ウェディング🍰に消費期限はございません!クリスマス🍰は31日を過ぎるとウェディング🍰に変わる?夢から逃げたオタの私は神歌い手らに溺愛される

西東友一

文字の大きさ
3 / 15

2

しおりを挟む
 カタカタカタカタ・・・・・・

 次の日、私は一睡もできないまま職場のオフィスに来ていた。

(ケイ様が重大発表、ケイ様が重大発表、ケイ様が・・・・・・)

「柊木先輩、重大発表ってなんすか?」

「ほえっ?」

 気がつくと、私のパソコンのディスクに映る作成中の会議資料に重大発表と書き込んでいた。慌てて後ろを振り向くと、後輩の男の子の犬飼くんが口を押さえながら後ろを向いて、小刻みに震えていた。

「ほえっとかカワヨ・・・・・・」

「あっえっちょっと、これはなんでもないの!」

 私が思わず立ち上がって大きな声で否定すると、周りの人たちが何事かとこちらを見てきたので恥ずかしくなりながら私は座る。

「なんかーーー、今日は調子悪い感じっすか?」

 そういって犬飼くんは自分の席でもないのに私の席の隣の及川さんの席に座って紙コップのコーヒーを渡してきた。

「あっありがとう」

「いいっす、いいっす」

 ニコッと笑う爽やかな横顔。彼も自分の分のコーヒーを口にする。

「んっ」

 私もコーヒーを口に入れるとコーヒーの苦味の中に甘みがあった。きっと事前にシロップを入れてくれたのだろう。私が彼を見ると、嬉しそうに親指を立てて少年のように笑っている。

(犬みたいだな、この子。頭でも撫でてあげたら喜ぶんだろうか)

 けれど、私はそんな浮ついたするキャラじゃない。私は一途なんだ。そして今、その一途さが窮地に陥っているんだ。

「おとこ・・・・・・絡みっすか」

「んぐっ」

 犬飼くんが急に核心をついてきたのでコーヒーを吹き出しそうになる。

(危なかったよ、犬飼くん。昨日吹き出して注意してなかったら、お姉さん吹き出していたよ)

 私は心の中でドヤる。そして、彼を見ると心配そうな顔をして私の顔を覗き込んでいたので、私は慌てて平静を装う。

「こほんっ。犬飼くん、いい? 例え男性のことだったとしてもね? あっ、今回のはそう言う問題じゃないんだけど」

 そう、これは男性問題じゃない。
 推しとは男女の関係を超えたもっと崇高なものなのだ。

(まぁ、少しは妄想するけど、手に入るとは思ってないのよ、うん)

 チラッと彼を見るとまだ疑心を抱いた顔をしている。

「そういうのは、職場で聞くのはいけないと思うなーわたしは。ねっ? ほら、今、セクハラとかよく問題になっているじゃない?」

「大丈夫っす。自分権力ないんで」

 また、真剣な顔で答えているけど、親指を立てて答えるところがまぁなんというか天然というか、ズレているというか。

「今は部下からのパワハラ、セクハラも問題視されているよ? あと、相手が嫌だと思うことはよくないと思うな」

 あんまり言いたくはないけれど、直属の後輩だし、犬飼くんもこのままいけば、ハラスメント予備軍な気がしたし、言えば分かってくれる子だから言ってみた。

 すると、

「自分じゃダメですか?」

 うるうるした目で私の手を握ってきた。

「自分、柊木先輩の隣にいちゃ、ダメっすか?」

「うん、そこボクの席だから」

 隣を見ると、ふくよかでベルトいらずそうなお腹があった。私と犬飼くんが見上げると、私の席の隣の及川さんが困った顔をしながらいた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

お前が欲しくて堪らない〜年下御曹司との政略結婚

ラヴ KAZU
恋愛
忌まわしい過去から抜けられず、恋愛に臆病になっているアラフォー葉村美鈴。 五歳の時の初恋相手との結婚を願っている若き御曹司戸倉慶。 ある日美鈴の父親の会社の借金を支払う代わりに美鈴との政略結婚を申し出た慶。 年下御曹司との政略結婚に幸せを感じることが出来ず、諦めていたが、信じられない慶の愛情に困惑する美鈴。 慶に惹かれる気持ちと過去のトラウマから男性を拒否してしまう身体。 二人の恋の行方は……

聖女は秘密の皇帝に抱かれる

アルケミスト
恋愛
 神が皇帝を定める国、バラッハ帝国。 『次期皇帝は国の紋章を背負う者』という神託を得た聖女候補ツェリルは昔見た、腰に痣を持つ男を探し始める。  行き着いたのは権力を忌み嫌う皇太子、ドゥラコン、  痣を確かめたいと頼むが「俺は身も心も重ねる女にしか肌を見せない」と迫られる。  戸惑うツェリルだが、彼を『その気』にさせるため、寝室で、浴場で、淫らな逢瀬を重ねることになる。  快楽に溺れてはだめ。  そう思いつつも、いつまでも服を脱がない彼に焦れたある日、別の人間の腰に痣を見つけて……。  果たして次期皇帝は誰なのか?  ツェリルは無事聖女になることはできるのか?

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

初夜った後で「申し訳ないが愛せない」だなんてそんな話があるかいな。

ぱっつんぱつお
恋愛
辺境の漁師町で育った伯爵令嬢。 大海原と同じく性格荒めのエマは誰もが羨む(らしい)次期侯爵であるジョセフと結婚した。 だが彼には婚約する前から恋人が居て……?

君を探す物語~転生したお姫様は王子様に気づかない

あきた
恋愛
昔からずっと探していた王子と姫のロマンス物語。 タイトルが思い出せずにどの本だったのかを毎日探し続ける朔(さく)。 図書委員を押し付けられた朔(さく)は同じく図書委員で学校一のモテ男、橘(たちばな)と過ごすことになる。 実は朔の探していた『お話』は、朔の前世で、現世に転生していたのだった。 同じく転生したのに、朔に全く気付いて貰えない、元王子の橘は困惑する。

私だけ価値観の違う世界~婚約破棄され、罰として醜男だと有名な辺境伯と結婚させられたけれど何も問題ないです~

キョウキョウ
恋愛
どうやら私は、周りの令嬢たちと容姿の好みが違っているみたい。 友人とのお茶会で発覚したけれど、あまり気にしなかった。 人と好みが違っていても、私には既に婚約相手が居るから。 その人と、どうやって一緒に生きて行くのかを考えるべきだと思っていた。 そんな私は、卒業パーティーで婚約者である王子から婚約破棄を言い渡された。 婚約を破棄する理由は、とある令嬢を私がイジメたという告発があったから。 もちろん、イジメなんてしていない。だけど、婚約相手は私の話など聞かなかった。 婚約を破棄された私は、醜男として有名な辺境伯と強制的に結婚させられることになった。 すぐに辺境へ送られてしまう。友人と離ればなれになるのは寂しいけれど、王子の命令には逆らえない。 新たにパートナーとなる人と会ってみたら、その男性は胸が高鳴るほど素敵でいい人だった。 人とは違う好みの私に、バッチリ合う相手だった。 これから私は、辺境伯と幸せな結婚生活を送ろうと思います。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

【完結】あいしていると伝えたくて

ここ
恋愛
シファラは、生まれてからずっと、真っ暗な壁の中にいた。ジメジメした空間には明かり取りの窓すらない。こんなことは起きなかった。公爵の娘であるシファラが、身分の低い娼婦から生まれたのではなければ。 シファラの人生はその部屋で終わるはずだった。だが、想定外のことが起きて。 *恋愛要素は薄めです。これからって感じで終わります。

処理中です...