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わたしってば天才。裁縫もできちゃうんだな。2
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「出来たあああーーー!」
ゆづかの叫びで、カウルははっと目を覚ました。
いつの間にか眠ってしまっていたらしい。
ゆづかは出来上がった“カツラ”という、ものを上下左右からじっくり確かめると、満足げに頷いた。
「やっとできたか……」
椅子に座り頬杖をついて寝ていたため、肘が痛くなっていた。それをさすりながら、出来上がったものを眺める。帽子となる布に、昨日までリアのものであった美しい金髪が、それは丁寧に縫い付けられていた。
「すごいな……」
「でしょう?!わたしは料理が大好きだけど、裁縫も得意なんだなっ」
ゆづかはカツラを手に掛けてくるくると回す。ぱっと見、首と踊っているみたいで奇妙な気持ちになる。
「これを、フェンの妹さんにあげたいの。喜んでくれるかはわからないけど、今までのリアの言動を謝って、わたしなりの誠意をみせなくっちゃ」
ゆづかの気持ちと行動力を、カウルはそれが自分のことのように誇らしく思った。
やはり、ゆづかはリアではない。
「そうか。では、そのように手配しよう。なるべく早くフェンの実家に届くように……」
「え。駄目だよ。これは自分で届けるの」
当たり前のように言うゆづかに戸惑う。
「ーーは?いや、しかし」
「人を介して謝るなんて、社会人としてもってのほか!門前払いだろうが、皿を投げられようが、とにかく自分で謝りに行く。これ当たり前よ」
「は?しゃ、しゃか…?」
ゆづかは、たまにわからない単語を使う。
「とにかく、自分で届けに行くの!今すぐ連れて行って!」
「今すぐ?!」
「そうよ!フェンの実家は、前にそんなに遠くないって聞いたわ。今すぐ出発よ!!」
カウルは寝不足のまま、朝食も取らずに城を飛び出した。ゆづかに至っては一睡もしていないのに、アドレナリン全開でやけに元気であった。
馬小屋ならぬ駐輪場には、各隊員のバイクが並び光っている。ゆづかと二人でそこへ向かうと、整備係の数人がすでに働いていてバイクを磨いていた。
そこでばったり、夜回りから戻ってきたフェンとかちあってしまう。
カウルはしまったと思った。
魔力を込めながらエンジンを掛けるカウルを横目に、「朝っぱらからデートかよ」とフェンは蔑んだ。
カウルは喧嘩になる前に出発しようと、返事をせずにバイクに跨がり出発させた。いらぬトラブルは、基より発生させないに限る。
しかしゆづかは、悪びれもなく「フェンの妹さんに会いに行くの!行ってきますー!」と遠ざかっていくフェンに向かって叫んだ。
カウルはぎょっとした。
何をバカ正直に言っているのだ。想像通り、目の色を変えたフェンが凄い勢いで追いかけてきた。
「は?!てめぇ!何を勝手に……!!待て!おいカウル!!止まれえええ!!」
****
フェン・アゲラタムの実家は、城から比較的近い所にある。城下には商売が盛んな町が広がる。店が建ち並賑やかな通りを抜け、さらに隣町へと続く丘を越えると、森の横に集落がある。そこに見えてくる、テラコッタ色の瓦屋根が敷き詰められた可愛らしい家が、フェンの実家だ。
フェンの両親は、そこで薬草となる植物を集め、街中の薬師に売るという仕事をしていた。
元々父親は、石の切り出しの仕事をしていたらしいのだが、娘の病気を治してやりたくて、薬師の勉強をし転職をしていた。
カウル、ゆづか、フェンの三人は、朝も早くからフェンの実家にいた。
警備隊の総長であるカウルの来訪に加え、国の催しでもなければ、なかなかその姿を目にすることも叶わないという、金の髪の姫まで一緒に現れ、寝起きで出迎えたフェンの両親は、目を白黒とさせていた。
「おい!何しに来たんだよ!」
