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三章 個人探求者
第23話 女都羅
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「知らないわ……、こんなの……」
声を振るわせ、驚く瑠羅ちゃん。
鉄摩さんに次ぐ権限を与えられていると言ってた、瑠羅ちゃんでさえ知らなかった女神将。
初めて見るだけならまだしも、その胸元にある水晶の中に、羅のつく四人がいるから余計に驚いているんだ。
見えるのは肩から上で、顔は眠っている感じなんだけど、水晶の配置がサイコロの五になっていて、その真ん中には誰の顔もなかった。
「父様っ、これはいったいなんですかっ」
大声をだして瑠羅ちゃんは鉄摩さんに訊いた。
「言ったろう、とっておきさ」
「とっておき……」
「私は何も儲けたくて女を造っていたわけではない。理想の女を創造するためなのだよ」
あらためてニヤッと笑う鉄摩さん。
「学生の頃、密教を題材にした漫画が流行っていてね。私も夢中になった。そして、いつの日かこれらを元にした女戦士を造ろうと思ったのさ。四十年近くかかって一番理想に近づけたもの。それがこれだ」
「……」
……。
一同、絶句。
言葉が出てこない。
自慢気に言うけど、それ、子どもじゃない?
ビジネスになるからやっていると言った方が、まだ大人なかんじ。
そう言えば、少年と大人の違いはかけられる玩具の金額である、みたいなのを聞いたことがあるけど、それに当てはまってると思う。
これのために、ニニちゃんや瑠羅ちゃんたちは造られたってこと?
「ふむ。理解してもらおうとは思わんよ。それにこれはまだ、現段階で理想に近いというだけのもの。改良の余地はある。五人の娘を使わなければ動かんしね」
「五人……」
「そうとも。治療中の雷羅、利羅、狼羅はそのまま加工し、伶羅は命じて球具にしたよ。だからあとは瑠羅、お前だけだ」
「は……」
すると、瑠羅ちゃんの身体が光に包まれ内側へ凝縮されていった。
「と、父様……、父様!」
叫び声をあげながら、一筋の光になって女神将さんに飛んだ瑠羅ちゃん。
そして、その胸元に残った水晶の中に瑠羅ちゃんの顔が現れた。
気のせいかな。
瞳を閉じたその顔は泣いているように見える。
「これで全員、揃った。起動させるとしよう」
鉄摩さんの言葉に反応するように、女神将さんの身体からうっすらだけど、紫、赤、青、金、銀の色をしたオーラがでた。
さらにショートポニーの先から、光の髪が五方向に伸びて、毛先が腰のあたりで揺れ、二段階クリアみたいになった。
「いいぞ。目覚めろ、女都羅!」
カッ!
「く……」
「う……」
目を見開いた瞬間に閃光が発せられて、ほむらちゃんと聖名夜ちゃんは思わず顔を背けた。
「……」
無言のまま、緑色の瞳であたりを見回している。
状況確認みたい。
見下ろす感じだったし、もの凄く偉そうな雰囲気を出している。
かわいい大人とも、大人びた少女ともとれる顔だから、年はと聞かれると難しいけど「さん」をつけていいたくなるわね。
それと、さっきの話から考えて瑠羅ちゃんたちの名前に羅ってつくのは、宮毘羅とか伐折羅とかからで、鉄摩さんの憧れと理想を表しているからなんだ。
「では女都羅、この二人と遊んであげなさい」
鉄摩さんの指示を受け、ターゲットたるほむらちゃんと聖名夜ちゃんを見る女都羅さん。
「そして、お疲れになったらそれぞれもっている球体をもらうといい」
「分かりました、父様」
少し太い声で女都羅さんは答えると、台座部分から下りて前に出た。
収容していたメタリックな円筒形のものは静かに沈んで元の床に戻り、がらんとした空間が広がった。
「あらためて言おう。私の名は女都羅。お前たちの名を聞かせてほしい」
武人のように堂々と話す女都羅さん。
ほむらちゃんは横目で見て、聖名夜ちゃんが頷くのを確認した。
「俺は、ほむら」
「私は、聖名夜」
警戒しながら答える親友たち。
「ほむらに、聖名夜か、良い名だ」
女都羅さんは感心したように言った。
「たとえ一瞬で決着がついたとしても、二人の名は心に刻んでおくとしよう」
!
