その召喚獣、ツッパリにつき

きっせつ

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その召喚獣、ツッパリにつき

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想像していたものと駆け離れた展開に目をパチクリさせる。

「懐かしいですね。最初の頃はここで二人で生活してたんですよね。」

俺を降ろし、懐かしいと古ぼけたテントを見て微笑むその姿を見て、俺は内心、穴があったら入りたい思いだった。

恥ずかしい。
このままベッドに直行かと焦った自分が恥ずかしい。

出来るだけミドリにバレないように羞恥で染まった顔を背ける。

ー 平常心。…平常心だ。

そう自身に暗示を掛けるが、ソッと遠慮がちに小指を絡ませる姿にこそばゆくなり、ついには顔を小指を絡ませていない手で覆った。

何故だ。
気持ちを自覚してからコイツの行動一つ一つが可愛く見えるのは…。
相手は自身よりタッパのある男がこんなに可愛く見えるのは何故だ!?


何度か深呼吸をして心を落ち着かせ、チラリとミドリを見やる。
するとミドリの紫色の瞳はずっとこちらを見ていたようで目があった瞬間、嬉しそうにはにかんだ。

その表情を暫く魅入ってしまった事が悔やまれる。
何故、ここに来たのか聞こうと思っていたのに言葉が何処かに消えてしまった。

二人で言葉もなく見つめ合うこの時間がこそばゆ過ぎる。
何か…。何か言葉を絞り出せ!!

「そういや、最近ラヨネが…ッ。いや、なんでもない。」

取り敢えず、最近の話題でも話そうかとフッと口から出たのがそれだった。
だが、『ラヨネ』の名前が出た瞬間、目に見えて疲れた表情になったのが俺にも分かったのでやめた。

あからさまにその話題を振るのをやめるとミドリは吹き出し、「大丈夫ですよ。」言い切るが少し眉を下げた。


「…本当に懐かしいです。昨日の事のように鮮明に思い出せるのに随分と昔のようにも感じる。不思議です。」

「お前はあの頃と比べると容姿も立場もかなり変わったからな。…まぁ、根は変わんねぇけど。」

「そう…ですかね?そこも結構変わったつもりだったのですが…。」

「根は簡単に変わらねぇよ。それに全てが変わる必要なんてないだろ。変わんない事が大切な時だってある。」

「そんなものですかね。」

「何か言い辛い事がある時にそうやってタイミングを長々と伺う所も、いっそお前らしくて今じゃ少し安心する。」

「…そこは本当に直さなければと思ってるんですけどね。」


ソッと絡めていた小指がしっかりと繋がれ、真剣な眼差しがこちらに注ぐ。
言い辛そうに開いた口を一度閉じたが、ふっと一息吐くと覚悟を決めたように口を再度開けた。

「今の私ならコタを元の世界に帰せます。コタは帰りたいですか?」


ドクンッと心臓が大きく鼓動を刻む。

その言葉に楽しかった舎弟達との喧嘩に明け暮れた日々が頭を駆け巡り、分かり合えはしなかったけど大切だった家族の顔が記憶に蘇る。

「今の私はソレーユからコタの召喚主の権利をもらったのでコタの居た元の世界への道を開けます。……コタは元の世界に戻れば魔力なしでも生きていけるのですよね。魔力に縛られる事なく、生きていける。」

ドクンッドクンッと激しく刻む鼓動が小指まで伝わる。
鼓動は絡んだミドリの小指から伝わるミドリの壊れそうな程に刻まれる鼓動と重なり、やがてどちらのものか分からなくなった。


ふと、小指を見ると絡み合ったその小指はまるでゆびきりげんまんをしてるみたいだ。
それがなんだか急におかしく感じて、フッと力が抜ける。


「お前は最初からそのつもりだったのか?」

「魔王になると決めたその日からそのつもりでした。……コタには笑っていて欲しいから。」

無理して笑うその顔には寂しいと書いてある。
それでも必死に取り繕って握っていた小指を離した。


俺はその離れていく小指を追わない。

その俺の姿に離したその手を寂しそうにギュッと握り、一層無理して笑うソイツの胸ぐらを掴んだ。

「『約束破ったら腹に三発。』…。お前は俺を殴れないだろ。」

「あ、当たり前です。手放してでも幸せになって欲しい程、愛してるんです。」

「ならなッ…。」

絶対、何があっても殴らないとキッとこちらを見る紫色の瞳を睨みつけ、胸ぐらを掴んだ手を寄せ、メンチを切る。

「惚れさせ続けろ。帰る余地がないくらい俺をお前に惚れさせ続けろ。」

フンッと鼻を鳴らして、胸ぐらを掴んだ手をパッと離す。
顔を真っ赤にして惚けた馬鹿にニッと笑い掛けた。


ーー end   ーー



~・~・~・~・~・~・~



ここまで根気強く読んで下さりありがとうございました。
少しでも楽しんで頂けたなら幸いです。

吉雪
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