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三章 個人探求者
第14話 親友
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──光?
ほむらちゃんが握る球体から一瞬、光が出た。
それも、気をつけなければ分からないほど小さなもの。
だけどそれは少しだけ玄を含んでいた。
「……」
真っ赤に腫れていたほむらちゃんの両手がみるみるうちに治って、もとどおりになった。
「相変わらず、何でもありだな」
立ち上がり、右手で球体を持ちながら、左手を握ったり開いたりして確認するほむらちゃん。
ごめん。
私が感情的になったせいで、痛い思いをさせて。
「さっきも言ったろ。気にすんな」
……。
「お前が元に戻ったら、聖名夜と一緒に飯を奢れ。それでいいからよ」
……。
うん……。
ありがとう、ほむらちゃん。
「さて、あいつらは逃げちまったが、持ってるやつは聖名夜が一番近いな」
球体の反応から一個のものと、二個のものと距離が十メートルくらい。
ここからだと一個のものと、三十メートルくらいあるから、たしかに聖名夜ちゃんの方が近いけど。
て、あれ?
ほむらちゃん、聖名夜ちゃんがいる前提で話している。
会話の中で名前は出てこなかったはずだったけど──。
そうか。
根拠もなく信じられるものが友達だもんね。
「あっちは任せる。俺は、やることがある」
目を鋭くして言うほむらちゃん。
分かったわ。
私の分まで思いっきりやっちゃって。
それじゃあ私は、聖名夜ちゃんのところへ行くね。
──私はもう一人の親友に向かって意識を移動させる。
「……」
無表情で歩いている聖名夜ちゃん。
そして足元にあるのは、セキュリティの残骸。
おおむね、ほむらちゃんのところにあったものと同じね。
聖名夜ちゃんは不快に思ってムスッとしてる。
ここは、雷羅ちゃんと戦った部屋から出た通路より横に広く、五メートルくらいある。
戦える空間があるから、聖名夜ちゃんもスムーズに動けたんじゃないかな。
この様子だと私がほむらちゃんのところへ行っている間に、魔薬を飲んで回復したみたい。
いつも持ち歩いている、キャンディーみたいな聖名夜ちゃん特製の物。
私もお世話になったことがある。
あ、そう言えば鉄摩さん、データとか言ってたわね。
戦いも含め、全部、カメラなんかで見ているんだわ。
魔薬を口にするくらいなら問題ないと思うけど、見られている、試されているというのは気持ちのいいものじゃない。
「……」
その通路の突き当りに聖名夜ちゃんが近づくと、自動開閉式のドアが開いた。
中へ入ると、そこは……、試験場?
広さはいままで戦ってきたところと変わりないかんじだけど、吹き抜けではなく、学校の教室とかに比べて天井が高いかなくらいに見える。
壁側に工作機械や作業台があるから、ここで部品なんかを作って、試しに動かしている場所なんだと思う。
そして、その奥にあの子がいた。
ニニちゃんから受け継いだ、あの子が。
「お待ちしてました。聖名夜さま」
「あなた……、ニニ、ちゃん?」
お辞儀をするあの子に、聖名夜ちゃんは、動作ではなく雰囲気に違和感を覚えて言った。
そうだよ聖名夜ちゃん。
あの子、見た目は同じでも別人なんだ。
「はい。このとおり持っています」
証明書がわりに球体を出して見せる、あの子。
だけど、それはニニちゃんである証明にはならない。
「まあいいわ。それは私の友達を助けるのに必要なもの。渡してもらうわ」
深く追求せず、毅然とした態度で言う聖名夜ちゃん。
するとあの子は、球体をワイシャツの胸ポケットに戻して、首を横に振った。
「それはできません。父様から、これを渡してはならないと指示されています」
事務的に話す、あの子。
「……」
「……」
譲らない視線がぶつかり合う。
となれば戦う展開だけど、そうなればニニちゃんのときと同じく、あの子が玄を使うことになるだろう。
鉄摩さんにしてみれば実験ということなんだろうけど。
この場に居ないのは、さっきみたいに暴走したときを考えて、巻き込まれないためだと思う。
瑠羅ちゃんもいないわね。
ここも廃棄を考えているのかな。
とてもきれいだし、機械もまだまだ使えそうな気がするんだけど。
「お待ちになって」
?
