13 / 15
10
しおりを挟む
「アオイ、アオイっ!」
私は母親の声で目が覚める。
「今日の授業は・・・・・・・・・」
体が凄い重いから今日は学校には行きたくないな・・・・・・って違う。もう私は社会人だ。
久しぶりにスマホのアラームじゃなくて、母親の声で起きた。目を開けたら天井や布団、そしてベッドが実家の物だから学生時代と錯覚してしまった。それにしても歳をとるとこんなにも身体が重くなるとは思わなかった。それとも、こんなに身体が重いのは疲れているからなのか、それとも・・・・・・
「お母さんの声もだいぶ老けたな」
それ以上考えたくなかった私は考えるのをやめて、鏡に映る自分を見る。あの頃よりももっと醜い。逆に、あの頃もブサイクだと思っていたけれど、今に比べれば超かわいい。
誤解しないでね、「今」に比べればだから。私はそんなに可愛くなかった。あの頃、ちょっとしたことでできた肌荒れなんかでも、人と近くで話すと気にされると思って、いつも以上に目なんか合わせられなかった。けれど、あのくらいの肌荒れなんか今では化粧で誤魔化すけど調子がいい日の肌でも勝てない気がする。
「もっと、あの時自信を持ってアピールしたら、誰かと付き合えたりしたのかな?」
背中を伸ばしながらそんなことを考える。
・・・・・・いや、それもないか。
私がこんなふうになったのは中学生からだけど、学生の方が本能に従順だ。誰が上で誰が下、あいつはありで、あいつはなしでってランク付けして勝手になしにされる。そうやって評価している目つきでいることを隠さない人がたくさんいた。それが学生だ。本当に残酷な世界だ。
「本当に・・・・・・残酷な世界」
私は着替えて顔を洗い、母のいるリビングへと向かった。
「おはよう、お母さん」
私が顔を出すと、
「昨日はありがとうね、アオイ」
と言って、ダイニングテーブルのご飯を「食べて」と案内された。
久しぶりの母の手料理。
暖かそうな湯気が出ていて美味しそうだ。
「いただきます」
と小さく言って私はご飯に手をつける。
「・・・・・・おいしい」
そう言うと「ふふっ」と母は嬉しそうにしながら、洗い物を続ける。あの頃は朝にご飯を食べるのは苦痛で「食べたくない」と言ったご飯が今ではこんなに美味しく感じられる。やっぱり、自分で料理をするようになって、改めて人にご飯を作ってもらえることのありがたさに気づいた。
「ねぇ、アオイって今いい人いるの?」
「うっ」
私はお味噌汁でむせそうになるのを慌ててなんとかした。
(そうだ、忘れていた)
父の交通事故ということで焦って帰ってきたけれど、私が実家と距離を置いた理由第一、結婚のプレッシャーをすっかり忘れたまま帰ってきてしまった。
私は母親の声で目が覚める。
「今日の授業は・・・・・・・・・」
体が凄い重いから今日は学校には行きたくないな・・・・・・って違う。もう私は社会人だ。
久しぶりにスマホのアラームじゃなくて、母親の声で起きた。目を開けたら天井や布団、そしてベッドが実家の物だから学生時代と錯覚してしまった。それにしても歳をとるとこんなにも身体が重くなるとは思わなかった。それとも、こんなに身体が重いのは疲れているからなのか、それとも・・・・・・
「お母さんの声もだいぶ老けたな」
それ以上考えたくなかった私は考えるのをやめて、鏡に映る自分を見る。あの頃よりももっと醜い。逆に、あの頃もブサイクだと思っていたけれど、今に比べれば超かわいい。
誤解しないでね、「今」に比べればだから。私はそんなに可愛くなかった。あの頃、ちょっとしたことでできた肌荒れなんかでも、人と近くで話すと気にされると思って、いつも以上に目なんか合わせられなかった。けれど、あのくらいの肌荒れなんか今では化粧で誤魔化すけど調子がいい日の肌でも勝てない気がする。
「もっと、あの時自信を持ってアピールしたら、誰かと付き合えたりしたのかな?」
背中を伸ばしながらそんなことを考える。
・・・・・・いや、それもないか。
私がこんなふうになったのは中学生からだけど、学生の方が本能に従順だ。誰が上で誰が下、あいつはありで、あいつはなしでってランク付けして勝手になしにされる。そうやって評価している目つきでいることを隠さない人がたくさんいた。それが学生だ。本当に残酷な世界だ。
