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第1章
第32話
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次の日、仕事のある父上に少し愚痴を言われながら母上、サイモン先生、ライナス、リアムと共に人間たちが行く病院へと向かった。
ここの医師はたまたま人違いで連れて来られてしまったらしく最初は大変だったらしいが最近、獣人の伴侶を見つけたみたいでそれなりに上手くやってると聞いた。ここは人間も来るが獣人の子どもも多く来ると聞いた。子ども好きな先生らしい。
ノアには足の痛みを治してもらうには人間が行く病院に行かないといけないからみんなで行こうと言っていたのだが…
「カイくん痛いことしない?怖くない?」
不安そうに俺の服を握りしめながら聞いてきた。
「俺がいるから怖くない。もし痛くても俺が抱きしめてあげるから大丈夫だ」
そう言ったが、ノアはもう泣きそうな顔をしていた。
病院には人間たち数人が診察を待っているところだった。サイモン先生が受付で話すとすぐに案内してもらえた。
「こちらです」
案内された部屋は少し消毒のような匂いがして、白いベットが置いてあった。人間らしき医師が白衣を着て椅子に座っていた。
「こんにちは」
俺より少し年上の医師に声をかけられるとノアは耳を両手で塞ぎ、目を瞑って首を左右に振っていた。
「ノア大丈夫か?」
そう声をかけても耳を塞いでるからか何も答えなかった。その時、医師は病院が嫌いなのかな?それとも嫌な思いをしたのかな?そう言いながら白衣を脱ぎ始めた。違う部屋に案内しますよ。そう言われて付いて行った場所はさっきの無機質な部屋とは違い空色の壁紙に積み木や絵本、ボールなどが置いてあって子ども部屋のようだった。
先生は部屋の真ん中のラグを指差してみんなで一緒に座りましょうと声をかけてくれた。俺の胸元に顔を埋めてるノアを抱っこしながら俺も少し離れた場所に座った。
「ノアくんこんにちは。病院怖いかな?嫌なことがあったのかな?」
先生に声をかけられてもノアは何も答えなかった。すると先生は俺たちの方を向いて少し厳しい口調で聞いてきた。
「ノアくんは人間界から連れて来たんですよね?」
先生に言われて母上が答え始めた。
「はい。ノアは元々人間界にいたんですけど、酷い扱いを受けてて、それでちょっと事情もあって、こっちの世界に連れてきました」
「そうですか…ノアくんのご両親は?許可は?」
「事故で今はもう…」
「そうですか…じゃあ今は1人ぼっちで?かわいそうに寂しいでしょうに…」
そう言うとノアがいきなり大きな声を出した。
「パパとママいるもん。カイくんも、みんないるもん。僕…僕の家族だもん。かわいそうなんかじゃないもん。うわぁ~ん」
と泣き出してしまった。身体を震わせ大きな声で泣くノアを思いっきり抱きしめた。
「そうだノアには俺がいる。みんながいるよな。ノアは1人ぼっちじゃない」
ノアをひしと掻き抱いた。俺の大きな体にすっぽりと隠れるほどの小さな身体を振るわせながら俺の胸元を強く握って泣いていた。
「ノアくんごめんね。先生はそんな意味で言ったわけじゃなかった。泣かせてごめんね」
必死で謝ってくれたが俺はどうにも許せなかった。でも先生は自身のこともあり、こんな小さな子が1人で連れて来られるのは珍しい。国王一家だが俺たちが何か良からぬことを考えて連れてきてしまったのかと思い、つい厳しい口調で言ってしまったと謝られた。でも俺たちも先生に言うわけにはいかなかった。俺の運命だからと…確かにまだ小学生だからな。でもまさかこんなにもノアが大泣きするとは先生も思いもよらなかったのだろう。ただノアに俺たちが家族なんだと言ってもらえて嬉しかった。