突然、声がしたかと思うと、天井付近から女の人が現れた。
空中で一回転して、ストッと優雅に着地。
あの子の横に並んだ。
歳は十八歳くらいかな。
身長も百七十センチはありそう。
明るい緑の瞳をして、髪は腰まで届く金髪のストレートロング。
きれいな白い肌をして、スレンダーな体型にぴったり沿うように黒の……、マーチング衣装? を着ている。
制帽を被って、両肩には小さな紐がいくつもついた肩章とか、紐飾だったかな右肩から胸元に編まれた紐があるから、軍服にも見える。
ただ、胸元やおへそが見えるデザインになっているし、ミニスカート、ロングブーツを履いているから、実戦には向かない格好なのは間違いないわね。
黒をベースに金具や紐が金色になっているから、黒に銀色だった狼羅ちゃんと対照的になってる。
「ニニ、父様からの伝言。あなたは球体を死守しなさい。私が聖名夜様と踊るから」
「え、でも……」
「いいから、早く行きなさい」
金髪の子は右手の人差し指を、頭から頭へみたいに振ると、光の粒があの子のおでこに飛んでいった。
鉄摩さんもやっていた情報伝達の方法。
「分かりました。お願いします」
それを受けて理解したあの子は一番近いドアに向かって駆け出し室内を出ていった。
まあ、察しはつくけどね。
「すいません、聖名夜様。予定を変更して、私、工堂伶羅がお相手いたします」
両手でスカートを軽くつまんで、上品に礼をする彼女、伶羅ちゃん。
あ。
レのつく子だ。
ほむらちゃんが握る球体から一瞬、光が出た。
それも、気をつけなければ分からないほど小さなもの。
だけどそれは少しだけ玄を含んでいた。
「……」
真っ赤に腫れていたほむらちゃんの両手がみるみるうちに治って、もとどおりになった。
「相変わらず、何でもありだな」
立ち上がり、右手で球体を持ちながら、左手を握ったり開いたりして確認するほむらちゃん。
ごめん。
私が感情的になったせいで、痛い思いをさせて。
「さっきも言ったろ。気にすんな」
……。
「お前が元に戻ったら、聖名夜と一緒に飯を奢れ。それでいいからよ」
……。
うん……。
ありがとう、ほむらちゃん。
「さて、あいつらは逃げちまったが、持ってるやつは聖名夜が一番近いな」
球体の反応から一個のものと、二個のものと距離が十メートルくらい。
ここからだと一個のものと、三十メートルくらいあるから、たしかに聖名夜ちゃんの方が近いけど。
て、あれ?
ほむらちゃん、聖名夜ちゃんがいる前提で話している。
会話の中で名前は出てこなかったはずだったけど──。
そうか。
根拠もなく信じられるものが友達だもんね。
「あっちは任せる。俺は、やることがある」
目を鋭くして言うほむらちゃん。
分かったわ。
私の分まで思いっきりやっちゃって。
それじゃあ私は、聖名夜ちゃんのところへ行くね。
──私はもう一人の親友に向かって意識を移動させる。
「……」
無表情で歩いている聖名夜ちゃん。
そして足元にあるのは、セキュリティの残骸。
おおむね、ほむらちゃんのところにあったものと同じね。
聖名夜ちゃんは不快に思ってムスッとしてる。
ここは、雷羅ちゃんと戦った部屋から出た通路より横に広く、五メートルくらいある。
戦える空間があるから、聖名夜ちゃんもスムーズに動けたんじゃないかな。
この様子だと私がほむらちゃんのところへ行っている間に、魔薬を飲んで回復したみたい。
いつも持ち歩いている、キャンディーみたいな聖名夜ちゃん特製の物。
私もお世話になったことがある。
あ、そう言えば鉄摩さん、データとか言ってたわね。
戦いも含め、全部、カメラなんかで見ているんだわ。
魔薬を口にするくらいなら問題ないと思うけど、見られている、試されているというのは気持ちのいいものじゃない。
「……」
その通路の突き当りに聖名夜ちゃんが近づくと、自動開閉式のドアが開いた。
中へ入ると、そこは……、試験場?
