君は少女をみたか!

一陽吉

文字の大きさ
3 / 51
一章 少女使い

第2話 潜入

しおりを挟む
 ユキちゃんが校門にある鉄製の扉を開け、そろって中へ入っていく。

 扉は高さが一メートルくらいで、横へスライドさせるタイプ。

 車輪がついているとはいえ重そう。

 必要な分だけ開けた扉を再び閉じて、校舎を目指すユキちゃん。

 すぐ後ろでユキちゃんについていく、ほむらちゃん。

「……」

 その様子をじっと見ていた。

 防犯カメラとかセキュリティ関係は、ほむらちゃんの方で操作できるから、それは分かる。

 だけど、ユキちゃん、ダイヤル式のじょうを一発で解いたのよね。

 ここの生徒じゃないことを言っていた割には、ごく普通にやっている。

 勝手知ってたる在校生みたいに。

 私の意識は、ほむらちゃんが持つ球体を中心に知覚している。

 そしてそれは別の場所で働いている聖名夜みなよちゃんにも同じようにできる。

 だから瞬間移動の感覚で、聖名夜ちゃんの持つ球体へ意識を移動して様子を知ることが可能。

 でも、それは二人の間だけ。

 ユキちゃんの持つ球体へは意識を移動できないし、他の球体もそう。

 もしかすると、私を知っている人が球体を持てばできるとか、そういう事かもしれない。

 それもあって、私の欠片ともいえる球体が、ユキちゃんの復讐にどう必要なのか見極めたい。

 ──考えているうちに体育館の前に到着。

 ガラス戸は閉ざされているし、これは鍵で開けるタイプ。

 割れば別だけど、普通、中へ入るなら鍵が必要なはず。

 ユキちゃんが鍵穴へ右手をかざそうとした瞬間、カチッと音がして開いた。

 誰かが能力を使って開けたんだ。

「相手は気づいているようね」

「……」

 顔を見るユキちゃんに対して無言でうなずくほむらちゃん。

 危険なことが起きるけどいいのね、という最終確認に、構わないと答えたわけね。

 中へ入り、ガラス戸が閉じるのと同時に鍵が勝手にかかった。

 気に留めないで進む私たち。

 当然、中は真っ暗。

 はっきり言って肉眼では何も見えない。

 私はチカラのこともあって、ある程度は分かる。

 床が木で、壁側にバスケットボールのバックボードがあって、奥にステージがある、典型的な体育館。

 ほむらちゃんも身体を流れる血の力で感覚的に認識していると思う。

 ただ、ユキちゃんはどうだろう。

 特別な能力でもないかぎり、何か道具を使わないと見えないはずだけど……。

「いきませんねえ、こんな夜更けに学校へくるなんて」

 体育館内に男性の声が響く。

 すると目の前、五メートルほど離れたところで紫色のオーラと一緒に、一人の大人が現れた。

 紺色のスーツ姿で銀縁のメガネをかけた、三十代前半に見える大人の男性ひと

 中肉中背で、身長は百七十センチくらいはありそう。

 場所が場所だけに、先生ってかんじがする。

 だけど、細く開いた目から紫色の鈍い光が出て、まともじゃないことを示している。

 この男性がユキちゃんの復讐相手なのかな。

「でもいいでしょう。せっかくいらしたんですから、気持ちよくして差し上げますよ」

 そう言って笑いながら、その男性は右手からピンクの小さな泡を出して見せた。

「この泡に包まれた少女は、極上の快楽を得られます。顔を赤くし、身体をくねらせ、声をもらしてみてはいかがですかな? ああ、ご心配なく。感覚だけで傷物になるわけではありません。旦那となる方をがっかりさせずにすみますよ」

「!」

「けっ……」

 怒りをあらわにするユキちゃん、ほむらちゃん。

 そして私。

 ムカつく。

 間違いなく女の敵。

 変態さんだ。

「そうやって、いったい何人の子の未来を奪ってきたと思っているの」

 怒りを込めて言うユキちゃん。

「まあ、私は吸精鬼ですからね。若い子の希望にあふれた精気をいただくのは当然でしょう。しかも命まで取らない。もっとも、そのあと無気力になって精彩さは失われますがね。だとしても普通に結婚して、女性の幸せは得られますよ」

 悪びれることなく語る変態さん。

 それも吸精鬼だって。

 この禍々しさは、たしかに納得だわ。

「みんなと一緒に青春を分かち合う日々も、更なる高みへの道も、あなたが閉ざしたのよ。絶対に許さない!」

 言いながら前に出るユキちゃん。

 すっと手を前に出して構える。

「ほほ、ファイトプレイですか。いいですね。嫌いではありません」

 泡を握りしめ、喜ぶ変態さん。

 キッと睨みつけるユキちゃんの身体から、小さな光とともに一人の女の子が飛び出した!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

処理中です...