魔法が使えると王子サマに溺愛されるそうです〜伴侶編〜

ゆずは

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マシロが養女(仮)になりました

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 城に戻る前に、オットーさんとザイルさんも一緒にお昼ごはんを食べた。
 城への帰り道は、クリスに縦抱きにされた。マシロはザイルさんが抱っこしてくれてたけど、不機嫌そうに口を尖らせていて、ちらちらと俺の方を見る。暴れたりはしなくて、大人しくはしてたけど。
 ごめんねマシロ。俺、クリスのことが凄く好きで、やっぱりクリスが他の人を構う姿は見たくないみたいなんだ。
 …今日だけ、今だけ、だから。






 城に戻って部屋に入ったら、マシロは俺にくっついて離れなくなった。

「何かありました?」
「あー……、別に特には……」

 不思議そうにするメリダさんに曖昧な答えを返す。……構われないから俺が嫉妬して拗ねたなんて、メリダさんに言いたくない……。情けなさ過ぎて。
 椅子に座ったらマシロがよじ登ってきて、俺の足に座って腰に両手を回してくる。

「マシロ、買ってきたお菓子食べる?」
「ぃない」
「ミルクは?」
「うぅん」
「クリスに抱っこしてもらう?」
「あきに、っこする」

 ん、離れようとしない。
 制服に着替えてたクリスは、着替え終わると俺の頭を撫でて額にキスをしてくれた。

「仕事してくる」
「俺も」
「アキは休んでろ」

 強い口調ではなくて、苦笑気味な声音。

「でも、マシロのこと」
「団員に伝えるのは今日じゃなくてもいい。疲れただろ?茶の時間には戻るからそれまで寝ていたらいい」

 疲れたわけじゃないんだけど。でも、ちらりと俺を見上げてくるマシロは変な顔してるし、俺も疲れた顔してるのかな。

「……わかった」

 頷いたら、クリスは頬にもキスをしてくれた。
 それから、顎を捉えられて、唇が重なる。
 心地いい、甘いキス。

「ん……」

 舌が絡むのは気持ちがいい。じわじわとクリスの魔力が体に馴染んでいく。

「連れて行きたくないわけじゃないからな?」
「ん…」
「茶のときに甘い菓子を用意してもらおう」
「うん」
「じゃ……行ってくる」
「いってらっしゃ」
「……ぅぃす、らしゃぃ」
「ああ」

 またちらりとクリスを見たマシロが、小さく手をひらひら振った。
 クリスはマシロの頭を撫でたあと、もう一度俺の頭にキスをして、何度も頬を撫でてやっと部屋を出ていった。…物凄く後ろ髪引かれてるみたいな顔をして。

「休んでろって言ったのはクリスなのにね」
「う?」
「クリスの方が寂しそうな顔してた」
「う」
「そうですね。アキラさんもマシロちゃんも傍にいないと、坊っちゃんの仕事は進みませんよ。お茶の時間よりもはやく戻ってきそうですね」
「クリス、マシロのこと気に入ってるから」
「う?」
「クリスね、マシロのこと好きだよ?」
「しゅき?」
「うん。そう」
「ましろね、あき、しゅき」
「ん。俺も好き」

 ぎゅって抱きしめたら、マシロの不安も少しはなくなるかな…?
 少し笑うようになったマシロと、ベッドに潜り込んだ。
 ピンク色のドレスを脱いで白いワンピース姿になったマシロを腕の中に抱いて、目を閉じる。
 ……まさか、俺がマシロに嫉妬するような日が来るなんて思いもしなかった。こんなに可愛いのに。心っていうのはままならないもんだなぁ。
 頭をポンポンなでたら、マシロがくふくふ笑い始めた。
 …人じゃないけど、でも本当に可愛い。誰が見ても家族に見えるらしいし。見た目、俺たちの娘。陛下たちも養女としてどうのと言っていたし。
 どうしたらいいんだろう。
 マシロは人じゃなくて、どちらかといえば精霊で、俺の使い魔で。人の子のように接してもいいんだろうか。
 悩んでるうちにマシロの体温に引き摺られるように眠りに落ちてた。
 俺が意識してなかっただけで、何故か疲れてたんだな。うん。疲れてるとろくな考えが浮かばない。こういう時は寝るに限るね。







◆side:クリストフ

 思いがけずいいものを見れた。
 あからさまに誰かに嫉妬するアキは珍しく、ちらちら俺を見てくる瞳に俺に対する独占欲が見えて、こみ上げてくる笑みを消すのに苦労した。
 俺が喜んでいるなんて知られるとへそを曲げるのは目に見えている。これは知られちゃ駄目だな。

 西町から戻ってくる間、ずっと俺から離れようとしなかった。
 意識してるのか無意識なのか。確かにここのところ、マシロを抱いて移動することが多かったから、アキをこんなふうに抱き上げての移動は久しぶりのような気がする。
 アキの甘えぶりは、嫉妬からくるものだけではないだろう。本人はあまり気にしていないが、魔力が消費されている。無限にも思えるアキの魔力だから、それから見れば微々たる量かもしれないが、こうして甘えてくるところを見ると魔力は常に満たしていたほうが良さそうだ。
 消費された原因はマシロの人化か。
 互いの魔力が繋がり、感情まで流れているのなら、お互いに不調を感じ取っていてもおかしくない。アキはマシロに嫉妬感情を持ったことをかなり気にしている様子だったから。二人で少し眠れば、アキの中の蟠りも少しは解消されるだろう…と、執務には連れて行かずに休ませたが。

「………」

 執務を三割ほど終わらせ部屋に戻った。
 お互いに幸せそうに微笑みながら寄り添って眠るアキとマシロ。
 子猫姿のマシロがアキに纏わりつくのは我慢ならなかったが、幼児姿のマシロは駄目だ。あどけない寝顔はアキそのものだ。

「………」

 思わず口元を抑えていた。
 アキの容姿だけを好いているわけではないが、アキを幼くしたマシロの容貌にも愛しさを覚えてしまう。
 ……これほどアキに似たマシロを、俺が排除できるわけもなく。

「マシロちゃんは本当に普通の人の子供にしか見えませんね」
「……そうだな」

 柔らかな眼差しを向けるメリダの言葉に頷きながら。

「それにこんなにアキラさんに似て。でも、坊っちゃんの幼い頃にも似てる気がするのは何故でしょうね?」
「………さあな」

 アキに似ていて、俺にも似てるマシロ。

「このままお子様にしてしまえばよろしいのに」

 他意のないメリダの言葉に、養女に迎えればいいと言われたことが思い起こされた。

「……そうだな」

 アキの頬を撫でれば嬉しそうに口元が緩み、マシロの頭を撫でれば同じように口元を動かす。
 これは、誰が見ても親子だろう。
 無意識に口元に笑みを浮かべながら、幸せそうな二人を暫く眺めていた。










*****
アキの嫉妬に喜ぶクリス。
アキに知られて拗ねられる案件です…(笑)
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