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第一部
黒族長の定め 2
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黒族の主要地は、巨大な要塞の内に民の居住区も統治機関も備えている。
中央に設けられた市場から、道は放射線状に伸びており。道どうしを結びながら横道が数カ所走っていた。そんな道沿いは多くの民が居を構える場所だった。
その中で唯一、市場から伸びる一本道。最も太く続く道は最奥に立つ建造部へと繋がっている。
その建物の内は、大きく三つのエリアで分かれていた。族長であるギガイ達の居住区を備えた奥の間から、執務を中心とした中の間。そして名前の通り最も外部へ接した外の間は、民も立ち入れる場所だった。
外の間の数段高い壇上に、ギガイが足を踏み入れた。
広間の中心には、引き立てられて跪いたエクストルと若い医癒者がもう一人。そしてその背後には事を見守る民達が、囲いながらも遠巻きに断罪の場を見守っていた。
「私共はギガイ様に反意があったわけでは、ございません!!」
項垂れていたエクストルが、ギガイの姿に身をよじる。
向けられた顔は青白さを通り越して、土気色に近かった。話しを聞いて欲しいと縋るエクストルと、何も語らず今にも倒れそうな若い医癒官。どちらもレフラの迎え入れに宛がった者だ。
忠誠心と医癒官としての腕を見越した人選だった。それがこういう結果となったという事は、ギガイ自身の見る目の至らなさに加えて、その隙を産む緩みがあったという事だろう。
それならばその緩みを放置する訳にはいかなかった。
「す、全ては、黒族と、ギガイ様の為と思っての事でございます!」
「ほう、私とこの一族のためか…」
耳障りの良い言葉に嘲る感情が湧き上がる。
(ずいぶん簡単に言うものだ)
背負う物の重たさを知らないからこそ吐ける言葉だと知っていた。あまりの馬鹿馬鹿しさに切った言葉の先を、目の前に引き立てられた二人は都合良く受け取ったのだろう。
「はい、さようでございます!!全てはこの一族の繁栄を願っての事でございます!まかり間違っても、我が黒族長の血が途絶える事があってはなりませんから!!」
いかに自分たちがこの一族を思っての事だったのか、と訴える姿は勢い勇んだものだった。
「そもそもあの御饌はーーー」
「あの?」
エクストルの言葉にギガイの言葉が被さった。決して大きな声ではない。だがその声に威圧されたのか、誰も音を発する事ができなくなる。
水を得た魚のように雄弁に語り出していたエクストルもまた、口をパクパクと開閉するばかりだ。
「あれは私の御饌だ」
そんな無音の中で低く、唸るような音が響いていた。
中央に設けられた市場から、道は放射線状に伸びており。道どうしを結びながら横道が数カ所走っていた。そんな道沿いは多くの民が居を構える場所だった。
その中で唯一、市場から伸びる一本道。最も太く続く道は最奥に立つ建造部へと繋がっている。
その建物の内は、大きく三つのエリアで分かれていた。族長であるギガイ達の居住区を備えた奥の間から、執務を中心とした中の間。そして名前の通り最も外部へ接した外の間は、民も立ち入れる場所だった。
外の間の数段高い壇上に、ギガイが足を踏み入れた。
広間の中心には、引き立てられて跪いたエクストルと若い医癒者がもう一人。そしてその背後には事を見守る民達が、囲いながらも遠巻きに断罪の場を見守っていた。
「私共はギガイ様に反意があったわけでは、ございません!!」
項垂れていたエクストルが、ギガイの姿に身をよじる。
向けられた顔は青白さを通り越して、土気色に近かった。話しを聞いて欲しいと縋るエクストルと、何も語らず今にも倒れそうな若い医癒官。どちらもレフラの迎え入れに宛がった者だ。
忠誠心と医癒官としての腕を見越した人選だった。それがこういう結果となったという事は、ギガイ自身の見る目の至らなさに加えて、その隙を産む緩みがあったという事だろう。
それならばその緩みを放置する訳にはいかなかった。
「す、全ては、黒族と、ギガイ様の為と思っての事でございます!」
「ほう、私とこの一族のためか…」
耳障りの良い言葉に嘲る感情が湧き上がる。
(ずいぶん簡単に言うものだ)
背負う物の重たさを知らないからこそ吐ける言葉だと知っていた。あまりの馬鹿馬鹿しさに切った言葉の先を、目の前に引き立てられた二人は都合良く受け取ったのだろう。
「はい、さようでございます!!全てはこの一族の繁栄を願っての事でございます!まかり間違っても、我が黒族長の血が途絶える事があってはなりませんから!!」
いかに自分たちがこの一族を思っての事だったのか、と訴える姿は勢い勇んだものだった。
「そもそもあの御饌はーーー」
「あの?」
エクストルの言葉にギガイの言葉が被さった。決して大きな声ではない。だがその声に威圧されたのか、誰も音を発する事ができなくなる。
水を得た魚のように雄弁に語り出していたエクストルもまた、口をパクパクと開閉するばかりだ。
「あれは私の御饌だ」
そんな無音の中で低く、唸るような音が響いていた。
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