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7話〜旅立ちに向けて
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7話~旅立ちに向けて
――ペン汰は15歳になった
すっかり背も伸びて、イワトビ系種特有の頭部に黄色のラインが目立ち、艶やかに光る羽毛と凛々しい顔つき。
まさにイケペンギンである。
訓練場でマユキが話し出す。
「さぁ、今日がペン汰とソータの最後の訓練になる」
「どこまで出来るようになったか見せてみろ!」
「他のみんなは、参考にしっかり見ておくように」
「はい!」
と返事をすると、ペン汰とソータは構えた。
「よし、蒼律剣術の基本の構えは、良いな!次は蒼気を出してみろ」
「はい」と返事をする。
2人から、青い霧状の気が溢れる。
「うん、しっかり武器まで気を纏っているな」
マユキが頷く。
「では、一閃を打ち込め!ペン汰が受けをやれ」
ソータがグッと腰を落とした。
ペン汰は、ソータをじっと見て集中している。
ソータは、ニッと笑う
「いくぜ!ペン汰」
ペン汰は、頷き、少し腰を落とす。
「いつでもどうぞ」
瞬間、ソータが勢いよく飛び込む!
振り下ろしの縦型一閃!
子供達は目で追うのがやっとの速さ。
しかしペン汰は、見えている。
右足を半歩前に出し身体を斜めに向ける。
ソータの打ち込み軌道に合わせて剣をやや寝かせる。
「おりゃあ!」
とソータが叫んだ瞬間
ガガッと木剣同士がぶつかる。
ペン汰は、斜め前に踏み込みながらソータの剣をいなす。
「うおっと!!」
ソータが前のめりに倒れそうになるが、なんとか持ち堪え、反転しようとする。
だが、すでにペン汰は、ソータの懐に入っていた。
いなしてすぐに、横型一閃の構えになっていたのである。
ソータの脇腹にペン汰の剣が迫る。
ソータも対応しようとするが、体勢が整っていない為、間に合わない。
ペン汰の木剣がソータの脇腹に直撃する瞬間。
「そこまで!!」
マユキが大声で終了の合図をする。
マユキがペン汰の顔を見る。
「ペン汰…お前最初から打ち込む気が無かっただろう?
右手に力が入ってなかったぞ」
ペン汰は、下を向く。
「練習だからと手を抜くな!止めに入るまで本気でやれ!」
「お前は、相手を思っての事だろうが…相手からすれば失礼だぞ」
ソータは、ペン汰に近づく
「お前の1撃ぐらいじゃ痛くも痒くもない!
俺はジェンツー種だぞ!イワトビ種のお前が遠慮なんかすんな!
次は手を抜くなよ!な!ペン汰!」
「系種は関係ないでしょ」
ぼそっとペン汰が呟く。
「エンペラー種の私の前で、何をごちゃごちゃ言っている」
マユキは、意地悪な顔をしながら腕を組んで巨躯を見せつけている。
2人は、お互いの顔を見合わせて、シュンとなっている。
マユキは、2人の顔を見て笑いながら話す
「まぁ、2人とも見事だったぞ!胸を張って試験を受けてこい!」
「はい!」
ペン汰もソータも自信のある顔で返事をした。
――試験というのは、ペン帝国の帝国兵になるための試験だ。1年に1回試験が行われているのだが。
近年は、なぜが地位の高い身分の血筋しか合格しないという噂が流れてていて。
実際に、民間の志願者からの合格者はゼロに等しかった。
マユキは、その事実を知り、10年かけて内情を調査し、試験制度の見直しを促してきた。
この年、ようやく適正化の目処がついていた。
その日の夜。マユキのもとに帝国兵士が1人訪れていた。
孤児院の1室で、2人は小声で話す。
「試験の方はどうだ?何か圧力はかかってないか?」
マユキが兵士に尋ねる。
「やはり、あの方から問い合わせが何度もあったそうです」と、兵が頭を抱える。
「そうか…やはり派手には動かないか。
しかし、確実に執拗に圧力をかけてくる」
「何十年も前から手口が同じだな…」
(昔は、正義感の強い奴だったはずなのに。
以前のあの方のようだ。どうなっている)
マユキは、考え込む。
しばらく考え、兵の方を向く。
「今回の審査員…奴の息のかかったものはいないだろうな?公正に試験出来そうなのか?」
兵は、自信ありげな表情で話す。
「今回の審査員は、全員マユキ様の元側近で固めております。来年以降どうなるかわかりませんが、今年だけは公正な審査を約束出来ます!」
マユキは苦笑いする。
「おいおい。それだと私が悪企みをしているようではないか。」
マユキは、真剣な顔になる。
「言うまでもないとは思うが…」
兵が慌てて答える。
「もっ、もちろんです!
