27 / 71
第ニ章
第26話 学園生活(居残り)
しおりを挟む休み時間も昼休みもレポートを書けなかった俺は、午後の授業中に書こうと思ったが、体育の授業と移動教室の為、レポートを書くことが出来なかった。
仕方なく、放課後教室に残ってレポートを書いていると、俺と同じく教室で残ってレポートを書いている飯塚 早苗がいた。
ふと、彼女と目があった。
しかし、直ぐに視線を逸らされレポートを書いている。
俺も、何も言わずにレポートを書き作業に取り掛かる。
「やったーー終わったぞ」
飯塚 早苗も終わったようで、また、目が合ってしまった。
教室には2人だけだ。
L*NEの通知には、瑠奈や陽奈から、先帰っていると連絡が入っている。
返事を返して机の上に散らかっている文房具をしまい、バッグを抱えて職員室に向かった。
篠崎先生は直ぐに見つかった。
俺は、レポートを提出すると、その後にすかさず飯塚 早苗も提出する。
「あ、そうだ。霞君と飯塚さん、ちょっといい? ここにある教材を学習準備室に運んで置いてくれると助かるんだけど」
先生のデスクの脇には棒状の資料と段ボールに入っている裏が磁石になっている教材が入っていた。
「学習準備室ですか? いいですけど、俺、場所知りませんよ」
「それなら、飯塚さんが知ってるわ。じゃあお願いね~~」
俺は重そうなダンボールを飯塚は筒状の資料を持って飯塚の後について行く。
職員室から学習準備室までは、結構な距離がある。
まず3階まで階段で上がり、三年生の教室を通らずに渡り廊下に出て別棟の特別教室があるところまで行かないといけない。
俺にとっては、こんな荷物重くも何ともないが、飯塚には重そうに見えたのだろう。
歩みを遅らせゆっくり歩いていた。
気が効く子なんだな……
そんな事を考えながら、お互い一言も喋らずただ荷物を持って階段を登る。
すると、廊下の窓が開いていたのか、風が入り込んで飯塚の短いスカートをふわりと巻き上げた。
後からついてきた俺には、その中身をバッチし確認してしまった。
「キャッ! 」
短い悲鳴をあげて、両手で抱えていた荷物を片手に持ち替えて空いた手でスカートを押さえるが、今更遅い。
飯塚は俺を睨んで
「見たでしょう? 」
「見ました」
「見るんじゃねぇ! 変態! 」
目の前の物を見るなと言われても……
顔を赤くして、怒り顔で俺に先に行けと無言で命令する飯塚は、瑠奈や陽奈とは違い紫色の大人の下着を着けていた。
気不味い状態で、学習準備室の部屋にたどり着いた俺達は、先生から預かってきた鍵を開け中に入る。
こもった空気が、襲いかかったがドアを開けておき、荷物を棚にしまう。
その時、飯塚は、
「結城 莉愛夢と仲がいいの? 」
と聞いてきた。
この間の屋上の件を言っているのだろう。
「仲が良いわけではありません。屋上の時は、結城さんは壬さんの案内役を先生から頼まれていたようで、ついでに俺がそこにいただけですから」
「ふ~~ん、そうなんだ。その……なんか私の事言ってた? 」
「同じ元菜園部だと言ってましたが、それ以上のことは何も言ってませんでしたよ。その時の結城さんの雰囲気で2人に何かあったみたいなのはわかりましたが」
すると踵を返して俺の顔をジロジロ見出した。
「ふ~~ん、霞だっけ。あんた、わざとその髪とメガネで顔を隠しているんでしょう? 」
雰囲気が変わったぞ。
それに何でバレた?
こいつ、鑑定持ちか?
