処刑直前の姫に転生したみたいですが、料理家だったのでスローライフしながら国民の胃袋を掴んでいこうと思います

邉 紗

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米を食いたいのです!3

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デフとカムが狩りをしている間に、他の男達は簡易的なテントの様な物を張った。

集めた柔らかな葉を地面に敷き詰め、布をかけ布団を造った。木々に紐を梁り、布をかけると目かくしになった。羽虫くらいなら防げるし、布一枚でも気持ちが違う。しかし空間は二畳ほどしかないし、寝るスペースはその半分ほどしか無い。

「みんなで寝るには狭くない?」
「何を言っているんすか、俺達はこんなの要らないですよ。これは総長とゆづかが寝る場所です」
「ええ?!」

なんでカウルとわたしなのだ。

「いいよ。わたし地面で大丈夫だから、カウルが使いなよ」
「そんなこと出来るか。俺が嫌なら一人で使え」
「いやいや!それもちょっと!」

何も働いてないのに、みんなを差し置いて一人だけ豪華なところで寝るっていうのは気まずい。

「なんだ、どうすればいいんだ」

カウルは憮然とした。

「姫様、森は危険なんです。色々なものからお守りするには、総長に付いていてもらうのが一番ですよ。わがまま言ってないで、大人しく総長と寝てくださいよ」

ロットに注意され、首を傾げながらしぶしぶ頷くと、カウルは笑っていた。

「生意気な奴ですまないな。男所帯は大変だろうから、ゆづかにも従者をつけれたらいいんだけどな」

リアにも世話係が居たのだが、リアから毎日のように被害を受けていたらしく、わたしの意識になって以降、1度手伝いはいらないと言ってからは、未だに立候補してくれる人は現れない。

チラッと聞いた話によると、掃除し終わった部屋に油を撒いてやり直しをさせたり、服が少し汚れていただけでクビにしたり。
何より酷かったのが、理容師がリアの希望より少し多く髪を切ってしまった時は、それだけでバイク引き回しの刑にさせたらしい。

どおりで、髪を切ったときにみんなが顔を青くしていたわけだ。
残バラな髪を切りそろえ、整えてくれた理容師も、手が震えてしまっていて可哀想だった。

「従者がいないのはしかたないよ。それに、身の回りの事は一人でできるし、別に無理に欲しいとも思わないから」

部屋の掃除も苦じゃないし、着替えや風呂を手伝って貰うなど、恥ずかしいからどちらかというと居ない方が助かるくらいだ。

「つくづく変わった考え方だ。今までのリアからすると信じられない」

「わたしの世界だと、こういう考え方が普通なんだよ」


ロットが調理器具を取り出してくれると、わたしはうでまくりをした。料理は、唯一わたしが活躍できる仕事だ。
プーリーに火起こしを教わりながら、準備を進め、デフを待った。
暫くすると、大きなウサギのような動物を捕まえて帰ってきた。耳を持たれ、プラーンと体が揺れていた。耳はウサギの様に長いくて、尻尾もウサギのように真ん丸だけれど、手足が長くキツネのようだ。


「こ、これなんて動物?」
「キツネウサギだけど?」
「………」

見た目も名前もそのままだった。

「大物が取れたから捌いてくれ。こいつぁさっぱりしてうめぇんだ」

ずいっと目の前に掲げられ、わたしはおそるおそるそれを受け取った。すでに血抜きをしてあった。

「プーリー、これどんなお肉なの?」
「なんだ。ゆづかは見るの初めてか?あまり町の方に降りてこない動物だから、珍しいかもな。鶏の胸肉みたいにさっぱりした感じだぞ」
「……そっか」

それなら、鍋に合いそうだ。
すでに準備を進めていた鍋は、キノコや葉物がぐつぐつと煮え始めていた。そこに肉が投入できるのなら、良い出汁もでて味に深みが出るだろう。

捌き方もプーリーに教わらなくてはならない。
黄金色の毛はフワフワで、真っ黒な瞳に長い睫毛。ペットにできそうなほど可愛らしい顔にうっとなるが、恵みに感謝をして、板の上に寝かせると、まずは両手を合わせた。

「何をやっているんだ?」

カウルが不思議そうにした。

「食物にありつけたことに感謝をしているの。ありがとうと」

プーリーも目を丸くしていた。

「ゆづかは、本当にゆづかなんだなぁ」

感心したように言われて、わたしは首を傾げながら捌くためのナイフを取った。

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