「本当に・・・・・・残酷な世界」
私は着替えて顔を洗い、母のいるリビングへと向かった。
「おはよう、お母さん」
私が顔を出すと、
「昨日はありがとうね、アオイ」
と言って、ダイニングテーブルのご飯を「食べて」と案内された。
久しぶりの母の手料理。
暖かそうな湯気が出ていて美味しそうだ。
「いただきます」
と小さく言って私はご飯に手をつける。
「・・・・・・おいしい」
そう言うと「ふふっ」と母は嬉しそうにしながら、洗い物を続ける。あの頃は朝にご飯を食べるのは苦痛で「食べたくない」と言ったご飯が今ではこんなに美味しく感じられる。やっぱり、自分で料理をするようになって、改めて人にご飯を作ってもらえることのありがたさに気づいた。
「ねぇ、アオイって今いい人いるの?」
「うっ」
私はお味噌汁でむせそうになるのを慌ててなんとかした。
(そうだ、忘れていた)
父の交通事故ということで焦って帰ってきたけれど、私が実家と距離を置いた理由第一、結婚のプレッシャーをすっかり忘れたまま帰ってきてしまった。
0
あなたにおすすめの小説
君を探す物語~転生したお姫様は王子様に気づかない
あきた
恋愛
昔からずっと探していた王子と姫のロマンス物語。
タイトルが思い出せずにどの本だったのかを毎日探し続ける朔(さく)。
図書委員を押し付けられた朔(さく)は同じく図書委員で学校一のモテ男、橘(たちばな)と過ごすことになる。
実は朔の探していた『お話』は、朔の前世で、現世に転生していたのだった。
同じく転生したのに、朔に全く気付いて貰えない、元王子の橘は困惑する。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
お前が欲しくて堪らない〜年下御曹司との政略結婚
ラヴ KAZU
恋愛
忌まわしい過去から抜けられず、恋愛に臆病になっているアラフォー葉村美鈴。
五歳の時の初恋相手との結婚を願っている若き御曹司戸倉慶。
ある日美鈴の父親の会社の借金を支払う代わりに美鈴との政略結婚を申し出た慶。
年下御曹司との政略結婚に幸せを感じることが出来ず、諦めていたが、信じられない慶の愛情に困惑する美鈴。
慶に惹かれる気持ちと過去のトラウマから男性を拒否してしまう身体。
二人の恋の行方は……
虫ケラ扱いの男爵令嬢でしたが、牧草風呂に入って人生が変わりました〜公爵令息とはじめる人生の調香〜
もちもちしっぽ
恋愛
男爵令嬢フレッチェは、父を亡くして以来、継母と義妹に粗末に扱われてきた。
ろくな食事も与えられず、裏庭の木の実を摘み、花の蜜を吸って飢えをしのぐ日々。
そんな彼女を、継母たちは虫ケラと嘲る。
それでもフレッチェの慰めは、母が遺してくれた香水瓶の蓋を開け、微かに残る香りを嗅ぐことだった。
「あなただけの幸せを感じる香りを見つけなさい」
その言葉を胸に生きていた彼女に、転機は突然訪れる。
公爵家が四人の子息の花嫁探しのために催した夜会で、フレッチェは一人の青年に出会い、一夜をともにするが――。
※香水の作り方は中世ヨーロッパをモデルにした魔法ありのふんわり設定です。
※登場する植物の名称には、一部創作が含まれます。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
初夜った後で「申し訳ないが愛せない」だなんてそんな話があるかいな。
ぱっつんぱつお
恋愛
辺境の漁師町で育った伯爵令嬢。
大海原と同じく性格荒めのエマは誰もが羨む(らしい)次期侯爵であるジョセフと結婚した。
だが彼には婚約する前から恋人が居て……?
【完結】あいしていると伝えたくて
ここ
恋愛
シファラは、生まれてからずっと、真っ暗な壁の中にいた。ジメジメした空間には明かり取りの窓すらない。こんなことは起きなかった。公爵の娘であるシファラが、身分の低い娼婦から生まれたのではなければ。
シファラの人生はその部屋で終わるはずだった。だが、想定外のことが起きて。
*恋愛要素は薄めです。これからって感じで終わります。
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる