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Episode 16
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悠をベッドに寝かせ、ピアノ周りに残る痕跡を綺麗に消すと、徳永は脱力しながらカウチに身を投げ天を仰いだ。
誰にも汚されないようにと、悠を手元に置き続けてきた。御崎で意図的に藤堂貴文の噂を流し、悠が形だけの妻になれるよう手をまわして、御崎の枷も外したのも徳永だ。
それなのに──。
「運命の番?」
徳永にとって、藤堂恭一の存在は全くの計算外だった。
悠の心に初恋の相手がずっといることは、なんとなく感じていたものの、それはあくまで『思い出の男』なのだろうと思っていたのだ。
十年振りに現れたというのに、恭一はたった一度のキスだけで、あんなにも悠の心を掻き乱してしまった。
(十年だぞ? 彼が一番辛かったときに放っておいて、今更現れるなんて……!)
引き離さなければ──徳永は自身にそう言い聞かせ、両手をきつく握りしめる。
(約束のために……なんとしても……)
ふいに玄関のチャイムが鳴った。
悠が休んでいる時間はいつも音量を下げているのに、それを忘れていたことに気づき、徳永はとっさに寝室の気配を探る。
しんと静まり返ったままの様子にホッと胸を撫で下ろした彼がモニターを覗くと、そこには小野田の姿があった。
「まったく、タイミングの悪い」
小さな恨み節を口の中で転がしてから、徳永はインターホンで「上がれ」と不愛想に返し、ロックを解除する。
そのまま玄関に向かいドアを開けると、ほどなくして目の前のエレベーターが到着を告げた。
「突然来るなと、何度も言ったはずだ」
「こっちも何度もスマホに連絡したぞ。返さなかったのはお前だ」
機嫌の悪さを隠さず口にした徳永に向かって、小野田も棘のある口調で遠慮なく言葉を返す。
普段の完璧な執事の姿からは想像できない態度だが、小野田は少しも気にせず徳永が開けている玄関ドアに手をかけた。
「悠くんは? 入っても大丈夫か?」
「……悠様は……今は休んでおられる。静かに頼む」
ほんの一瞬だけ迷ったあと、徳永は小野田を中へ通す。
(情事にふけってスマホの確認まで怠るとは……今日はとことんダメだな……)
徳永は廊下を歩きながらひっそりとため息をもらしていた。
一応形だけカウチに座るよう勧めたが、小野田は「すぐに帰る」とキッチンカウンターに寄りかかる。
「それで、何の用だ?」
「ここのところ、あっちに顔を出していないんだろう? 書類の更新もあるらしくて連絡を取りたいと、俺のところにも電話が来たぞ」
「そうか。悠様のヒートもあって、出られなかったんだ」
徳永と小野田の付き合いは長い。大学の頃から十五年以上の仲だ。
そんな小野田は、徳永が僅かに視線を下げたことを見逃さなかった。
そして小野田の中で、嫌な予感がむくむくと膨れ上がっていく。
「拓篤。お前まさか、また抑制剤を使わなかったんじゃないだろうな!?」
「……大きな声を出さないでくれ」
「……っ」
眉間を歪め鋭く徳永をねめつけた小野田が、微かな部屋の異変に気づき目の前の彼に詰め寄った。
「拓篤、悠くんのヒートはとっくに終わっているはずだろう? なんだよ、このフェロモンは……!」
「…………」
「拓篤!」
「だから、大声を出さないでくれ。少し……彼を慰めただけだ」
「っ、ふざけるな! 普通の行為でアルファの俺が感じるこんなフェロモンが出るはず……、っ!?」
しまった──徳永がそう思った時には既に遅かった。
小野田はカウンターに載せたままのコーヒーカップに気づき中身を確認すると、低く威圧する声で問いかける。
「誰に処方してもらった?」
「…………」
無言を貫く徳永の態度が、小野田の怒りに更なる火をつけた。
「お前、なんてことをしたんだ! 悠くんはコーヒーに発情誘発剤が入っているなんて知らなかったんだろう!? オメガアラームはどうしたんだ!」
小野田に胸ぐらを掴まれて詰め寄られ、徳永がズボンのポケットから赤く点滅するそれを取り出す。
「お、まえ……っ、これは立派な犯罪だぞ! こんなの強姦と同じだろう!?」