絶対に贔屓はいたしません!あくまで地位や血筋に関係なく優秀な人材を見つけ出すための試験ですので!!」
マユキは微笑む。
「要らぬ心配だったな。よろしく頼むよ。
あの子達の未来を歪んだ力で穢したくはない。
ダメだった時は、また鍛え直せば良いだけさ」
マユキの顔は母性に溢れていた。
マユキの姿を見て兵が口を開く。
「マユキ様が突然退位されると言い出された時は、"この国が終わってしまう"と最後までお引き留めしてしまいましたが……
今のマユキ様の表情と子供達を見ていると、マユキ様にしか出来ない。
この国の希望を育てるという、あのお立場では出来ない大切な仕事をされる為だったのだと。
あの頃の私の浅慮を恥ずかしく思うばかりです」
兵は物思いに耽っている。
マユキが口を開く。
「そんな大それたものじゃないよ。
ただ、色々なことを知ってしまった私としては、この国の…いや、大陸の未来が良くなるとは思えなかった。」
マユキは、兵を見る。
「今からだぞ、今からが重要なんだ。
……多くは言えないが、ペン汰の周囲が今後騒がしくなっていくだろう。
あの子は、まだ自分の力を自覚出来ていない。
しかし、今自覚する必要もない。
時がくれば嫌でも自覚しなければいけなくなる時が来ると、私は思っている。
あの子は、良くも悪くも純粋なんだ。
私達が、あの子の行く末を見守っていかなければ…」
兵は、真剣な表情で聞いている。
「マユキ様のお気持ちは、わかりました。
あまり、手を掛けるのは望まれないようなので、せめてその子の身に危険が及ばないよう配慮だけは致します」
マユキは笑顔で答える。
「うむ、私達は、あくまでも見守るもの達。
そこは、忘れないでくれ」
兵は、頷く。
「お話聞けてよかったです。
なんとなくですが、進むべき未来が見えてきたような気がします。
では、また」
「うむ、感謝する」
2人は握手を交わす。
――ペン汰は15歳になった
すっかり背も伸びて、イワトビ系種特有の頭部に黄色のラインが目立ち、艶やかに光る羽毛と凛々しい顔つき。
まさにイケペンギンである。
訓練場でマユキが話し出す。
「さぁ、今日がペン汰とソータの最後の訓練になる」
「どこまで出来るようになったか見せてみろ!」
「他のみんなは、参考にしっかり見ておくように」
「はい!」
と返事をすると、ペン汰とソータは構えた。
「よし、蒼律剣術の基本の構えは、良いな!次は蒼気を出してみろ」
「はい」と返事をする。
2人から、青い霧状の気が溢れる。
「うん、しっかり武器まで気を纏っているな」
マユキが頷く。
「では、一閃を打ち込め!ペン汰が受けをやれ」
ソータがグッと腰を落とした。
ペン汰は、ソータをじっと見て集中している。
ソータは、ニッと笑う
「いくぜ!ペン汰」
ペン汰は、頷き、少し腰を落とす。
「いつでもどうぞ」
瞬間、ソータが勢いよく飛び込む!
振り下ろしの縦型一閃!
子供達は目で追うのがやっとの速さ。
しかしペン汰は、見えている。
右足を半歩前に出し身体を斜めに向ける。
ソータの打ち込み軌道に合わせて剣をやや寝かせる。
「おりゃあ!」
とソータが叫んだ瞬間
ガガッと木剣同士がぶつかる。
ペン汰は、斜め前に踏み込みながらソータの剣をいなす。
「うおっと!!」
ソータが前のめりに倒れそうになるが、なんとか持ち堪え、反転しようとする。
だが、すでにペン汰は、ソータの懐に入っていた。
いなしてすぐに、横型一閃の構えになっていたのである。
ソータの脇腹にペン汰の剣が迫る。
ソータも対応しようとするが、体勢が整っていない為、間に合わない。
ペン汰の木剣がソータの脇腹に直撃する瞬間。
「そこまで!!」
マユキが大声で終了の合図をする。
マユキがペン汰の顔を見る。
「ペン汰…お前最初から打ち込む気が無かっただろう?