ノアが落ち着いた頃にサイモン先生がノアの足の症状を言うと、足触らせてね。と言って足を触ったり、棒のようなもので叩いたりして確認をしているようだったが時折、首を捻っていた。
「ノアくんは足を怪我したことがあるかな?」
そう言うとノアは俺たちに会う前におじさんの家で階段からつき落とされて足を痛くしたと…それからすぐに俺たちの家に来たと教えてくれた。
「そうか…痛かったね。多分その時ちゃんとした治療をしなかったんだろう。腱が炎症を起こしてしまった可能性があるけど、まだ若いから少しお薬を飲んで、足裏の筋肉のストレッチをしようね。あと少しテーピングを巻いて痛みを軽減させてあげよう。歩くリハビリは無理せずにするんだよ」
サイモン先生は医師から処置の仕方を聞いてくれた。ノアは俺の服を掴んだまま部屋を見渡していた。その様子を見ていた先生が
「ノアくん少し遊んで行く?」
と言ってくれるとノアは俺の顔を見上げた。
「ノアは何がいい?」
すると絵本のコーナーを指差した。絵本の前にノアを下ろすと何か探してるようだった。そして1冊の絵本を取り出した。それはうさぎが表紙の絵本だった。
「これ、僕が小さい頃お母さんが読んでくれたの」
思い出が詰まってるんだろう。その絵本を撫でながらノアがポツリと寂しそうに呟いた。ノアを膝に乗せて俺はその絵本をノアに読んであげた。
「森の奥のまた深く…1匹のうさぎさんが住んでいました……」
初めて人に絵本を読んであげた。途中でつっかえたりして、きっとノアのお母さんのように上手に読むことはできなかったと思うがそれでもノアはカイくん読むの上手。と拍手をしてくれた。
「ノアくん、その絵本は先生からのプレゼントだ。思い出の絵本みたいだしな。今日頑張ったご褒美だ」
そう言うとノアは他の子が読めなくなっちゃうからと少し寂しそうな顔をしながら言っていた。本当にノアは優しい子だな。と思ったらリアムがちょっと先に行ってます。と飛び出していった。きっとノアのために絵本を買いに行ってくれるんだろう。その様子をライナスと2人で微笑みあって見ていた。
ここの医師はたまたま人違いで連れて来られてしまったらしく最初は大変だったらしいが最近、獣人の伴侶を見つけたみたいでそれなりに上手くやってると聞いた。ここは人間も来るが獣人の子どもも多く来ると聞いた。子ども好きな先生らしい。
ノアには足の痛みを治してもらうには人間が行く病院に行かないといけないからみんなで行こうと言っていたのだが…
「カイくん痛いことしない?怖くない?」
不安そうに俺の服を握りしめながら聞いてきた。
「俺がいるから怖くない。もし痛くても俺が抱きしめてあげるから大丈夫だ」
そう言ったが、ノアはもう泣きそうな顔をしていた。
病院には人間たち数人が診察を待っているところだった。サイモン先生が受付で話すとすぐに案内してもらえた。
「こちらです」
案内された部屋は少し消毒のような匂いがして、白いベットが置いてあった。人間らしき医師が白衣を着て椅子に座っていた。
「こんにちは」
俺より少し年上の医師に声をかけられるとノアは耳を両手で塞ぎ、目を瞑って首を左右に振っていた。
「ノア大丈夫か?」
そう声をかけても耳を塞いでるからか何も答えなかった。その時、医師は病院が嫌いなのかな?それとも嫌な思いをしたのかな?そう言いながら白衣を脱ぎ始めた。違う部屋に案内しますよ。そう言われて付いて行った場所はさっきの無機質な部屋とは違い空色の壁紙に積み木や絵本、ボールなどが置いてあって子ども部屋のようだった。
先生は部屋の真ん中のラグを指差してみんなで一緒に座りましょうと声をかけてくれた。俺の胸元に顔を埋めてるノアを抱っこしながら俺も少し離れた場所に座った。
「ノアくんこんにちは。病院怖いかな?嫌なことがあったのかな?」
先生に声をかけられてもノアは何も答えなかった。すると先生は俺たちの方を向いて少し厳しい口調で聞いてきた。
