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第一部
非常な日常 5 side:ギガイ
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前回の悪戯のせいだろう。真っ赤な顔で首筋を押さえたレフラはギガイからだいぶ距離を取っていた。それは怯えた小動物にも見える姿だった。
「ほら、そんなに離れるな」
恥ずかしいと泣いてしまう事も多いレフラに、前の行為はやり過ぎだったのか。いつもの従順さに反して、ギガイの手招きに応じる様子が見られない。それでもギガイの言葉に背いているような状況に落ち着かなかったのだろう。向けられた瞳は揺れていた。
どうしよう、と動揺する心が聞こえてきそうな様子は愛らしい。それと同時に真っ赤な顔で向けられる目に熱っぽさを感じてしまえば、煽られている気にさえなってしまう。
(ただでさえ、加虐心も煽るような危うさもあるというのに……)
ギガイは内心で溜息を吐いた。いっそうの事、煽られるままに手を出してしまおうか。正直なところそんな気持ちさえ湧いてくる。
立場としてやりたいように振る舞ったとしても、誰に咎められる訳でもない。このまま抱いてしまう事も可能なのだ。
抱く時以外は意地悪はダメだという約束も、抱く事にさえなれば問題ないはずなのだ。もちろんレフラに合わせて最大限の手加減はする。だが泣きながらも健気に堪えて快感に沈む姿は雄の本能を刺激されてたまらなかった。
それでも無闇に泣かせたい訳ではない。どこか矛盾していると思いながらも、幸せに笑っているレフラの姿もギガイにとって愛おしかった。
(このまま手を出してしまえば、また泣かれてしまうだろうな)
腕の中で快感を与えながら泣かせている時はいい。だがそれ以外で見るレフラの涙は苦手だった。どれだけ周りから冷酷で無慈悲だと言われても、レフラの涙1つで動揺だってしてしまう。そんな自分がおかしくて、思わずギガイは苦笑を浮かべた。
そうなると後はギガイ自身の問題だろう。
(あんなに嬉しそうにしていたからな……)
『時間があるから外へ行くか?』
そう告げた時に返ってきた笑顔が泣き顔に変わると思うと、さすがに手を出す気にはなれなかった。
「そんなに警戒するな。行くぞ。今日は向こうの大樹の方へ行ってみたいと言っていただろ」
煽られる熱を断ち切るように、絡まり合った視線を外す。そのまま踵を返して、ギガイは1人歩き出した。
ギガイだけの御饌として、いつだって腕の中に閉じ込めておきたい存在なのだ。いつものように抱き寄せてしまいたい気持ちはあった。だがレフラのあの様子なら、いつもの戯れのような接触でさえ、羞恥で怯えさせるかもしれない。
(とりあえず、今は我慢をしておくか)
思っていたのは、そんな柄にも無いことだった。ただ、いつものようにギガイの言葉で、後から付いては来るだろう。そう思ってギガイは1人で歩き出した。
だがいつまで経っても聞こえる足音は1つだけ。増える様子がない事に、さすがに違和感を感じていた。
「レフラ?どうした?」
訝しみながらレフラの方を振り返る。それと同時に聞こえたような名を呼ぶ声。聞き間違いか、と確認する前に、咳き込み始めたレフラの身体をギガイは慌てて抱え上げた。
「ほら、そんなに離れるな」
恥ずかしいと泣いてしまう事も多いレフラに、前の行為はやり過ぎだったのか。いつもの従順さに反して、ギガイの手招きに応じる様子が見られない。それでもギガイの言葉に背いているような状況に落ち着かなかったのだろう。向けられた瞳は揺れていた。
どうしよう、と動揺する心が聞こえてきそうな様子は愛らしい。それと同時に真っ赤な顔で向けられる目に熱っぽさを感じてしまえば、煽られている気にさえなってしまう。
(ただでさえ、加虐心も煽るような危うさもあるというのに……)
ギガイは内心で溜息を吐いた。いっそうの事、煽られるままに手を出してしまおうか。正直なところそんな気持ちさえ湧いてくる。
立場としてやりたいように振る舞ったとしても、誰に咎められる訳でもない。このまま抱いてしまう事も可能なのだ。
抱く時以外は意地悪はダメだという約束も、抱く事にさえなれば問題ないはずなのだ。もちろんレフラに合わせて最大限の手加減はする。だが泣きながらも健気に堪えて快感に沈む姿は雄の本能を刺激されてたまらなかった。
それでも無闇に泣かせたい訳ではない。どこか矛盾していると思いながらも、幸せに笑っているレフラの姿もギガイにとって愛おしかった。
(このまま手を出してしまえば、また泣かれてしまうだろうな)
腕の中で快感を与えながら泣かせている時はいい。だがそれ以外で見るレフラの涙は苦手だった。どれだけ周りから冷酷で無慈悲だと言われても、レフラの涙1つで動揺だってしてしまう。そんな自分がおかしくて、思わずギガイは苦笑を浮かべた。
そうなると後はギガイ自身の問題だろう。
(あんなに嬉しそうにしていたからな……)
『時間があるから外へ行くか?』
そう告げた時に返ってきた笑顔が泣き顔に変わると思うと、さすがに手を出す気にはなれなかった。
「そんなに警戒するな。行くぞ。今日は向こうの大樹の方へ行ってみたいと言っていただろ」
煽られる熱を断ち切るように、絡まり合った視線を外す。そのまま踵を返して、ギガイは1人歩き出した。
ギガイだけの御饌として、いつだって腕の中に閉じ込めておきたい存在なのだ。いつものように抱き寄せてしまいたい気持ちはあった。だがレフラのあの様子なら、いつもの戯れのような接触でさえ、羞恥で怯えさせるかもしれない。
(とりあえず、今は我慢をしておくか)
思っていたのは、そんな柄にも無いことだった。ただ、いつものようにギガイの言葉で、後から付いては来るだろう。そう思ってギガイは1人で歩き出した。
だがいつまで経っても聞こえる足音は1つだけ。増える様子がない事に、さすがに違和感を感じていた。
「レフラ?どうした?」
訝しみながらレフラの方を振り返る。それと同時に聞こえたような名を呼ぶ声。聞き間違いか、と確認する前に、咳き込み始めたレフラの身体をギガイは慌てて抱え上げた。
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