右手に力が入ってなかったぞ」
ペン汰は、下を向く。
「練習だからと手を抜くな!止めに入るまで本気でやれ!」
「お前は、相手を思っての事だろうが…相手からすれば失礼だぞ」
ソータは、ペン汰に近づく
「お前の1撃ぐらいじゃ痛くも痒くもない!
俺はジェンツー種だぞ!イワトビ種のお前が遠慮なんかすんな!
次は手を抜くなよ!な!ペン汰!」
「系種は関係ないでしょ」
ぼそっとペン汰が呟く。
「エンペラー種の私の前で、何をごちゃごちゃ言っている」
マユキは、意地悪な顔をしながら腕を組んで巨躯を見せつけている。
2人は、お互いの顔を見合わせて、シュンとなっている。
マユキは、2人の顔を見て笑いながら話す
「まぁ、2人とも見事だったぞ!胸を張って試験を受けてこい!」
「はい!」
ペン汰もソータも自信のある顔で返事をした。
――試験というのは、ペン帝国の帝国兵になるための試験だ。1年に1回試験が行われているのだが。
近年は、なぜが地位の高い身分の血筋しか合格しないという噂が流れてていて。
実際に、民間の志願者からの合格者はゼロに等しかった。
マユキは、その事実を知り、10年かけて内情を調査し、試験制度の見直しを促してきた。
この年、ようやく適正化の目処がついていた。
その日の夜。マユキのもとに帝国兵士が1人訪れていた。
孤児院の1室で、2人は小声で話す。
「試験の方はどうだ?何か圧力はかかってないか?」
マユキが兵士に尋ねる。
「やはり、あの方から問い合わせが何度もあったそうです」と、兵が頭を抱える。
「そうか…やはり派手には動かないか。
しかし、確実に執拗に圧力をかけてくる」
「何十年も前から手口が同じだな…」
(昔は、正義感の強い奴だったはずなのに。
以前のあの方のようだ。どうなっている)
マユキは、考え込む。
しばらく考え、兵の方を向く。
「今回の審査員…奴の息のかかったものはいないだろうな?公正に試験出来そうなのか?」
兵は、自信ありげな表情で話す。
「今回の審査員は、全員マユキ様の元側近で固めております。来年以降どうなるかわかりませんが、今年だけは公正な審査を約束出来ます!」
マユキは苦笑いする。
「おいおい。それだと私が悪企みをしているようではないか。」
マユキは、真剣な顔になる。
「言うまでもないとは思うが…」
兵が慌てて答える。
「もっ、もちろんです!
絶対に贔屓はいたしません!あくまで地位や血筋に関係なく優秀な人材を見つけ出すための試験ですので!!」
マユキは微笑む。
「要らぬ心配だったな。よろしく頼むよ。
あの子達の未来を歪んだ力で穢したくはない。
ダメだった時は、また鍛え直せば良いだけさ」
マユキの顔は母性に溢れていた。
マユキの姿を見て兵が口を開く。
「マユキ様が突然退位されると言い出された時は、"この国が終わってしまう"と最後までお引き留めしてしまいましたが……
今のマユキ様の表情と子供達を見ていると、マユキ様にしか出来ない。
この国の希望を育てるという、あのお立場では出来ない大切な仕事をされる為だったのだと。
あの頃の私の浅慮を恥ずかしく思うばかりです」
兵は物思いに耽っている。
マユキが口を開く。
「そんな大それたものじゃないよ。
ただ、色々なことを知ってしまった私としては、この国の…いや、大陸の未来が良くなるとは思えなかった。」
マユキは、兵を見る。
「今からだぞ、今からが重要なんだ。
……多くは言えないが、ペン汰の周囲が今後騒がしくなっていくだろう。
あの子は、まだ自分の力を自覚出来ていない。
しかし、今自覚する必要もない。
時がくれば嫌でも自覚しなければいけなくなる時が来ると、私は思っている。
あの子は、良くも悪くも純粋なんだ。
私達が、あの子の行く末を見守っていかなければ…」
兵は、真剣な表情で聞いている。
「マユキ様のお気持ちは、わかりました。
あまり、手を掛けるのは望まれないようなので、せめてその子の身に危険が及ばないよう配慮だけは致します」
マユキは笑顔で答える。
「うむ、私達は、あくまでも見守るもの達。
そこは、忘れないでくれ」
兵は、頷く。
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