の間に入って、面倒ごとに巻き込まれたくはない。

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