ウェディング🍰に消費期限はございません!クリスマス🍰は31日を過ぎるとウェディング🍰に変わる?夢から逃げたオタの私は神歌い手らに溺愛される

西東友一

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「ひゃっ、ひゃく・・・・・・」

 私は金額を見て絶句した。
 1番プレミアムなセブンプリンセスというコースの金額は食事等込みでまさかの3桁。100万円税別だった。

「でも、行きたい・・・・・・」

 私は血眼になって説明文を見る。
 金額はべらぼうに高いけれど、特典としては喉から手が出るほど豪華だ。まず、ケイ様のライブを1番身近で見ることができ、その後トークライブでは1人5分、最低1つの質問保証で会話ができる。その後、同じ円卓でご飯を食べ、談笑し、いっときケイ様は他の席に挨拶に行ってしまうがそれでもかなりの時間一緒にいることができる。

 また、限定グッズ、一緒に写真を撮って貰える等々も魅力的だけどそれだけじゃない。

「えー、なんなの?このシークレットって。気になる、気になるよう」

 そのトークライブ終了後、希望者が望んだ場合、スタッフ及びケイ様の判断により別の豪華な場所でVIP待遇で何かあるらしい。但し書きで別途料金が発生するなんて書いてあるけれど、そこまできたら皿までよって感じだ。

「でも、ひゃく、ひゃくかぁーーーっ」

 隙あらば、ケイ様に課金する私。
 ボーナスも込み込みで出さなくはないけれど、かなりきつい。

「えっ、シークレットっていくらなんだろう、もう百万? それとももっと?」

 ケイ様の人気や事務所の感じを考えれば、やっぱりかなり高い金額なのかもしれない。事務所の『オアシス』のサイトを見ると、他の配信者もケイ様と同じようにクリスマスにトークライブをしていた。さすがのケイ様は他の配信者よりも金額が高く、トップクラスだった。そして、他の配信者にも売れている配信者にはシークレットコースまであった。

「・・・・・・・・・」

 言葉が出なくなってしまい、画面前で硬直してしまう私。もう暦は12月。ボーナスはあってもそれ以上のお金を貯める時間はない。

「ああああっ。もっと残業すればよかったのかな」

 有給の残業なんてしたもんなら、周りからもっと白い目で見られてしまうから、建設的じゃない。となると、

「副業? パパ活? いやいやいや・・・・・・」

 私は可愛くはない。

 でも、ちゃんとお化粧だってしているし、今だって保水パックしたり、美容院には1ヶ月に一回は行くし、前髪だけ気になる時はプラスアルファで美容院に行く。お風呂上がりはヨガだってするし、サプリも飲んでいる。そう、努力しているのだ。素材は良くないかもしれないけれど、普通の女の子ぐらいのレベルは維持している・・・・・・と思う。

「ははっ、脳内でめっちゃ早口じゃんわたし。ウケるーー」

 ただ、性格は腐女子だ。
 同世代には会話はたどたどしくて、一緒にいると残念な奴だってすぐバレる。

 けど、会社の飲み会では年配のおじさんや、オタクで清潔感がなく女の子とろくに会話してないような人たちにはよく絡まれて、説教や自慢話をされる。

「いや、オタは悪くないよ? 私だってオタだから。でもさ、清潔感とかさ、誠実な対応とかはさぁーー、最低限のマナーじゃん。それで、モテないとか言う男は、当たり前じゃん!」

 私に寄ってくるような人はワンチャンやらせてくれそうとか、不倫しても黙っていそうとか私ならいけそうみたいな感じで、私を見ていない。女としてしか見ていないのだ。

「偉そうにじゃねーよ! 高望みでもねーんだよ!」

 私はチューハイをぐびっと飲む。
 少し酔って、興奮でもしなければ、小心者の私には百万円は勇気が出ないからだ。

 男より女の方が異性と付き合いやすい。だから、こんな30手前で一度も付き合ったことがない女は地雷扱い・腐女子扱いされているのも知っている。

 SNSでつい最近見た恋愛講師のおばさんの映像を思い出す。

『いいですか、みなさん。昔は女はクリスマスケーキに例えられていました。22、23が1番売れて、24も夕方くらいまでは売れて、夜になれば割引が始まります。そして、25では半値。26にもなれば半値でもなかなか売れません。30、31なんて大晦日と正月のことで頭がいっぱいで誰も見向きもしません。32以降? そんなもんございません』

 このご時世でそんな酷い言葉は炎上必須だろう。
 何より嫌な気持ちにしかならない。
 今はいい時代だ。
 そんな耳障りな言葉は会社でもテレビでも見かけない。
 そんな社会だからこそ私は焦らず、29歳になることができた。そう、焦らず―――

『昔はそう言いました。今言えば問題ですよね? 女性はいつまでも輝ける、SNSを見てごらんなさい。40歳でキラキラした女性がいるでしょ? それはですね、このクリームのおかげなんです。お値段なんと月々9万8千円・・・・・・』

「私にも40でも消費期限が伸びる防腐剤をちょうだいよ・・・・・・」

 この頃、顔のクリームの乗りが悪くなってきた。
 これからどんどん衰えて若さや肌艶のハリなんて魅力が無くなっていく。高い化粧品ならもしかしたら違うかもしれないけれど、私の肌はもとからそこまで強くないし、相性が合う化粧品に出会えるのか分からないし、何よりずーっと購入する財源がない。

 時々、朝起きて鏡に映る自分の顔を見ると、吐き気がして、会社を休みたくなる日がある。
 必死にお化粧をするけど、全然肌にのってくれなくて何度も何度も塗り直す日がある。
 誰にも嫌われないように、誰にも変だと思われないように必死に必死に化粧を塗る。なんとか塗り終わって電車に乗って、綺麗な人を見ると、なんで、私は頑張ってもマイナスから0に近づける作業なのに、こういう綺麗な人は頑張ったら、頑張った分だけ綺麗になれるんだろうと、悲しくなる時がある。

「お酒なんて飲むもんじゃないな・・・・・・」

 私は項垂れる。 

 誰かに言って欲しいのだ。
 私は腐ってなんか全然いない。

 そのままのキミがステキだよ―――って。
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