詩集 夜空

せつない季節

せつない季節になったね。
君と僕が出会ったのもこの季節だった。

北風は、ぴゅうぴゅう吹き付けるし、
太陽は真昼、樹の下に影を作らせ、
子供たちは、寒い中はしゃいで、

僕は、夜が来るのを待った。



君は夜が大好きで、
黒猫みたいに、眼(まなこ)を光らせ、
優しく、キスでもするかのように抱きしめてくれた。


そうして夜が過ぎて、
僕はこの街を去る。

余韻は、まだ残っている。
君の匂いや、君の謂った言葉が·······。

普段はめったに、煙草を吸わない僕だけれど、
ふとふいに吸いたくなり、店に入る。

この日の煙草を僕は、生涯忘れないだろう。

女物の甘い煙草は、生涯のうちでも一等甘美で、僕を酔わせ、

僕の熱い血を鎮め、彼女の言葉をずっと、忘れさせないだろう·······。