「……ああ、そうだな。私はずっと悠様を騙して犯し続けてる。でも、お前も共犯だろう?」
しゃあしゃあとそう言ってのけた徳永は、興奮する小野田を半ば無理矢理エントランスホールへと連れ出した。
これ以上大声を出されたら流石に悠が起きてしまう。三十二階は悠のペントハウスだけで、他の誰かが来ることもない。
頭に血が上っていた小野田も、場所を変えたことで少し冷静になれたようだった。
「なぁ、拓篤。俺は御崎の爺さんに利用されて、なすり付けられた医療ミスの冤罪から助けてもらったこと、本当に感謝してるんだ」
「…………」
「お前とあいつのことも知ってたし、ここまでズルズルとお前に話を合わせてきちまった」
「…………」
真剣に語りかけるほどに表情を曇らせ俯いていく徳永の様子に、小野田は頭をガシガシと掻きながら大きく嘆息する。
「はぁ……。でもな、俺もまだ医者の端くれだ。このまま悠くんが壊れていくのを、黙って見てるわけにはいかない。今までのことで医師免許を失うことになったとしても、俺は悠くんに話すぞ」
「……えっ!?」
友人の言葉に、徳永は目を見開きハッと顔をあげた。
「ま、待ってくれ、小野田! 悠様にはちゃんと薬を飲ませる。もうあんな無茶はさせない。だからっ!」
悠が全て知ってしまったあとを想像し、徳永は恐怖で震え出す。
そんな彼の両肩に手を乗せ、小野田はしっかりと目をみて宥め言い聞かせた。
「落ち着け、拓篤」
「小野田、私は側にいなきゃいけないんだ……悠様は、私の側にいないと……。約束……約束したんだ。だから!」
「拓篤! あいつが望んでたのは、そういうことじゃないだろう!? 悠くんが好きな人を見つけて、そいつと一緒に幸せになること……それを望んでたんだろう?」
「違うっ! 悠様の家族は、彼と私だけだ……!」
いつの間にか、徳永の頬に伝う涙……。
彼の視界はあやふやになり、ただ一つの面影を求めだす。
「……拓篤。こんなことをしても、もう戻れないんだ……。航平は、戻らないんだよ……」
「航平……航平……?」
「っ、しっかりしろって」
「……私は、彼との約束を、今度こそ……守らないと……」
「……拓篤……」
(守るんだ。私が愛した人の大切な……弟を……)
「……悠……」
誰にも汚されないようにと、悠を手元に置き続けてきた。御崎で意図的に藤堂貴文の噂を流し、悠が形だけの妻になれるよう手をまわして、御崎の枷も外したのも徳永だ。
それなのに──。
「運命の番?」
徳永にとって、藤堂恭一の存在は全くの計算外だった。
悠の心に初恋の相手がずっといることは、なんとなく感じていたものの、それはあくまで『思い出の男』なのだろうと思っていたのだ。
十年振りに現れたというのに、恭一はたった一度のキスだけで、あんなにも悠の心を掻き乱してしまった。
(十年だぞ? 彼が一番辛かったときに放っておいて、今更現れるなんて……!)
引き離さなければ──徳永は自身にそう言い聞かせ、両手をきつく握りしめる。
(約束のために……なんとしても……)
ふいに玄関のチャイムが鳴った。
悠が休んでいる時間はいつも音量を下げているのに、それを忘れていたことに気づき、徳永はとっさに寝室の気配を探る。
しんと静まり返ったままの様子にホッと胸を撫で下ろした彼がモニターを覗くと、そこには小野田の姿があった。
「まったく、タイミングの悪い」
小さな恨み節を口の中で転がしてから、徳永はインターホンで「上がれ」と不愛想に返し、ロックを解除する。
そのまま玄関に向かいドアを開けると、ほどなくして目の前のエレベーターが到着を告げた。
「突然来るなと、何度も言ったはずだ」
「こっちも何度もスマホに連絡したぞ。返さなかったのはお前だ」
機嫌の悪さを隠さず口にした徳永に向かって、小野田も棘のある口調で遠慮なく言葉を返す。
普段の完璧な執事の姿からは想像できない態度だが、小野田は少しも気にせず徳永が開けている玄関ドアに手をかけた。
「悠くんは? 入っても大丈夫か?」
「……悠様は……今は休んでおられる。静かに頼む」
ほんの一瞬だけ迷ったあと、徳永は小野田を中へ通す。
(情事にふけってスマホの確認まで怠るとは……今日はとことんダメだな……)