すごい自信ね。
確かに女都羅さん、強そうだけど、ほむらちゃんや聖名夜ちゃんだって強い。
それに、鉄摩さん、お疲れになったら球体をもらうって、欲しいのに変わりないんだ。
大人の発言をしていたけど。
お疲れっていったって、要は倒すってことなんだから、女都羅さんをなんとかしないといけない。
厳しいと思うけど、終わらせて帰ろう!
「準備は良いか」
とくに構えるでもなく、戦いに入ることを確かめる女都羅さん。
「ああ……」
「いいわ……」
二人は目を鋭くして構えた。
「では、参る!」
そう言うと、女都羅さんは左足で床をダンと踏みつけ衝撃波を放った。
「!」
指なり一直線に床を走る五本の衝撃波に対し、二人は左右に別れて跳んだ。
「な?」
着地前の、まだ空中にいるほむらちゃんに女都羅さんは接近。
右拳を振り下ろした。
「ぐっ、は……」
とっさに腕を十字に組みながら炎を出して防ぐほむらちゃんだけど、床に叩きつけられ、バウンドして、うつ伏せに倒れた。
避けられた衝撃波は壁に激突。
巨獣が爪で引っかいたみたいに壁をえぐり、場内を大きく揺さぶって威力の強さを示した。
それにかまわず、女都羅さんは聖名夜ちゃんに向き直ると、体勢を低くして左手を腰に、右手をその左手に添えるように構えた。
「!」
聖名夜ちゃんは動いて躱せないと判断し、ステッキを両手で縦に持って防御結界を張った。
───────────────────────────。
「……」
ドサッ。
崩れ落ちるように倒れる聖名夜ちゃん。
その後ろにいる女都羅さん。
構えから察するに、手刀で居合斬りをしたんだ。
それも三ヶ所の斬撃。
これは利羅ちゃんが使っていた技だ。
さっきの衝撃波だって、足でやっていたけど、狼羅ちゃんが放ってたものと同じだった。
つまり、女都羅さんは五人の技が使えるんだ。
声を振るわせ、驚く瑠羅ちゃん。
鉄摩さんに次ぐ権限を与えられていると言ってた、瑠羅ちゃんでさえ知らなかった女神将。
初めて見るだけならまだしも、その胸元にある水晶の中に、羅のつく四人がいるから余計に驚いているんだ。
見えるのは肩から上で、顔は眠っている感じなんだけど、水晶の配置がサイコロの五になっていて、その真ん中には誰の顔もなかった。
「父様っ、これはいったいなんですかっ」
大声をだして瑠羅ちゃんは鉄摩さんに訊いた。
「言ったろう、とっておきさ」
「とっておき……」
「私は何も儲けたくて女を造っていたわけではない。理想の女を創造するためなのだよ」
あらためてニヤッと笑う鉄摩さん。
「学生の頃、密教を題材にした漫画が流行っていてね。私も夢中になった。そして、いつの日かこれらを元にした女戦士を造ろうと思ったのさ。四十年近くかかって一番理想に近づけたもの。それがこれだ」
「……」
……。
一同、絶句。
言葉が出てこない。
自慢気に言うけど、それ、子どもじゃない?
ビジネスになるからやっていると言った方が、まだ大人なかんじ。
そう言えば、少年と大人の違いはかけられる玩具の金額である、みたいなのを聞いたことがあるけど、それに当てはまってると思う。
これのために、ニニちゃんや瑠羅ちゃんたちは造られたってこと?
「ふむ。理解してもらおうとは思わんよ。それにこれはまだ、現段階で理想に近いというだけのもの。改良の余地はある。五人の娘を使わなければ動かんしね」
「五人……」
「そうとも。治療中の雷羅、利羅、狼羅はそのまま加工し、伶羅は命じて球具にしたよ。だからあとは瑠羅、お前だけだ」
「は……」
すると、瑠羅ちゃんの身体が光に包まれ内側へ凝縮されていった。
「と、父様……、父様!」
叫び声をあげながら、一筋の光になって女神将さんに飛んだ瑠羅ちゃん。
そして、その胸元に残った水晶の中に瑠羅ちゃんの顔が現れた。
気のせいかな。
瞳を閉じたその顔は泣いているように見える。
「これで全員、揃った。起動させるとしよう」
鉄摩さんの言葉に反応するように、女神将さんの身体からうっすらだけど、紫、赤、青、金、銀の色をしたオーラがでた。
さらにショートポニーの先から、光の髪が五方向に伸びて、毛先が腰のあたりで揺れ、二段階クリアみたいになった。
「いいぞ。目覚めろ、女都羅!」
カッ!
