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閑話(二十六・五話)交錯する思惑
しおりを挟む※拷問描写あり。
苦手な方はご注意ください。
─────────────────────
「松川、これからどうする?」
そう松川に尋ねるのは富川。
現在富川の部屋には五人いる。富川、松川、瀧澤、鈴木である。
「まぁ、これで煩い豚は処分出来ましたし、一件落着でしょう。ただあの豚に洗脳されたやつはまだいるはずです。」
「碓氷のようにか……」
富川は舌打ちをし、齋藤に怒りを顕にする。
「鈴木、碓氷は?」
松川は鈴木にそう尋ねる。鈴木は淡々と話し始めた。
「はい。碓氷は完全に齋藤に洗脳されており、齋藤に関する情報を一切吐かなかったので拷問しましたが、有効な情報はありませんでした。今も痛みを与え続けているのですが、口を割りません。」
そう言って彼がポケットから出したのは丸いボールである。それを壁に翳すと壁に赤い部屋が投影され、そこに椅子に手足を縛り付けられた碓氷が座っていた。
「通話」
鈴木がボールに向かってそう言うと、そのボールからは碓氷の荒い呼吸が聞こえる。
彼女は齋藤が兵士に捕らわれた直後、鈴木のスキルによって別空間に連れ去られた。鈴木のスキルは『絶対領域』。効果は「この世界とは関係の無い全く別の自分だけの空間を持つことが出来る」というものである。この空間に自由に行き来することが出来、自分が出入りを認めた人も自由に行き来できる。
現在自由に行き来できるのは自分と松川だけである。
映し出された碓氷の体は満身創痍で、全裸にされ、爪を剥がれ、画面の端には何度も碓氷の体に打ち付けられたであろう木の枝が真っ赤に染っている。さらに坊主にされ、針で体を刺され、松川が薬品庫から持ってきた乱薬を飲まされ、見ているだけで狂いそうな光景だ。それを平然と見られている四人──いや、松川に至ってはこれをにやけながら見ている時点で異常者だと言えよう。
「はぁ、なんであんな豚をそんなに守る?あいつに洗脳され、悔しくはないのか。」
そう言うのは富川。彼も顔では見せないが、心には禍々しい笑みが隠されている。
「悔しくないから、こんな状況でも家畜に従い続けるんでしょ? 全く、私は失望したわよ。こんなんだったら最初から墜としけば良かった。」
瀧澤は冷酷にそう言う。
彼女の心の中ではもう碓氷などという"人"はいない。目の前に見えているのは"豚"──よりも"玩具"で、彼女の脳では『遊んでいる』と認識されている。だからこそ何も思わないし『玩具は遊ぶもの』なのだ。
「あんなバカに洗脳され、お前も絶望的なんだから言った方が楽だよぉ。」
そう言う松川は目も笑い、頬も緩んでいる。彼はこういうものが大好きだ。
生き物ならなんでもいい。悲鳴を上げ、血まみれになる生き物に興奮を感じてしまう。人間なら尚更、この状態の碓氷を見てもなおいじめ抜き、死ぬ手前でずっと生かして、さらに犯したいと思っている異常者。──それが彼。そんな彼の奴隷になる者の未来は絶望、それに尽きる。
「皆様、どうしましょうか。豚の裁判まで3日。まだ時間はありますが、このまま壊れてしまったら逆に聞き出すのは難しくなりますが。」
鈴木はこの五人の中では一番身分が低い。しかし松川と同様の異常者の彼は碓氷のこの姿に初めて欲情している。拷問を続行しないと他四人に言われれば、すぐ様この部屋を出て絶対領域に行き、彼女を犯そうとしていた。
しかし鈴木の考えは真っ向から否定される。その意味は──
「「「壊してしまおう!!!」」」
それが彼らの答え。
そしてこれが彼らの滅亡への第一歩。
─────────────────────
「ルエル。」
「ああ。」
冷たい牢屋の中、二人は泣き声を笑い声に変える。
「ルエル、もういいかな。」
誠の復讐の怨念が詰まった声。
「あぁ、もう演技はおしまいだ。」
ルエルの復讐心に溢れた声。
その声は誰にも聞かれることは無い。誰にもわかるはずがない。──だってこれは全て『ルエルと誠の策略』なのだから。
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