家畜少年の復讐譚〜虐められていた俺はアクマ達を殺した〜

竹華 彗美

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四十話 ふたりだけの約束

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──────

 エキソンが映す映像の中では松川が笑い転げている様子と無表情の鈴木が立っている。


『貴様ァァッッッ!』


 テスタ裁判長は松川に怒号を浴びせるがそんなモノが松川に通じるわけもない──むしろ逆効果だ。


『………ハハハッ! だって、面白すぎだろ? あいつ『したがわない!』とか言っておいて、死んじゃうんだぜ? そっちの方が俺の予定通りなのにさっ! ハハハハハ!』


 



 ここでエキソンが映像を消す。
 この先はただただ惨いテスタ裁判長の拷問シーンが続く。これを国王に見せることはできないと三人で決めた。

 ここから先は裁判でもしも松川が罪を認めなかった時、やむを得ず流すことにする。



 

 王の手は固く握られ、震えていた。それは恐怖ではなく『憎悪』『怒り』の類である。
 

「……これがっ、人の所業だと?」


 声をも震わせて問う。それにエキソンは国王を見て肯定する。


「陛下。これがマツカワの──いえ、私たちが召喚したもの達の真の姿です。
 そしてその姿を最もよく知り、体験しているのが今回マツカワによって罪を擦り付けたサイトウ マコトであります。」
 私は彼を勇者様方で一番に"信頼"できる人物だと存じます。どうか彼の話を聞いては頂けませんでしょうか。」


 エキソンにならい俺も頭を下げる。

 それに国王はどう思ったのか──しかし発言の許可が降りたことは『信頼』を寄せて貰えたのだろうか。



 




 そのあと俺は全てを国王に打ち明けた。『全て』とはその名の通り、今までされてきた"家畜"としての仕打ち。それからこの世界に来てからの『復讐』のことも、そして何よりも俺の『スキル』の力も……『信頼』されるように何も包み隠さずに話した。

 俺の話が終わる頃には既に日付が変わろうとしていた。


 それを踏まえた上での作戦会議。


 王は実に寛容だった。
 俺の話を聞いたあと『復讐』の目的も話したのに、マツカワを見てしまったからか王まで『復讐』に加担するようになってしまった。

 これはこれでどうかと思うのだが、加担とはいえ『正当な理由』があるからだといい、『平等』とは言っていた。


 なにはともあれ結論は固まった。





────────

「すまんな。裁判長──いや、マツカワ スバル。儂は貴様を許さない!!!」


 その王の発言にその場にいる全員が圧倒される。
 迫力はやはり凄まじい。一国の王だけある。


 しかしそれに反抗するのは偽裁判長だ。


「………な、なにを? マツカワ? それは……被害者の証人の?」


 反抗とはいえ、少々狼狽えているか。


「しょうがない。それならば……エキソン! 偽裁判長を!」

 
 国王が叫ぶ。
 すると偽裁判長の前に突然現れたのは、剣を持ち喉元に剣を突きつけたエキソンだった。
 
「へ、へいか! これはあんまりじゃない──「まだそんな口が叩けるとはな、テスタ。お前が儂に言ったこと覚えているよな?」

「………へ?」


 問いに対して間抜けな返事のみを返した偽裁判長に国王は激昴する。


「お前は! 己が嘘をついたら殺せと言ったんだ!! 儂だけに……平等な裁判が出来なくなれば、己を儂の手かもしくは儂が信頼たる人物に殺させてくれ、と裁判長就任式で誓った! それを忘れたとは言わせん! 
 それに……その言葉を忘れた時点で、お前にはこの場限りで裁判長を降りてもらう!!」


 



 テスタとナズザーリン国王は長年の付き合いだったと聞く。

 テスタは元々ダルタリン王国で働く執事の一族。その中で二人は歳がそう離れておらず、気も合ったことからよく二人で遊んでいた。

 更に10になる頃にはテスタはナズザーリンの専属執事として仕え、ナズザーリンが国王になると共にテスタを裁判長として任命したという。
 任命時に約束したのが、今言っていたことなのだろう。

『自分を殺してくれ』

 と言うまでの仲。それは俺が知ることのないほどの『信頼』と『友情』があるに違いない。



 




 だから王は怒りながら泣いていた。
 いくら偽りだとはいえ、姿が同じのそれを殺すなど普通なら出来まい。


 しかし『友』の頼みであることだけを胸に信じ、国王は右手を天高くあげた。



「さらばだ……テスタ………」


 その合図と共にテスタ裁判長の首は吹き飛んだ。




『ありがとう……友よ』


 そう聞こえたのは俺だけじゃないはずだ。

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