広さはいままで戦ってきたところと変わりないかんじだけど、吹き抜けではなく、学校の教室とかに比べて天井が高いかなくらいに見える。
壁側に工作機械や作業台があるから、ここで部品なんかを作って、試しに動かしている場所なんだと思う。
そして、その奥にあの子がいた。
ニニちゃんから受け継いだ、あの子が。
「お待ちしてました。聖名夜さま」
「あなた……、ニニ、ちゃん?」
お辞儀をするあの子に、聖名夜ちゃんは、動作ではなく雰囲気に違和感を覚えて言った。
そうだよ聖名夜ちゃん。
あの子、見た目は同じでも別人なんだ。
「はい。このとおり持っています」
証明書がわりに球体を出して見せる、あの子。
だけど、それはニニちゃんである証明にはならない。
「まあいいわ。それは私の友達を助けるのに必要なもの。渡してもらうわ」
深く追求せず、毅然とした態度で言う聖名夜ちゃん。
するとあの子は、球体をワイシャツの胸ポケットに戻して、首を横に振った。
「それはできません。父様から、これを渡してはならないと指示されています」
事務的に話す、あの子。
「……」
「……」
譲らない視線がぶつかり合う。
となれば戦う展開だけど、そうなればニニちゃんのときと同じく、あの子が玄を使うことになるだろう。
鉄摩さんにしてみれば実験ということなんだろうけど。
この場に居ないのは、さっきみたいに暴走したときを考えて、巻き込まれないためだと思う。
瑠羅ちゃんもいないわね。
ここも廃棄を考えているのかな。
とてもきれいだし、機械もまだまだ使えそうな気がするんだけど。
「お待ちになって」
?
突然、声がしたかと思うと、天井付近から女の人が現れた。
空中で一回転して、ストッと優雅に着地。
あの子の横に並んだ。
歳は十八歳くらいかな。
身長も百七十センチはありそう。
明るい緑の瞳をして、髪は腰まで届く金髪のストレートロング。
きれいな白い肌をして、スレンダーな体型にぴったり沿うように黒の……、マーチング衣装? を着ている。
制帽を被って、両肩には小さな紐がいくつもついた肩章とか、紐飾だったかな右肩から胸元に編まれた紐があるから、軍服にも見える。
ただ、胸元やおへそが見えるデザインになっているし、ミニスカート、ロングブーツを履いているから、実戦には向かない格好なのは間違いないわね。
黒をベースに金具や紐が金色になっているから、黒に銀色だった狼羅ちゃんと対照的になってる。
「ニニ、父様からの伝言。あなたは球体を死守しなさい。私が聖名夜様と踊るから」
「え、でも……」
「いいから、早く行きなさい」
金髪の子は右手の人差し指を、頭から頭へみたいに振ると、光の粒があの子のおでこに飛んでいった。
鉄摩さんもやっていた情報伝達の方法。
「分かりました。お願いします」
それを受けて理解したあの子は一番近いドアに向かって駆け出し室内を出ていった。
まあ、察しはつくけどね。
「すいません、聖名夜様。予定を変更して、私、工堂伶羅がお相手いたします」
両手でスカートを軽くつまんで、上品に礼をする彼女、伶羅ちゃん。
あ。
レのつく子だ。
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