「く……」
「う……」
目を見開いた瞬間に閃光が発せられて、ほむらちゃんと聖名夜ちゃんは思わず顔を背けた。
「……」
無言のまま、緑色の瞳であたりを見回している。
状況確認みたい。
見下ろす感じだったし、もの凄く偉そうな雰囲気を出している。
かわいい大人とも、大人びた少女ともとれる顔だから、年はと聞かれると難しいけど「さん」をつけていいたくなるわね。
それと、さっきの話から考えて瑠羅ちゃんたちの名前に羅ってつくのは、宮毘羅とか伐折羅とかからで、鉄摩さんの憧れと理想を表しているからなんだ。
「では女都羅、この二人と遊んであげなさい」
鉄摩さんの指示を受け、ターゲットたるほむらちゃんと聖名夜ちゃんを見る女都羅さん。
「そして、お疲れになったらそれぞれもっている球体をもらうといい」
「分かりました、父様」
少し太い声で女都羅さんは答えると、台座部分から下りて前に出た。
収容していたメタリックな円筒形のものは静かに沈んで元の床に戻り、がらんとした空間が広がった。
「あらためて言おう。私の名は女都羅。お前たちの名を聞かせてほしい」
武人のように堂々と話す女都羅さん。
ほむらちゃんは横目で見て、聖名夜ちゃんが頷くのを確認した。
「俺は、ほむら」
「私は、聖名夜」
警戒しながら答える親友たち。
「ほむらに、聖名夜か、良い名だ」
女都羅さんは感心したように言った。
「たとえ一瞬で決着がついたとしても、二人の名は心に刻んでおくとしよう」
!
すごい自信ね。
確かに女都羅さん、強そうだけど、ほむらちゃんや聖名夜ちゃんだって強い。
それに、鉄摩さん、お疲れになったら球体をもらうって、欲しいのに変わりないんだ。
大人の発言をしていたけど。
お疲れっていったって、要は倒すってことなんだから、女都羅さんをなんとかしないといけない。
厳しいと思うけど、終わらせて帰ろう!
「準備は良いか」
とくに構えるでもなく、戦いに入ることを確かめる女都羅さん。
「ああ……」
「いいわ……」
二人は目を鋭くして構えた。
「では、参る!」
そう言うと、女都羅さんは左足で床をダンと踏みつけ衝撃波を放った。
「!」
指なり一直線に床を走る五本の衝撃波に対し、二人は左右に別れて跳んだ。
「な?」
着地前の、まだ空中にいるほむらちゃんに女都羅さんは接近。
右拳を振り下ろした。
「ぐっ、は……」
とっさに腕を十字に組みながら炎を出して防ぐほむらちゃんだけど、床に叩きつけられ、バウンドして、うつ伏せに倒れた。
避けられた衝撃波は壁に激突。
巨獣が爪で引っかいたみたいに壁をえぐり、場内を大きく揺さぶって威力の強さを示した。
それにかまわず、女都羅さんは聖名夜ちゃんに向き直ると、体勢を低くして左手を腰に、右手をその左手に添えるように構えた。
「!」
聖名夜ちゃんは動いて躱せないと判断し、ステッキを両手で縦に持って防御結界を張った。
───────────────────────────。
「……」
ドサッ。
崩れ落ちるように倒れる聖名夜ちゃん。
その後ろにいる女都羅さん。
構えから察するに、手刀で居合斬りをしたんだ。
それも三ヶ所の斬撃。
これは利羅ちゃんが使っていた技だ。
さっきの衝撃波だって、足でやっていたけど、狼羅ちゃんが放ってたものと同じだった。
つまり、女都羅さんは五人の技が使えるんだ。
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