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わがままなあたしは男に望む
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ちょっと話がずれたけど、学校に到着すると校門で果歩ちゃんと美羽ちゃんが出迎えていてくれた。事前にメールを送ってくれて、久し振りの登校でなおかつ身重の体では色々大変だろうからって、わざわざあたしの付き添いを申し出てくれたの。
このふたりは頼りになる。あたしは体が重くて歩くのもとてもゆっくりだったんだけど、両脇に果歩ちゃん、美羽ちゃんがついてくれて後ろには母親が寄り添ってくれた。教室に移動するとクラスメイト達がみんな優しく声を掛けてくれた。だけど、どうやってあたしに接していいのか分からなかったのではないだろうか。
「優江ちゃん元気?」
「大丈夫?」
としか尋ねてはこなかった。だけど、なにを話していいかも分からない中でも挨拶を交わしてくれるだけであたしはなんとも嬉しかった。
教室に大葉先生が入って来て、それぞれが自分の席に着き最後の朝礼が始まった。みんなにとっては中学校生活の最後の朝礼になるのだろうけど、あたしにとってはこれがおそらく最期の朝礼というものになるのだろう。お腹の子供の出産予定日まであと約2週間。あたしの寿命も同じような時期に尽きるのかもしれない。心の底から無事に子供を産んで一度くらいこの手に抱きたいと思っているが、それもどうなるのか正直分からない。不安でいっぱいになるところだったけど、今日という明るい日はあたしの心も穏やかにしてくれた。
朝礼の間、ずっと亮君の後姿を眺めていた。この人は例えばあたしが無事に子供を産んだ後に死んだとして、どんな想いをするのだろう。あたしが死んだことを嘆くのか、せめて子供だけでも無事に産まれてきたことを喜ぶのか。それとも意外と我儘で、どっちも生きていないとダメだと言うのか。
んん?そもそもそれって我儘なのか。当然のことじゃないのか?
人の命が長く続くことを望む気持ちをただの我儘だと思うあたしはなにかが欠落しているか崩壊しているのかもしれない。別にそれは嘆くことじゃない、あたしはそんな人間だと自覚しているから。あたしは今でも岳人の代わりに自分が死ねば良かったと思っている。
天に捧げる命がひとつ必要だったなら岳人ではなく、あたしの命で良かったのに。我儘に両方生きながらえたら、なんて思わない。あたしは死んでも良かったと本気で思っている。
だけど、亮君はあたしと違って優しいからあたしと子供とどちらが欠けても泣いてくれるんじゃないかな。ごめんね。そんな嫌な思いをさせて。だけど、どうか子供が無事に産まれたらあたしのことなんか忘れて一生懸命子育てをしてあげてね。あたしのことを思い出す暇があったら子供に愛情を注いであげて欲しいな。
そう言えば子供、子供いうのもなんか不自然だ。せめてあたしが生きているうちに名前だけでもつけてあげたいな。子供の名前をじっくり考えようとする間もなくあたしの頭にひとつの名前が浮かんだ。
ふうわ。
なんか柔らかくて優しそうで可愛らしい名前でしょ。深く考える必要も無く、あたしは生まれてくる子にはこの名前をつけてあげたいと思った。だけど、ちょっと待って。医者に診断されたわけではないけどあたしの直感では生まれてくる子は男の子のような気がしていたのだった。岳人の生まれ変わりとして。だとしたら「ふうわ」はまずい。いくらなんでも女の子の名前だろう。どうしよう。
でも、あたしの頭に「ふうわ」と言う名前が浮かんだからには生まれてくる子は女の子なのかもしれない。いや、きっとそうなのだ。一応、念の為今度医者に確認してもらおう。こんな風に思い込みが激しいあたしはやっぱり変人の類なのだろうね。亮君にも一応相談はするけど、生まれてくる子が女の子だったときは絶対「ふうわ」にしてもらおう。いや、絶対女の子だ。「ふうわ」という感じのする可愛らしい女の子だ。うちの両親とか亮君の両親が反対してもこれだけは絶対に譲りたくない。亮君の背中を見ながら心の中で「頼むよ。」って呟いた。
ところで、もしあたしが予定通りに死んだら亮君は他の女の人と結婚したりするのかなあ。正直嫌だ。
この人はあたしとふうわだけのものにしたい。だけど、あたしと亮君は別に結婚したわけでもないのだものね。ただ、ふたりの間に子供が生まれるというだけなんだものね。なんといってもあたし達はまだ結婚出来る年齢にもなっていないのだものね。そんなんだから、あたしが死んじゃえば、亮君がそういう年齢になったときに誰と結婚しようが勝手なのか。
死んだあたしに我儘を言わせてもらえるならば、出来れば独身でいて欲しいなあ。ああ。あたし言ってることが滅茶苦茶だ。やっぱりあたしだってかなりの我儘な生き物なのだろう。
このふたりは頼りになる。あたしは体が重くて歩くのもとてもゆっくりだったんだけど、両脇に果歩ちゃん、美羽ちゃんがついてくれて後ろには母親が寄り添ってくれた。教室に移動するとクラスメイト達がみんな優しく声を掛けてくれた。だけど、どうやってあたしに接していいのか分からなかったのではないだろうか。
「優江ちゃん元気?」
「大丈夫?」
としか尋ねてはこなかった。だけど、なにを話していいかも分からない中でも挨拶を交わしてくれるだけであたしはなんとも嬉しかった。
教室に大葉先生が入って来て、それぞれが自分の席に着き最後の朝礼が始まった。みんなにとっては中学校生活の最後の朝礼になるのだろうけど、あたしにとってはこれがおそらく最期の朝礼というものになるのだろう。お腹の子供の出産予定日まであと約2週間。あたしの寿命も同じような時期に尽きるのかもしれない。心の底から無事に子供を産んで一度くらいこの手に抱きたいと思っているが、それもどうなるのか正直分からない。不安でいっぱいになるところだったけど、今日という明るい日はあたしの心も穏やかにしてくれた。
朝礼の間、ずっと亮君の後姿を眺めていた。この人は例えばあたしが無事に子供を産んだ後に死んだとして、どんな想いをするのだろう。あたしが死んだことを嘆くのか、せめて子供だけでも無事に産まれてきたことを喜ぶのか。それとも意外と我儘で、どっちも生きていないとダメだと言うのか。
んん?そもそもそれって我儘なのか。当然のことじゃないのか?
人の命が長く続くことを望む気持ちをただの我儘だと思うあたしはなにかが欠落しているか崩壊しているのかもしれない。別にそれは嘆くことじゃない、あたしはそんな人間だと自覚しているから。あたしは今でも岳人の代わりに自分が死ねば良かったと思っている。
天に捧げる命がひとつ必要だったなら岳人ではなく、あたしの命で良かったのに。我儘に両方生きながらえたら、なんて思わない。あたしは死んでも良かったと本気で思っている。
だけど、亮君はあたしと違って優しいからあたしと子供とどちらが欠けても泣いてくれるんじゃないかな。ごめんね。そんな嫌な思いをさせて。だけど、どうか子供が無事に産まれたらあたしのことなんか忘れて一生懸命子育てをしてあげてね。あたしのことを思い出す暇があったら子供に愛情を注いであげて欲しいな。
そう言えば子供、子供いうのもなんか不自然だ。せめてあたしが生きているうちに名前だけでもつけてあげたいな。子供の名前をじっくり考えようとする間もなくあたしの頭にひとつの名前が浮かんだ。
ふうわ。
なんか柔らかくて優しそうで可愛らしい名前でしょ。深く考える必要も無く、あたしは生まれてくる子にはこの名前をつけてあげたいと思った。だけど、ちょっと待って。医者に診断されたわけではないけどあたしの直感では生まれてくる子は男の子のような気がしていたのだった。岳人の生まれ変わりとして。だとしたら「ふうわ」はまずい。いくらなんでも女の子の名前だろう。どうしよう。
でも、あたしの頭に「ふうわ」と言う名前が浮かんだからには生まれてくる子は女の子なのかもしれない。いや、きっとそうなのだ。一応、念の為今度医者に確認してもらおう。こんな風に思い込みが激しいあたしはやっぱり変人の類なのだろうね。亮君にも一応相談はするけど、生まれてくる子が女の子だったときは絶対「ふうわ」にしてもらおう。いや、絶対女の子だ。「ふうわ」という感じのする可愛らしい女の子だ。うちの両親とか亮君の両親が反対してもこれだけは絶対に譲りたくない。亮君の背中を見ながら心の中で「頼むよ。」って呟いた。
ところで、もしあたしが予定通りに死んだら亮君は他の女の人と結婚したりするのかなあ。正直嫌だ。
この人はあたしとふうわだけのものにしたい。だけど、あたしと亮君は別に結婚したわけでもないのだものね。ただ、ふたりの間に子供が生まれるというだけなんだものね。なんといってもあたし達はまだ結婚出来る年齢にもなっていないのだものね。そんなんだから、あたしが死んじゃえば、亮君がそういう年齢になったときに誰と結婚しようが勝手なのか。
死んだあたしに我儘を言わせてもらえるならば、出来れば独身でいて欲しいなあ。ああ。あたし言ってることが滅茶苦茶だ。やっぱりあたしだってかなりの我儘な生き物なのだろう。
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