処刑直前の姫に転生したみたいですが、料理家だったのでスローライフしながら国民の胃袋を掴んでいこうと思います

邉 紗

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畑でおやつ。ピクニックみたいで最高だわ。7

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ブロロロロ~と、バイクで出発した二人の背中が小さくなる。
切られた髪が風に乗り一本飛んできて、フェンはそれをパシッとつかんだ。

手のひらにのせて眺めると、金の髪は細く柔らかく、透けるほどの美しさを纏っていた。
謝罪で切ったのか?罪滅ぼし?いや、それにしては、なんだか楽しそうにしていたぞ。
あいつからは嫌味も同情も感じられない。
普通剣で切るか?
国宝だぞ。
世界に、ただ一人しかいないと言われる伝説の髪だぞ?いや、たとえ普通の髪だとしても、女があんな適当に切るなんて信じられない。

「意味わかんねぇ…」

思わず呟く。視線を感じはっと顔をあげると、周囲の男どもが俺をじーっと見ていた。

「あ?んだよ、見てんじゃねえよ」

「フェンさん、それ食べないんですか?」

「は?」

「いらないなら俺にください」
「おい抜け駆けすんなよ。俺だって食べたいっつーの!」
「名前なんて言ったっけ?」
「サンドイッチ!」
「そうそれ!フェンさんサンドイッチ分けてくださいよ!」
「いや、俺だ!」

揉みくちゃになって、我先にとムサイ男どもが迫ってくる。ぐわっと何本もの腕が籠に向かって伸びてきて、フェンは慌てて籠を抱えて飛び退いた。


「ばっ…さ、触んじゃねえ!」

「えーだって要らないんでしよ?」
「ゆづかの飯!新作!それが一つしかないとかフェンさん狡いっすよ!」
「食わせろ!」

(お前らは血に飢えたゾンビか何かか!)

目の色を変えて追いかけてくる男達と、籠の中のサンドイッチとやらを見比べ、俺は大口を開けるとそれを一気に詰め込んだ。

「うわーーー!食われたーー!!」
「ゆづかの飯は食わないって言ってたくせにー!!」

男達は頭を抱えて嘆き悲しんだ。

(バカヤロー、争いの火種になりそうなのを残しておけるか)

不本意ながらもモゴモゴと咀嚼する。パンパンに膨れた頬が落ち着いてきたころ、その旨味が口内に広がった。

「うまい…」

こんなに柔らかいパンは食べたことがなかった。なんの力も入れずとも、口の中でしゅわっととろけ、甘みと麦の味が感じられる。

挟まっていた具材は卵であった。細かく砕き、見たことのない白くまったりとしたソースで和えられている。ぷるんとした白身とホロリとした黄身。それらは口の中に纏わり付く感じがするが、一緒に入っているキュウリとレタスがみずみずしく、まったりさを和らげさっぱりと仕上げてくれていた。パンに良く合っている。

「なんだこれ…」

やばい。一つじゃ足りない。もっと食べたい。
そこまで考えてからブンブンと首を振った。

いや、腹が減っていたからだ。

(だから、こんなにも美味く感じるんだ……)

みんなが美味いと伝えたとき、嬉しそうにする彼女の顔を思い出し、とても複雑な気分になった。




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