処刑直前の姫に転生したみたいですが、料理家だったのでスローライフしながら国民の胃袋を掴んでいこうと思います

邉 紗

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プロローグである。大概死ぬのである 2

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篠塚しのづかゆづか、35歳。
会社員。独身。彼氏なし。っていうかいたことない。

乳製品の配達販売の会社で事務をやっている。高給取りではないが自分一人が慎ましやかに生きて行くには充分なお給料だ。

曾祖父から引き継いだ築45年の小さなボロ屋(よく言えば古民家とも言う)で一人暮らし。
趣味は家庭菜園と料理。

地味で口べたで友達も居なくて、会社でも空気のような存在だけれども、SNSの界隈では大人気なのである。
トゥウィッター、インスタグリムでは100万人のフォロワーを抱え、ニヤニヤ動画の『作ってみた』という料理動画投稿では殿堂入りを果たすほどの再生回数を稼いでいる。


家の庭は、小さな家庭菜園となっておりわたしの宝物だ。
可愛らしい野菜やハーブ達に出社前にの水をやり、帰宅したらそれを収穫して夕食を作るのが毎日の楽しみである。会社へ持って行くお弁当も毎日手作りで、夕食の後に次の日の下ごしらえをするのがわたしの日課だ。

会社で日々のお昼が孤独だろうと、インスタグリムにお弁当の写真をアップすれば沢山の人が『イイね』ボタンを押してくれるし、終業後の飲み会に誘われなくても、トゥイッターでただいまって呟けばみんながおかえりって言ってくれる。

そう、わたしは陰キャでありながら同時にリア充なのだ。


今日も定時である17時30分きっかりに仕事を終え、31分にはタイムカードを押し退社をした。

会社から車で15分の自宅に帰る。
夏は畳にアリの行列が見れるし、真冬は風呂場でヒートショックを起こしそうなほど外気との差がなくなるというすきま風バンザイな家であるが、わたしにとって大切な城であった。

八畳の居間にはお気に入りの円卓と座椅子。手の届く位置に料理本を詰め込んだ木製のマガジンラックがある。リモコンもそこに仕舞えるようになっていてお気に入りだ。

肘置きにも枕にもなるサッカーボール三つ分くらいの小型のビーズクッションを脇においてある。それを枕に気ままに寝転び、テレビや雑誌に夢中になっていると知らないうちに寝てしまうことが度々あった。

ふすまで仕切られた隣の四畳半の部屋には、母親のお嫁入り道具だったという古めかしい桐のタンスが、約一畳分占領していた。

直滑降にもってこい、スキー上級コースほどの角度がある階段を上がった先には、物置と化してしまった六帖の部屋がある。

タンスの横に鞄を放り投げると、直ぐにジャージに着替え、踏み割ってしまいそうな縁側からそっと庭にでた。

ジャージは高校の時から愛用している名字の刺繍入りだ。さして運動を積極的にしてこなかった為、ウエストのゴムだけ入れ替えればまだまだ着用できるだろう。膝が擦り切れそうなのが気になるから、今度当て布でもしようかと思っているところだ。
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