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カタカタカタカタ・・・・・・
次の日、私は一睡もできないまま職場のオフィスに来ていた。
(ケイ様が重大発表、ケイ様が重大発表、ケイ様が・・・・・・)
「柊木先輩、重大発表ってなんすか?」
「ほえっ?」
気がつくと、私のパソコンのディスクに映る作成中の会議資料に重大発表と書き込んでいた。慌てて後ろを振り向くと、後輩の男の子の犬飼くんが口を押さえながら後ろを向いて、小刻みに震えていた。
「ほえっとかカワヨ・・・・・・」
「あっえっちょっと、これはなんでもないの!」
私が思わず立ち上がって大きな声で否定すると、周りの人たちが何事かとこちらを見てきたので恥ずかしくなりながら私は座る。
「なんかーーー、今日は調子悪い感じっすか?」
そういって犬飼くんは自分の席でもないのに私の席の隣の及川さんの席に座って紙コップのコーヒーを渡してきた。
「あっありがとう」
「いいっす、いいっす」
ニコッと笑う爽やかな横顔。彼も自分の分のコーヒーを口にする。
「んっ」
私もコーヒーを口に入れるとコーヒーの苦味の中に甘みがあった。きっと事前にシロップを入れてくれたのだろう。私が彼を見ると、嬉しそうに親指を立てて少年のように笑っている。
(犬みたいだな、この子。頭でも撫でてあげたら喜ぶんだろうか)
けれど、私はそんな浮ついたするキャラじゃない。私は一途なんだ。そして今、その一途さが窮地に陥っているんだ。
「おとこ・・・・・・絡みっすか」
「んぐっ」
犬飼くんが急に核心をついてきたのでコーヒーを吹き出しそうになる。
(危なかったよ、犬飼くん。昨日吹き出して注意してなかったら、お姉さん吹き出していたよ)
私は心の中でドヤる。そして、彼を見ると心配そうな顔をして私の顔を覗き込んでいたので、私は慌てて平静を装う。
「こほんっ。犬飼くん、いい? 例え男性のことだったとしてもね? あっ、今回のはそう言う問題じゃないんだけど」
そう、これは男性問題じゃない。
推しとは男女の関係を超えたもっと崇高なものなのだ。
(まぁ、少しは妄想するけど、手に入るとは思ってないのよ、うん)
チラッと彼を見るとまだ疑心を抱いた顔をしている。
「そういうのは、職場で聞くのはいけないと思うなーわたしは。ねっ? ほら、今、セクハラとかよく問題になっているじゃない?」
「大丈夫っす。自分権力ないんで」
また、真剣な顔で答えているけど、親指を立てて答えるところがまぁなんというか天然というか、ズレているというか。
「今は部下からのパワハラ、セクハラも問題視されているよ? あと、相手が嫌だと思うことはよくないと思うな」
あんまり言いたくはないけれど、直属の後輩だし、犬飼くんもこのままいけば、ハラスメント予備軍な気がしたし、言えば分かってくれる子だから言ってみた。
すると、
「自分じゃダメですか?」
うるうるした目で私の手を握ってきた。
「自分、柊木先輩の隣にいちゃ、ダメっすか?」
「うん、そこボクの席だから」
隣を見ると、ふくよかでベルトいらずそうなお腹があった。私と犬飼くんが見上げると、私の席の隣の及川さんが困った顔をしながらいた。
次の日、私は一睡もできないまま職場のオフィスに来ていた。
(ケイ様が重大発表、ケイ様が重大発表、ケイ様が・・・・・・)
「柊木先輩、重大発表ってなんすか?」
「ほえっ?」
気がつくと、私のパソコンのディスクに映る作成中の会議資料に重大発表と書き込んでいた。慌てて後ろを振り向くと、後輩の男の子の犬飼くんが口を押さえながら後ろを向いて、小刻みに震えていた。
「ほえっとかカワヨ・・・・・・」
「あっえっちょっと、これはなんでもないの!」
私が思わず立ち上がって大きな声で否定すると、周りの人たちが何事かとこちらを見てきたので恥ずかしくなりながら私は座る。
「なんかーーー、今日は調子悪い感じっすか?」
そういって犬飼くんは自分の席でもないのに私の席の隣の及川さんの席に座って紙コップのコーヒーを渡してきた。
「あっありがとう」
「いいっす、いいっす」
ニコッと笑う爽やかな横顔。彼も自分の分のコーヒーを口にする。
「んっ」
私もコーヒーを口に入れるとコーヒーの苦味の中に甘みがあった。きっと事前にシロップを入れてくれたのだろう。私が彼を見ると、嬉しそうに親指を立てて少年のように笑っている。
(犬みたいだな、この子。頭でも撫でてあげたら喜ぶんだろうか)
けれど、私はそんな浮ついたするキャラじゃない。私は一途なんだ。そして今、その一途さが窮地に陥っているんだ。
「おとこ・・・・・・絡みっすか」
「んぐっ」
犬飼くんが急に核心をついてきたのでコーヒーを吹き出しそうになる。
(危なかったよ、犬飼くん。昨日吹き出して注意してなかったら、お姉さん吹き出していたよ)
私は心の中でドヤる。そして、彼を見ると心配そうな顔をして私の顔を覗き込んでいたので、私は慌てて平静を装う。
「こほんっ。犬飼くん、いい? 例え男性のことだったとしてもね? あっ、今回のはそう言う問題じゃないんだけど」
そう、これは男性問題じゃない。
推しとは男女の関係を超えたもっと崇高なものなのだ。
(まぁ、少しは妄想するけど、手に入るとは思ってないのよ、うん)
チラッと彼を見るとまだ疑心を抱いた顔をしている。
「そういうのは、職場で聞くのはいけないと思うなーわたしは。ねっ? ほら、今、セクハラとかよく問題になっているじゃない?」
「大丈夫っす。自分権力ないんで」
また、真剣な顔で答えているけど、親指を立てて答えるところがまぁなんというか天然というか、ズレているというか。
「今は部下からのパワハラ、セクハラも問題視されているよ? あと、相手が嫌だと思うことはよくないと思うな」
あんまり言いたくはないけれど、直属の後輩だし、犬飼くんもこのままいけば、ハラスメント予備軍な気がしたし、言えば分かってくれる子だから言ってみた。
すると、
「自分じゃダメですか?」
うるうるした目で私の手を握ってきた。
「自分、柊木先輩の隣にいちゃ、ダメっすか?」
「うん、そこボクの席だから」
隣を見ると、ふくよかでベルトいらずそうなお腹があった。私と犬飼くんが見上げると、私の席の隣の及川さんが困った顔をしながらいた。
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