徳永は廊下を歩きながらひっそりとため息をもらしていた。
一応形だけカウチに座るよう勧めたが、小野田は「すぐに帰る」とキッチンカウンターに寄りかかる。
「それで、何の用だ?」
「ここのところ、あっちに顔を出していないんだろう? 書類の更新もあるらしくて連絡を取りたいと、俺のところにも電話が来たぞ」
「そうか。悠様のヒートもあって、出られなかったんだ」
徳永と小野田の付き合いは長い。大学の頃から十五年以上の仲だ。
そんな小野田は、徳永が僅かに視線を下げたことを見逃さなかった。
そして小野田の中で、嫌な予感がむくむくと膨れ上がっていく。
「拓篤。お前まさか、また抑制剤を使わなかったんじゃないだろうな!?」
「……大きな声を出さないでくれ」
「……っ」
眉間を歪め鋭く徳永をねめつけた小野田が、微かな部屋の異変に気づき目の前の彼に詰め寄った。
「拓篤、悠くんのヒートはとっくに終わっているはずだろう? なんだよ、このフェロモンは……!」
「…………」
「拓篤!」
「だから、大声を出さないでくれ。少し……彼を慰めただけだ」
「っ、ふざけるな! 普通の行為でアルファの俺が感じるこんなフェロモンが出るはず……、っ!?」
しまった──徳永がそう思った時には既に遅かった。
小野田はカウンターに載せたままのコーヒーカップに気づき中身を確認すると、低く威圧する声で問いかける。
「誰に処方してもらった?」
「…………」
無言を貫く徳永の態度が、小野田の怒りに更なる火をつけた。
「お前、なんてことをしたんだ! 悠くんはコーヒーに発情誘発剤が入っているなんて知らなかったんだろう!? オメガアラームはどうしたんだ!」
小野田に胸ぐらを掴まれて詰め寄られ、徳永がズボンのポケットから赤く点滅するそれを取り出す。
「お、まえ……っ、これは立派な犯罪だぞ! こんなの強姦と同じだろう!?」
「……ああ、そうだな。私はずっと悠様を騙して犯し続けてる。でも、お前も共犯だろう?」
しゃあしゃあとそう言ってのけた徳永は、興奮する小野田を半ば無理矢理エントランスホールへと連れ出した。
これ以上大声を出されたら流石に悠が起きてしまう。三十二階は悠のペントハウスだけで、他の誰かが来ることもない。
頭に血が上っていた小野田も、場所を変えたことで少し冷静になれたようだった。
「なぁ、拓篤。俺は御崎の爺さんに利用されて、なすり付けられた医療ミスの冤罪から助けてもらったこと、本当に感謝してるんだ」
「…………」
「お前とあいつのことも知ってたし、ここまでズルズルとお前に話を合わせてきちまった」
「…………」
真剣に語りかけるほどに表情を曇らせ俯いていく徳永の様子に、小野田は頭をガシガシと掻きながら大きく嘆息する。
「はぁ……。でもな、俺もまだ医者の端くれだ。このまま悠くんが壊れていくのを、黙って見てるわけにはいかない。今までのことで医師免許を失うことになったとしても、俺は悠くんに話すぞ」
「……えっ!?」
友人の言葉に、徳永は目を見開きハッと顔をあげた。
「ま、待ってくれ、小野田! 悠様にはちゃんと薬を飲ませる。もうあんな無茶はさせない。だからっ!」
悠が全て知ってしまったあとを想像し、徳永は恐怖で震え出す。
そんな彼の両肩に手を乗せ、小野田はしっかりと目をみて宥め言い聞かせた。
「落ち着け、拓篤」
「小野田、私は側にいなきゃいけないんだ……悠様は、私の側にいないと……。約束……約束したんだ。だから!」
「拓篤! あいつが望んでたのは、そういうことじゃないだろう!? 悠くんが好きな人を見つけて、そいつと一緒に幸せになること……それを望んでたんだろう?」
「違うっ! 悠様の家族は、彼と私だけだ……!」
いつの間にか、徳永の頬に伝う涙……。
彼の視界はあやふやになり、ただ一つの面影を求めだす。
「……拓篤。こんなことをしても、もう戻れないんだ……。航平は、戻らないんだよ……」
「航平……航平……?」
「っ、しっかりしろって」
「……私は、彼との約束を、今度こそ……守らないと……」
「……拓篤……」
(守るんだ。私が愛した人の大切な……弟を……)
「……悠……」
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