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やっぱり異世界転生ってやつ?しかもめちゃくちゃ美人じゃないですか2
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お風呂を出るとタオルらしい布と新しい着替えが置いてあった。着物っぽい服をぴらっと広げるが着方がわからない。
監視役として脱衣所に控えていた女の人数人に、「あのぅ、これどうやって着れば…」と声をかけてみたが、ギロッと睨まれ無視をされた。
仕方がないのでとりあえず体と髪を拭いてそれを羽織ってみる。浴衣の帯のようなものがあるが、わけがわからない。
素知らぬふりをして立っている人たちは緩やかなズボンを履いていた。わたしにはないのか?そして下着もないのかな。羽織が膝丈ほどあるからこれだけなのかも。
疑問だらけであったがわたしがここを出ないと彼女達の仕事が終わらない。
とりあえず帯を抱え「あ、ありがとうございました~…」と首をすぼめながら脱衣所を出た。
出入り口の両端には警備兵が二人。わたしを見ると慌てて視線を逸らす。
みんなしてひどいじゃないか。
悪女も心が入れ替わったんだぞ。っていうか中身入れ替わってるから助けて欲しい。
その先にカウルが腕を組んで待っていた。唯一の味方!
「カウル、あの、お風呂ありがとう…」
まさか待っていてくれていたとは思わず、喜びながら駆け寄ると、カウルは目をひんむいて顔を赤くした。
「……なんて格好をしているんだ!!」
「え?ご、ごめんなさい着方がわからなくて」
「下着とズボンはどうした!」
「え、わたしのズボンもあるの?」
ポカンとしていると、頭を抱えたカウルに「ちょっと来い!」と腕を引っ張られた。強く掴まれ、縄で擦り切れたところが痛んだ。
***
カウルに腕を引かれ、連れられた部屋は草刈りの後や草原が雨に濡れた後のような、青臭い葉の匂いがした。
木製のベッドがいくつも並ぶ。
男の人と女の人がいたが、わたしを見るとカウルに頭を下げ、そそくさと部屋をでてしまった。
「あの、ここは」
「医務室だ」
下着もズボンもちゃんとあったらしい。別の使いの女性が持ってきてくれた服を急いで纏うと、カウルは着物の羽織のようなものだけ着方を教えてくれた。
どうやらシャツのようなインナーを中に着て、着物は軽くはおりズボンとともに帯でとめるらしかった。
カウルはわたしの帯を少し顔を逸らしぎみで締めると、お風呂上がりは嫌がらせで服を隠されてしまったのだろうと言った。
次に木箱を重ねたような棚から何種類かの葉を取り出すとすり鉢のようなものでゴリゴリと潰して傷口に塗ってくれた。
独特な草の匂いは薬だったのか。
「あの、カウルは偉いのに色々してくれるんだね」
こういうのは部下とか、召使いみたいな下の人にやらせるのではないのか。
「他の者にやらせたら嫌がらせで済むなら良い方で、命を狙われ兼ねないからな。リア姫の世話をしたいなどと思う者は城にはいないし、仕方ないだろう」
「……リアってそんなに嫌な奴だったの?名誉挽回するの大変そうだ……」
肩を竦めると、新しい葉をゴリゴリとしていたカウルが顔を上げる。
「本当にリアじゃないのか」
「本当の本当の本当です。わたしは篠塚ゆづかと言います」
カウルは「はぁ、わけがわからない」と髪をぐしゃぐしゃかき混ぜた。
「制裁の直前までは確かにリアだったのに」
「ーーーーたしかに、この世界の記憶はバイクにはりつけにされてたところからだわ」
「お前がゆづかという人物なのは、話していてなんとなく嘘ではないなと感じる。しかし、中身が入れ替わっているなんて、そう簡単には信じられないだろ」
「まぁわたしも、いまだに何が起こっているのかさっぱりなので、理解は出来ます」
「先代が亡くなったのは六年前だ。リアは元々わがままな性格ではあったが、国益を損なうようなことまでし出したのは二年ほど前からだ。どうやら敵国に心を寄せる男が出来たらしい。
城を抜け出して町で遊んで居るときに出会ったらしいのだが、相手が誰かまでは調べきれてないんだ。どうやっても口を割らなくて。そういった記憶もないのか?」
「ごめんなさい。本当に何も覚えてないの」
「まぁ、服の着方もわからないくらいだしな…」
腕から足まで薬を塗り終わると、最後にぶつけた顎に塗ってくれた。
ミントのような香りがして気分が良くなる。
「信じて助けてくれてありがとう。せっかくチャンスを貰ったわけだし、あなたの顔を潰さないようにがんばらないとね。ところで、奉仕作業ってどんなことするの?やれって言われたら肉体労働もがんばるけど、あまり体力に自信はないかな。このリアってこも筋肉無さそうだし」
力こぶでもだしてみようと腕を出すと、細いふにふにの二の腕はふにゃっと曲がっただけだった。
カウルはふっと表情を和らげる。
「本当に、リアと全然ちがうな。姫が何か仕事をするなんてことはなかった」
「だから、ゆづかなんです」
「今までの行いを思い出すと、顔が一緒だから複雑だ…」
カウルは肩をおとしてぼやいた。
監視役として脱衣所に控えていた女の人数人に、「あのぅ、これどうやって着れば…」と声をかけてみたが、ギロッと睨まれ無視をされた。
仕方がないのでとりあえず体と髪を拭いてそれを羽織ってみる。浴衣の帯のようなものがあるが、わけがわからない。
素知らぬふりをして立っている人たちは緩やかなズボンを履いていた。わたしにはないのか?そして下着もないのかな。羽織が膝丈ほどあるからこれだけなのかも。
疑問だらけであったがわたしがここを出ないと彼女達の仕事が終わらない。
とりあえず帯を抱え「あ、ありがとうございました~…」と首をすぼめながら脱衣所を出た。
出入り口の両端には警備兵が二人。わたしを見ると慌てて視線を逸らす。
みんなしてひどいじゃないか。
悪女も心が入れ替わったんだぞ。っていうか中身入れ替わってるから助けて欲しい。
その先にカウルが腕を組んで待っていた。唯一の味方!
