処刑直前の姫に転生したみたいですが、料理家だったのでスローライフしながら国民の胃袋を掴んでいこうと思います

邉 紗

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じゃがいも?こうしてこうやってこうしてやる!4

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味を調整し終わったスープに少量の野菜を投入し軽く煮立てておけば完成だ。
あとは、寝かせておいたジャガイモの生地を薄くのばし、ラーメンのように細く切って茹でるだけ。

「ゆであがった麺はこうやって冷たいお水でしめてください」

一度お手本を見せて、茹でる作業は他の人にまかせる。わたしはその間に調味料をつくった。

(沢山食べてもらいたいし、味に飽きないようにしたいな)

チーズとミルクを火を通しながら混ぜて、とろとろのチーズを作る。できあがったじゃが麺ラーメンにかければ、濃厚さとコクを味わえる。

さらにはラー油を用意した。
トウガラシの粉を水で練っておき、鷹の爪を入れて火を付け、香り付けをした油と混ぜれば簡単に出来上がる。火入れの時にごま油とネギが欲しいところであったが、食材を使いすぎるのもよくない。今回はなしで基本の味を作ってみた。

「それはなんだ?」

「ラー油。出来上がったじゃがいもラーメンにお好みでかけてもらうの」

「らーゆ?それは味見しないのか?あとらーめんってなんだ?」

カウルはずっとわたしの後ろでそわそわしている。

「これ辛いよ?」

食べたそうに覗く仕草は子供のようだ。思わず笑みが零れた。




学校の給食みたいに、城のみんなは器を持ってずらりとならんだ。麺を入れる人とスープをよそう人に別れ、次々と食事を配ってゆく。

「ママーまだ食べちゃだめ?」

先に受け取って席についている子供はよだれをたらしながらジャガイモラーメンを見つめた。

「もう少しだけ待っててね」

そういうお母さんもゴクリと喉をならす。

「おかわりはありますので、たくさん食べてくださいね」

わたしはどんどん配った。みんなは不思議そうに器の中を眺める。ああ、早く食べた時のみんなの表情を見たい。感想を聞きたい。
今まで一人で作って一人で食べていたから、そんな風に感じるのは初めてだった。
一口目を食べた時を想像して、ワクワクとする。

警備隊のみんなも受け取り、最後に料理係の人たちもそれぞれ自分の分を取り分けると、わたしも自分の食べる分を貰うと料理長に号令をお願いした。


「さぁ準備はできた。食事にしよう。みんな食べてくれ」

料理長は少し緊張気味に言った。おのおのいただきますと呟いて麺を持ち上げてみたり、スープを一口だけ飲んで不思議そうな顔をしていた。周りを見回して様子を見てから慎重に食べる人もいた。

警備隊は外で訓練をしてきてよほどお腹が空いていたのか、がっつくように食らいつく人が多かった。

「なんだこれ、うめぇ!」

次々と美味しいという声が聞こえてきて、わたしはほっと胸をなで下ろした。

(よかった…)

一度にこんなにたくさん作ったのは初めてであったが、なんともやりがいもあり、楽しいものだ。ひと仕事を終え、充実した気持ちで満たされる。わたしもぐううとお腹がなり、厨房の隅で食べることにした。
椅子がなくて立ち食いになってしまうがまぁ許して貰おう。


スープを一口含む。最初に味見したときより、さらにコクが出ていて、塩気が疲れた体にじんわりと浸透するようだった。
そして麺をつるりと吸い込む。モチモチの弾力。ああ、このコシが癖になるんだよね。ちょっと噛みにく、もきゅっとする歯ごたえとさっぱした喉越しがたまらない。大成功だ。

「くうう、我ながら美味しいいい~」

味わって感動していると、カウルに手招きされる。

「ゆづか、こっちへこい」

そこは警備隊のテーブルだった。

「でも、」

「いいから来い」

「失礼します…」

厳つい男達が一斉に私の方を見た。おずおずとカウルの席の隣に座ると、向かいにいたフェンに舌打ちをされてしまう。

(す、すみません…わてしなんぞが一緒のテーブルに来てしまいまして)

体を小さくしながらも、カウルの隣で黙々と食べた。

(わたし天才。最高。ビバジャガイモラーメン!)

あっという間に平らげてしまう。やっぱり美味しいご飯って幸せ。

「ぼく、おかわりしたい」

小学生くらいの子供が、からになったうつわを持ってきた。わたしは嬉しくなって直ぐに立ち上がる。

「ありがとう!すぐによそうね!」

鍋の前に経つと、おかわりを待っていたひと達が列を作った。わたしはうれしくて笑顔になる。次々とうつわを差し出す人たちに、ありがとうと言いながらよそっていった。
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