結婚したくない腐女子が結婚しました

折原さゆみ

文字の大きさ
185 / 234

番外編【ファンが増えました】5恋愛の形は様々

しおりを挟む
「さて、どうしたものか」

 自分の部屋に駆け込んだ私は、パソコンの前に座り、悩んでいた。大鷹さんの前から逃げてきたわけだが、それからのことは考えていなかった。とはいえ、入浴の時間まではまだ時間がある。大鷹さんも私が当分、部屋から出てこないことはわかっているだろう。

 そうなると、やることは一つだけだ。しかし、それには問題があった。

「私はネタが思いついていないんだよなあ」

 小説を執筆するためにパソコンの電源は入れたものの、執筆画面に移動はしていない。小説のフォルダが詰まったホーム画面が私の前にあった。大鷹さんは私の今日の退勤後の話しと、先ほどまでの会話が「小説みたい」だと言っていた。本当にそうだろうか。

「まあ、修羅場みたいな感じではあったの、か?」

 大鷹さんに話したことをパソコンに入力しようと執筆画面を開く。そして、自分が大鷹さんに話したことを簡潔にまとめて入力していく。

【退勤後、当間が河合さんを呼び留めて話しかけていた。しかし、河合さんは梨々花さんを理由に二人きりになるのを避けていた。そこへ当間の恋人である梨々花さんがやってきた。そのことを大鷹さんに話したら、大鷹さんは河合さんを元カノだと改めて宣言した。私は大鷹さんが、河合さんが他の男性に取られることを危惧したと思い込み、離婚したいのだと思い込んだが、誤解だった。しかし、大鷹さんが河合さんと趣味や好みが似ていることにモヤモヤを感じた。】

 改めて言葉にしてみると、確かに修羅場に見えなくもない。しかし、私には彼らの事をどうしても小説のネタにすることができなかった。

「だって、当間だしなあ」

 好きでもない相手、むしろ嫌いな人間の事を小説のネタにするのは正直嫌だ。だからこそ、大鷹さんのように小説のネタとして見ることができなかった。だから、大鷹さんに先を越されようと、今回の件に関しては仕方ない。

「違うネタで書くか、それとも」

 河合さんと私、大鷹さんの三人で書くか。

 口にしてみたら、案外、面白そうだった。

 自分が体験した気持ちを言葉にするのは割と簡単だ。未知なる感情を言葉にする時よりよっぽど楽だ。自分のありのままの気持ちをパソコンにぶつけるだけでいい。

「決まった。そもそも、大鷹さんと私のネタは前から結構使っているし、そこに河合さんが混ざったところで問題はないでしょ」

 当間が混ざるのはごめんだが、河合さんなら問題ない。私は、退勤後のことは触れずに、私と大鷹さんの会話を元に小説のあらすじをパソコンに入力することにした。


・主人公にはすでに恋人がいたが、親友の事もとても大切にしていた
・ある日、親友が私も恋人を作ると宣言した
・主人公はてっきり、親友はもう、恋愛をしないと思っていた
・主人公の恋人は親友の元恋人だったが、彼と親友はすでに別れていて、お互いに未練はない
・親友は彼との恋愛を最後に恋人は作っていなかったので、勝手に自分との関係が一番だと思い込んでいた
・恋人を作る宣言後、親友は主人公と過ごす時間を減らすようになった
・主人公はそれが寂しいと感じ、恋人にそのことを話すと、真剣な表情である提案をされた
・「僕と親友、二人同時に付き合うことにすれば、解決すると思います」
・今の状態は恋人である彼との時間がどうしても優先される
・それが親友にとって苦痛なのかもしれない
・あるいは僕たちの関係が羨ましくあるのかもしれない
・親友と恋人は趣味が似ていて、好きな人のタイプがよく似ている
・そして、今現在好きな人は主人公。親友もきっとそうだろう
・主人公は親友にかなり残酷なことをしていた
・恋人は親友と主人公を共有することに異論はなかった
・親友に新たな恋人ができることが望ましいが、下手に変な人を見つけて傷つくのは見たくない。別れてどうでも良いというわけにはいかなかった
・主人公は恋人の提案を飲むことにした
・親友にそのことを正直に話すと、苦笑される
・今までは元彼を主人公の恋人だということで、遠慮していた
・それがいらないとなったら、大変なのは主人公と恋人だよ
・親友が他の誰かとくっつくのを想像するだけで胸が痛いので大変でも大丈夫
・自分は欲深い人間だと思うがそれでも好きでいてくれるだろうか
・親友も恋人も笑顔で「私たちは趣味が似ているから、覚悟しておくように」と言う
・こうして、三人での奇妙な関係(恋人関係)が始まるのだった


「こんなものか」

 ざっとあらすじをパソコンに入力してみたが、なるほど、これは新たな扉を開きそうな話だ。私は今までBL(ボーイズラブ)を中心に執筆してきた。大抵は2人の男性同士の恋愛が主だった。大鷹さんと河合さん、私を元にあらすじを作ってみたが、性別は決めていない。男三人にしてもいいし、元の三人の性別を使ってもいい。いや、性別を同じにしてしまうと、フィクションにならない。やはり、男三人でBLにしよう。

「三人での恋愛は、自分では書いたことがないけど、意外と書いてみたら面白いかも」

 そうと決まれば、このあらすじからキャラクターの名前や人物設定をもっと詳しく考える必要がある。

「頑張ってみますか」

 この時、私は大鷹さんと河合さんを元に書いていた。個人の特定されるようなことは書いていないが、彼らには自分たちの事だとわかるだろう。そのことが頭から抜けていた。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

月弥総合病院

僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

処理中です...