「カウル、あの、お風呂ありがとう…」
まさか待っていてくれていたとは思わず、喜びながら駆け寄ると、カウルは目をひんむいて顔を赤くした。
「……なんて格好をしているんだ!!」
「え?ご、ごめんなさい着方がわからなくて」
「下着とズボンはどうした!」
「え、わたしのズボンもあるの?」
ポカンとしていると、頭を抱えたカウルに「ちょっと来い!」と腕を引っ張られた。強く掴まれ、縄で擦り切れたところが痛んだ。
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カウルに腕を引かれ、連れられた部屋は草刈りの後や草原が雨に濡れた後のような、青臭い葉の匂いがした。
木製のベッドがいくつも並ぶ。
男の人と女の人がいたが、わたしを見るとカウルに頭を下げ、そそくさと部屋をでてしまった。
「あの、ここは」
「医務室だ」
下着もズボンもちゃんとあったらしい。別の使いの女性が持ってきてくれた服を急いで纏うと、カウルは着物の羽織のようなものだけ着方を教えてくれた。
どうやらシャツのようなインナーを中に着て、着物は軽くはおりズボンとともに帯でとめるらしかった。
カウルはわたしの帯を少し顔を逸らしぎみで締めると、お風呂上がりは嫌がらせで服を隠されてしまったのだろうと言った。
次に木箱を重ねたような棚から何種類かの葉を取り出すとすり鉢のようなものでゴリゴリと潰して傷口に塗ってくれた。
独特な草の匂いは薬だったのか。
「あの、カウルは偉いのに色々してくれるんだね」
こういうのは部下とか、召使いみたいな下の人にやらせるのではないのか。
「他の者にやらせたら嫌がらせで済むなら良い方で、命を狙われ兼ねないからな。リア姫の世話をしたいなどと思う者は城にはいないし、仕方ないだろう」
「……リアってそんなに嫌な奴だったの?名誉挽回するの大変そうだ……」
肩を竦めると、新しい葉をゴリゴリとしていたカウルが顔を上げる。
「本当にリアじゃないのか」
「本当の本当の本当です。わたしは篠塚ゆづかと言います」
カウルは「はぁ、わけがわからない」と髪をぐしゃぐしゃかき混ぜた。
「制裁の直前までは確かにリアだったのに」
「ーーーーたしかに、この世界の記憶はバイクにはりつけにされてたところからだわ」
「お前がゆづかという人物なのは、話していてなんとなく嘘ではないなと感じる。しかし、中身が入れ替わっているなんて、そう簡単には信じられないだろ」
「まぁわたしも、いまだに何が起こっているのかさっぱりなので、理解は出来ます」
「先代が亡くなったのは六年前だ。リアは元々わがままな性格ではあったが、国益を損なうようなことまでし出したのは二年ほど前からだ。どうやら敵国に心を寄せる男が出来たらしい。
城を抜け出して町で遊んで居るときに出会ったらしいのだが、相手が誰かまでは調べきれてないんだ。どうやっても口を割らなくて。そういった記憶もないのか?」
「ごめんなさい。本当に何も覚えてないの」
「まぁ、服の着方もわからないくらいだしな…」
腕から足まで薬を塗り終わると、最後にぶつけた顎に塗ってくれた。
ミントのような香りがして気分が良くなる。
「信じて助けてくれてありがとう。せっかくチャンスを貰ったわけだし、あなたの顔を潰さないようにがんばらないとね。ところで、奉仕作業ってどんなことするの?やれって言われたら肉体労働もがんばるけど、あまり体力に自信はないかな。このリアってこも筋肉無さそうだし」
力こぶでもだしてみようと腕を出すと、細いふにふにの二の腕はふにゃっと曲がっただけだった。
カウルはふっと表情を和らげる。
「本当に、リアと全然ちがうな。姫が何か仕事をするなんてことはなかった」
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カウルは肩をおとしてぼやいた。
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