魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜伴侶編〜

ゆずは

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マシロが養女(仮)になりました

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「っとー、るー」
「可愛い格好になってますね、マシロ」
「ましろ、かぁい?」
「はい。とっても」

 いつもよりラフな格好のザイルさんが、マシロの頭を撫でた。
 …うん。俺達に声をかけてきたのは、オットーさんとザイルさんだったんだけど。いつもの濃紺の制服ではなくて、ラフな私服姿の。

「オットー、街に出てたのか」
「ええ。昨日からお休みいただきましたしね?…それより、こんな往来で一体あんたは何してんですかね?」
「暁亭に行くところだが」
「それでなんでアキラさんとべたべたして注目浴びてるんですかね?そもそも護衛はどうしたんです」
「お前たちには全員休みと言ったはずだが」
「ええ、そりゃ俺達団員は休みですけどね?城にも近衛も騎士も兵士も、たくさんいますよね?」
「いらないだろ」
「ばかですか」

 マシロを撫でたあと少し離れてたザイルさんの方に思わず歩み寄ってしまった。
 オットーさんこわい…。

「はぁ……」

 相当頭に来てるのかな……。大きなため息をついて、眉間に指をあてた。

「ザイル、すまないが休暇はここまでで」
「ええ」

 ザイルさんはわかってますーって顔で、苦笑してる。
 そんな顔で左腰の剣を確認していた。

「お昼までお休みじゃなくて?」
「殿下とアキラさんに護衛がついていないでしょう?」
「うん」

 必要ない気がするんだけど。

「なので、今これから、私たちが護衛につきますよ」
「え、でも」
「まあ、少し早い昼食を食べて帰るつもりでしたから」

 って、ザイルさんはいつも通りの顔に戻って教えてくれた。

「オットー、護衛はいい」
「いいわけないでしょう?」

 ああああ。
 オットーさんのこめかみに青筋たってるしね!?

「殿下が護衛がいらないほどの腕前だということは十分わかってますけどね?それでもアキラさんは攫われたですよ?またあんな思いをしたいんですか、あんたは」
「……」

 クリスの眉間の溝がまた濃くなった。

「っとー、こぁい、ぉかお」

 マシロがクリスの腕の中から、オットーさんに手を伸ばした。

「マシロ、殿下が悪いんです。悪いから、怒ってるんです」
「ぅぃす、め?」
「ええ、そうです」
「ぅいす、め、めーよ?」
「………」

 オットーさんに伸ばされてた手は、クリスの頬をペチペチと叩いた。

「あのね、わーるの、め、たの、めさい、するの」

 暗号きたわ…。
 ザイルさんが不思議そうな顔で俺を見るけど、俺もわからないから、首を振る。
 多分唯一ちゃんと理解してるだろうクリスは、左手で眉間を揉んでいる。

「……すまなかった」
「はい」
「……護衛を頼む」
「はい。――――というわけで、ザイル」
「ええ。問題ありません」

 ああ、うん。オットーさんに敵うわけないよね。さすが…最恐オットーさん…。

「アキラさん」
「ふあい!」
「邪魔はしませんからね。いつも通りでいいですよ」
「はい…」

 オットーさんが俺に向けてくれた笑顔は、すごく優しい笑顔だった。

「ぅいーす、いいこね?」

 マシロが唐突にクリスの頭をなでる。
 ……ごめんね、クリス。申し訳ないけど、笑いをとめられなかったよ。

「っとー、あー?」

 にこにこと笑うマシロは、片手で袋を抱きしめて、小さな手に菓子を握ってオットーさんに差し出してた。

「ありがとうございます」

 オットーさん、さっきまでの顔と全然違う顔で、マシロの手から菓子を食べて頭をなでてく。

「るー?」
「ああ、はい」

 次はザイルさん。
 ザイルさんも食べたらマシロの頭をなでた。

「……こうして見てるとにしか見えませんね」
「うー?」
「殿下がこんなに父親になってる姿なんて、想像できませんでしたよ」

 オットーさんとザイルさんは、お互いにうんうん頷き合ってる。

「マシロの服はどうされたんですか?」
「あ、宰相さんが、ティーナさんのお下がりを持ってきてくれて」
「ああ……。それなら、陛下が苦言を呈されたのでは?」

 うん。当たり。
 思わず笑ったら、ザイルさんも笑ってた。

 オットーさんが先頭を歩いて暁亭に向かう。
 俺の右隣はクリスで、左隣にザイルさん。
 マシロは時々菓子を口に入れて、「ん~」ってほわほわな笑顔をみせていた。

「マシロ、食べすぎだ」
「や」
「いや、じゃない。袋を閉じろ」
「や」
「………マシロ」
「……………ぅぃす、ぃらい」

 マシロが口を尖らせた。嫌々袋の口を閉じて、腕の中に抱きしめてる。

「……殿下、すっかりお父さんですね」
「うん」

 ほんと。それ。
 俺なんか、マシロが可愛いから何でも許しちゃうのに。

「……右腕にマシロがいて、左手はアキラさんと手を繋いでいるのに、どうして護衛はいらないとか言うんでしょうね。肝腎な手が空いてないのに」
「あ」

 確かにそうだ。
 緊急時にマシロを放り投げても、マシロ自身はなんの問題もなさそうだけど、幼児を放り出すっていう絵面に問題でそう。

「アキラさんも忘れないでくださいね。私達にとって殿下はお守りしないとならない人ですけど、アキラさんだって大切な方なんですからね」
「……はい」

 頷いたら、少しだけ後ろを振り向いたオットーさんも、笑いながら頷いてくれた。そしてクリスの方を見て、肩を揺らして笑い出す。

「緊張感のない……ただの親子にしか見えない」
「……オットー」
「ああ、はいはい。つきましたよ」

 話してる間についちゃった暁亭。
 オットーさんが扉を開けると、中から「おう」ってギルマスの声が聞こえる。
 オットーさんのあとからクリスが入って、俺も続く。
 宿の中をざっと見たら、数人の冒険者の人たちの中に、ラルフィン君たちをみつけた。お互いに気づいて手を振り合ってたけど、クリスの腕の中にいるマシロを見て手が止まった。

「レヴィ」
「れぃー」

 ギルマスは、ずっとマシロを凝視してて。

「………どこから連れてきた?…いや、違うな」

 ギルマス、俺とマシロを何度も見比べて、

「アキラ、お前、いつ子供産んだんだ」

 って、大真面目な顔で言った。
 うん。
 俺、産んでません。











*****
予想通りのギルマスの反応
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