「言ってる意味がわかりませんが? 」
「別にたいした意味はないよ」
その時の、飯塚が棚にしまった筒状の資料が転がって飯塚にあたり、飯塚はバランスを崩して転がり、俺に乗りかかるような体勢になってしまった。
俺は仰向けになって、飯塚はその上から俺を見下ろすような体勢だ。
飯塚は、何を思ったのか俺のかけてたメガネを外し、俺の素顔をあらわにさせた。
「やはり、いい顔してるじゃん。あんな美少女な妹さん達がいるんだ。あんたの顔が悪いはずないよな」
俺は飯塚の手に握られていたメガネを奪い、掛け直す。
「何でわざわざ顔を隠すんだ? 」
「君には関係ないだろう? 」
「時期外れの転校生、しかもイケメンなのに顔を隠すように生活を送ってる。何か理由があるんだろう? 知りたいと思うのは仕方ないと思うけど? 」
「俺に関わるな」
そう言う俺を見下ろしながら顔を近ずけてきた。
「何、偉そうに言ってるわけ? 男なんてただ、やりたいだけでしょう? こんな状況でドキドキしないわけないもんね。本当は手を出したくてウズウズしてるんでしょう? 」
悪ぶりながら、そう俺を罵る飯塚 早苗はどこか淋しそうだった。
「悪女を演じたいなら他で勝手にやればいい。だが、飯塚 早苗。お前には似合わない」
「なっ! 何を偉そうに、この童貞! 」
「確かに俺は童貞だ。それが誰かに迷惑をかけたのか? 俺には、そんな事よりやらねばならに事がある。そろそろ、そこからどいてくれないか? 」
「ふんっ! あ~~あ、バカみたい。こんな童貞男と関わるのは私もごめんだわ」
飯塚は、そう捨て台詞を残してその部屋から出て行った。
「全く、何がしたかったんだ? 」
俺は散らばった資料を片付けて鍵を先生のところに持って行き、帰宅した。
あれ、何か忘れているような……
まあ、そのうち思い出すだろう。
◆
その頃、体育館裏では、
「おい! あの霞って奴、こねぇじゃねぇか! 」
「すみません、荒木先輩」
「首に縄引っ掛けてでも連れてこい! 」
「わ、わかりましたーー」
ヤンチャ君達は、健気に待っていたようだ。
そんな様子を遠くから見ていた人物がいた。
「あんなガキでも使えるか……」
その黒い影は、その場から消えて行った。
◆
家に帰ると、陽奈が出迎えてくれた。
何故か俺の周りを回りながらクンクンと犬のように鼻を鳴らしている。
犬かな?
犬だよね……
「お兄、女の匂いがするよ」
陽奈の言葉を聞きつけた瑠奈が奥から走って来た。
後から麗華さんも付いて来る。
「陽奈、今、聞き捨てならない事を言いましたよね」
「うん、お兄から女の匂いがするんだよね~~」
「兄様、どう言う事でしょうか? 説明願います」
女の匂い?
あっ、飯塚 早苗の匂いか……
「電車の中で移ったんじゃないかな? 」
「違うよ。学校の匂いと混じってるから学校で何か接触があったんだよ。きっと」
陽奈、お前は完全に犬だな……
「兄様、何があったのですか! 」
後ろでは麗華さんが笑っている。
笑う場面ではないと思うが……
陽奈や瑠奈には隠し事ができない。
隠しておけば、どんな手でも使って真相を確かめるだろう。
俺は、仕方なく正直に話した。
「う、迂闊でした。兄様を狙う女子がいたなんて。飯塚 早苗ですね」
そう言いながら、自分の部屋にこもってしまった。
「景樹君、何か大変そうだね」
麗華さんは、面白がって笑っている。
「学校は大丈夫だったんですか? 」
「 もう、授業は出てきたわよ。私、優秀だから」
確かに優秀そうだ。
一を聞いて十を知るタイプだよな。
「今夜は、アレの討伐に行くんでしょう? 私も同行させてよ」
「構いませんが、出来れば陽奈と一緒にいてあげてください。2組に別れた方が効率が良いですから」
「あれ? 瑠奈ちゃんは? 」
「ああなった瑠奈は、しばらく部屋から出てきませんから」
「じゃあ、軽く何か食べようか? ピザでもとる? 」
麗華さんはピザの宅配の事を言ってるのだろう。
すると陽奈は、
「やったーー! ピザが注文して自分のお家で食べれるなんて幸せ。都会って便利だね」
確かに、里では山で鹿やら猪を狩って来ないと食べれない。
もちろん、ピザなんて気の利いたものなど無い。
陽奈の食欲に合わせて、麗華さんはピザ屋に電話している。
計算では、これだけで5000円近くなってしまった。
都会ではお金がないと何もできないようだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【アイテム分解】しかできないと追放された僕、実は物質の概念を書き換える最強スキルホルダーだった
黒崎隼人
ファンタジー
貴族の次男アッシュは、ゴミを素材に戻すだけのハズレスキル【アイテム分解】を授かり、家と国から追放される。しかし、そのスキルの本質は、物質や魔法、果ては世界の理すら書き換える神の力【概念再構築】だった!
辺境で出会った、心優しき元女騎士エルフや、好奇心旺盛な天才獣人少女。過去に傷を持つ彼女たちと共に、アッシュは忘れられた土地を理想の楽園へと創り変えていく。
一方、アッシュを追放した王国は謎の厄災に蝕まれ、滅亡の危機に瀕していた。彼を見捨てた幼馴染の聖女が助けを求めてきた時、アッシュが下す決断とは――。
追放から始まる、爽快な逆転建国ファンタジー、ここに開幕!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる