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調査2日目
作戦会議
しおりを挟む撮影機材に目立った異常はなく、特別な撮れ高もなかったことから、撤収の話が持ち上がったのはホテルに戻って二十時を過ぎた頃だった。
今後の方針を決めるため、昼食を一階の食堂で摂った後、拠点にしているセミスイートの部屋に日野さん以外の全員が集められていた。辛気臭い空気を嫌う日野さんは、近くのスーパーまで車を走らせ、おつまみとアルコール類を調達すると言って出掛けた。車のキーを指先でくるりと回しながら朗らかな様子で手を振り、部屋を後にしていた。
部屋の中央、テーブルを囲むように集まったメンバーの中で、兎の耳がついたふわふわのフード付きパーカーを着た美知佳さんが、深くため息をつきながらパソコンの画面を全員に見えるように向ける。
六分割された映像が映し出され、室内に設置された監視カメラが捉えた現在の家の様子が流れる。画面には微かに砂嵐が走り、全体的に暗い。家具や壁、扉の輪郭がうっすらと浮かび上がる程度だ。
「光量を結構上げてるから、それなりに見やすいと思うんだけど……設置してから今日に至るまで、主だった変化はなし、っと」
椅子の背もたれに寄りかかったまま、ぼそりとそう言うと、美知佳さんはソファへバフッと身を投げ出した。その横では、黒の上下のスウェット姿の雪乃さんが、タオルで濡れた髪を拭きながら、眉間にしわを寄せて唸っている。
「参ったなぁ……」
雄介先輩も同じく困惑した表情を浮かべ、肩をすくめる。
「ここまで何もないと、作り話って線が濃厚かなぁ」
顎に手を当て、考え込むように呟いたその言葉に、俺は思わず顔を上げる。それに気づいた先輩は、やれやれと肩を竦め、手近な椅子を引き寄せてドカッと腰を下ろした。椅子の背もたれを前にし、腕をぶらぶらと垂らしながら話を続ける。
「時々あるんだよなぁ、こういうの。ニセ情報っていうか、注目浴びたさの作り話」
「注目……ですか?」
「そーそ。こういう怪しいことしてるとね、『自分は幽霊が視えるんです』とか、『幽霊を成仏させる力があるんです』とか、そんな感じの人たちから、けっこうな確率で長文のDMが来るんだよ」
お叱りメールも、含めてね。
美知佳さんが、ソファの上でゆっくりと上半身を起こしながら、眼鏡のブリッジをくいっと押し上げる。
「うちは弱小底辺とはいえ、登録者数は一万人で、心霊チャンネル界隈ではそこそこの知名度があるんだよね。毎日のように心霊写真が送られてくるし、『どこどこの県の△という場所を調査してください』、『相談に乗ってください』っていう依頼の山とか、ほーんと吃驚するほど来るのよね」
そう言いながら、手元のスマホを滑らかに操作し、後方用で使っているチャンネルのSNSのDM画面を表示させる。未読のメッセージが、画面いっぱいにびっしりと並んでいた。
「多い時は一日で四十件くらい来ることもあるし、とても全部は見られないし、さばけないんだよね。この間だって、四か月前にDMくれた子にようやく返信返したばっかりだし」
「みかちゃん、律儀だねぇ」
感心したように目を瞬かせる雪乃さん。その言葉に、美知佳さんは唇を尖らせ、次の瞬間、雪乃さんの太ももの上に甘えるように身を預けた。
「全部はさすがに無理。でも、勧誘とか詐欺とかエロメッセージとか、そういうのをふるいにかけながら対応するのは本当に大変。でも、DM閉じちゃうと、ネタになりそうな情報は集められないし……しょうがなくって感じかな」
「そういうもんなんですねぇ」
ぼんやりと相槌を打つ俺を、美知佳さんはおや、と片眉を上げて見つめる。
ややあって何か思い出したように口を開いた。
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