「ノアくんは人間界から連れて来たんですよね?」
先生に言われて母上が答え始めた。
「はい。ノアは元々人間界にいたんですけど、酷い扱いを受けてて、それでちょっと事情もあって、こっちの世界に連れてきました」
「そうですか…ノアくんのご両親は?許可は?」
「事故で今はもう…」
「そうですか…じゃあ今は1人ぼっちで?かわいそうに寂しいでしょうに…」
そう言うとノアがいきなり大きな声を出した。
「パパとママいるもん。カイくんも、みんないるもん。僕…僕の家族だもん。かわいそうなんかじゃないもん。うわぁ~ん」
と泣き出してしまった。身体を震わせ大きな声で泣くノアを思いっきり抱きしめた。
「そうだノアには俺がいる。みんながいるよな。ノアは1人ぼっちじゃない」
ノアをひしと掻き抱いた。俺の大きな体にすっぽりと隠れるほどの小さな身体を振るわせながら俺の胸元を強く握って泣いていた。
「ノアくんごめんね。先生はそんな意味で言ったわけじゃなかった。泣かせてごめんね」
必死で謝ってくれたが俺はどうにも許せなかった。でも先生は自身のこともあり、こんな小さな子が1人で連れて来られるのは珍しい。国王一家だが俺たちが何か良からぬことを考えて連れてきてしまったのかと思い、つい厳しい口調で言ってしまったと謝られた。でも俺たちも先生に言うわけにはいかなかった。俺の運命だからと…確かにまだ小学生だからな。でもまさかこんなにもノアが大泣きするとは先生も思いもよらなかったのだろう。ただノアに俺たちが家族なんだと言ってもらえて嬉しかった。
ノアが落ち着いた頃にサイモン先生がノアの足の症状を言うと、足触らせてね。と言って足を触ったり、棒のようなもので叩いたりして確認をしているようだったが時折、首を捻っていた。
「ノアくんは足を怪我したことがあるかな?」
そう言うとノアは俺たちに会う前におじさんの家で階段からつき落とされて足を痛くしたと…それからすぐに俺たちの家に来たと教えてくれた。
「そうか…痛かったね。多分その時ちゃんとした治療をしなかったんだろう。腱が炎症を起こしてしまった可能性があるけど、まだ若いから少しお薬を飲んで、足裏の筋肉のストレッチをしようね。あと少しテーピングを巻いて痛みを軽減させてあげよう。歩くリハビリは無理せずにするんだよ」
サイモン先生は医師から処置の仕方を聞いてくれた。ノアは俺の服を掴んだまま部屋を見渡していた。その様子を見ていた先生が
「ノアくん少し遊んで行く?」
と言ってくれるとノアは俺の顔を見上げた。
「ノアは何がいい?」
すると絵本のコーナーを指差した。絵本の前にノアを下ろすと何か探してるようだった。そして1冊の絵本を取り出した。それはうさぎが表紙の絵本だった。
「これ、僕が小さい頃お母さんが読んでくれたの」
思い出が詰まってるんだろう。その絵本を撫でながらノアがポツリと寂しそうに呟いた。ノアを膝に乗せて俺はその絵本をノアに読んであげた。
「森の奥のまた深く…1匹のうさぎさんが住んでいました……」
初めて人に絵本を読んであげた。途中でつっかえたりして、きっとノアのお母さんのように上手に読むことはできなかったと思うがそれでもノアはカイくん読むの上手。と拍手をしてくれた。
「ノアくん、その絵本は先生からのプレゼントだ。思い出の絵本みたいだしな。今日頑張ったご褒美だ」
そう言うとノアは他の子が読めなくなっちゃうからと少し寂しそうな顔をしながら言っていた。本当にノアは優しい子だな。と思ったらリアムがちょっと先に行ってます。と飛び出していった。きっとノアのために絵本を買いに行ってくれるんだろう。その様子をライナスと2人で微笑みあって見ていた。
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