「フェンっっ総長と姫様になんて口を……!!」
舌打ちをしながら言ったフェンに、両親は恐ろしいものでも見たように顔を真っ青にした。フェンは気にせず、イライラと足を踏みならした。
「出来たあああーーー!」
ゆづかの叫びで、カウルははっと目を覚ました。
いつの間にか眠ってしまっていたらしい。
ゆづかは出来上がった“カツラ”という、ものを上下左右からじっくり確かめると、満足げに頷いた。
「やっとできたか……」
椅子に座り頬杖をついて寝ていたため、肘が痛くなっていた。それをさすりながら、出来上がったものを眺める。帽子となる布に、昨日までリアのものであった美しい金髪が、それは丁寧に縫い付けられていた。
「すごいな……」
「でしょう?!わたしは料理が大好きだけど、裁縫も得意なんだなっ」
ゆづかはカツラを手に掛けてくるくると回す。ぱっと見、首と踊っているみたいで奇妙な気持ちになる。
「これを、フェンの妹さんにあげたいの。喜んでくれるかはわからないけど、今までのリアの言動を謝って、わたしなりの誠意をみせなくっちゃ」
ゆづかの気持ちと行動力を、カウルはそれが自分のことのように誇らしく思った。
やはり、ゆづかはリアではない。
「そうか。では、そのように手配しよう。なるべく早くフェンの実家に届くように……」
「え。駄目だよ。これは自分で届けるの」
当たり前のように言うゆづかに戸惑う。
「ーーは?いや、しかし」
「人を介して謝るなんて、社会人としてもってのほか!門前払いだろうが、皿を投げられようが、とにかく自分で謝りに行く。これ当たり前よ」
「は?しゃ、しゃか…?」
ゆづかは、たまにわからない単語を使う。
「とにかく、自分で届けに行くの!今すぐ連れて行って!」
「今すぐ?!」
「そうよ!フェンの実家は、前にそんなに遠くないって聞いたわ。今すぐ出発よ!!」
カウルは寝不足のまま、朝食も取らずに城を飛び出した。ゆづかに至っては一睡もしていないのに、アドレナリン全開でやけに元気であった。
馬小屋ならぬ駐輪場には、各隊員のバイクが並び光っている。ゆづかと二人でそこへ向かうと、整備係の数人がすでに働いていてバイクを磨いていた。
そこでばったり、夜回りから戻ってきたフェンとかちあってしまう。
カウルはしまったと思った。
魔力を込めながらエンジンを掛けるカウルを横目に、「朝っぱらからデートかよ」とフェンは蔑んだ。
カウルは喧嘩になる前に出発しようと、返事をせずにバイクに跨がり出発させた。いらぬトラブルは、基より発生させないに限る。
しかしゆづかは、悪びれもなく「フェンの妹さんに会いに行くの!行ってきますー!」と遠ざかっていくフェンに向かって叫んだ。
カウルはぎょっとした。
何をバカ正直に言っているのだ。想像通り、目の色を変えたフェンが凄い勢いで追いかけてきた。
「は?!てめぇ!何を勝手に……!!待て!おいカウル!!止まれえええ!!」
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フェンの両親は、そこで薬草となる植物を集め、街中の薬師に売るという仕事をしていた。
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カウル、ゆづか、フェンの三人は、朝も早くからフェンの実家にいた。
警備隊の総長であるカウルの来訪に加え、国の催しでもなければ、なかなかその姿を目にすることも叶わないという、金の髪の姫まで一緒に現れ、寝起きで出迎えたフェンの両親は、目を白黒とさせていた。
「おい!何しに来たんだよ!」
「フェンっっ総長と姫様になんて口を……!!」
舌打ちをしながら言ったフェンに、両親は恐ろしいものでも見たように顔を真っ青にした。フェンは気にせず、イライラと足を踏みならした。
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