処刑直前の姫に転生したみたいですが、料理家だったのでスローライフしながら国民の胃袋を掴んでいこうと思います

邉 紗

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米を食いたいのです!4

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キツネウサギは、血抜きをしてあったとは言え、腕が血塗れになるし、魚とは違って骨は硬く、内臓を処理するのも大変な手間であった。

それでも、文句を言わず黙々と捌いていたら、プーリーが「根性あんなぁ!」と褒めてくれた。

森の中。みんなで囲む鍋は、キャンプに遊びに来たような特別な気持ちになった。

鍋を中心に丸くなり、わいわいとしながら頬張った。

味付けは塩しかなかったのだが、山菜や肉が、胃にじんわりと染み通る、優しい味に仕上げてくれていた。

キツネウサギは、プーリーが教えてくれた通り鳥のササミみたいな食感と味で、癖もなく食べやすかった。
見たこともない、わたしの手のひらほどある特大のきのこも投入され、毒きのこだったらどうしようだなんて思いながら、恐る恐る食べたのだが、噛むと椎茸のような、独特な旨味がじわっと口に広がり、わたしは夢中になって食べた。



「ああ、お腹いっぱい!」

ぽっこり膨らんでしまったお腹を撫でる。

「カムよりたべてなかったか?」
「え、そう?」

2回しかおかわりをしていないわたしは、首をかしげた。デフは7回もおかわりをしたし、カウルだって4杯は食べていた。わたしが大食いなんじゃない。カムがもう少し食べた方がいいんだ。

「鍋って美味しいよね!みんなで囲んで食べる鍋ほど楽しいものはないわ」

こんな森の中で、寝れるかと不安を感じていたが、お腹も満腹だし体もくたくただ。横になったら、すぐにでも寝れそうだった。

伸びをしながら、作って貰った寝床に勢いよく倒れた。布の下には、揉むと綿が出てくる変わった植物が大漁に敷き詰められているのだが、想像以上の気持ちよさに、目を輝かせる。

日本でいうと、川辺に生息する、ソーセージのような見た目の、ガマにそっくりだと思った。簡易布団に頬をすり寄せていると、枕元に座ったカウルが頭を撫でた。

「寝心地はどうだ?」

「ふかふかで最高!わたしだけこんな豪華で、申し訳ないくらいだよ」

「さすがに野営は嫌がるかと思ったのに。ゆづかは物怖じしないな」

「みんなでキャンプとかバーベキューって、憧れてたんだよねぇ。今日は鍋だったけどさ。新しい食材にも出会えるし楽しくて仕方ないよ」

「なんだ?そのきゃんぷと、ばー…なんとかってのは」

カウルはまた変な言葉をつかっている、と言いながら隣に寝っ転がった。シングルベッドより幅がないから狭い。腕があたるので、身じろぎして、カウルの為のスペースを造ろうとしたら、カウルはわたしを抱き寄せた。

「狭いな」

「わ、わたし別のところで寝るから、カウルがここを…」

「ロットに怒られたろ。獣や蛇がでるかもしれないから、じっとしていろ」


フェンに襲われて以来、カウルと同じベッドで寝るようになったが、毎日こんなにくっついている訳ではない。半身がカウルの上に乗ってしまっている。カウルの腕が枕になり、体が密着した。

リアの華奢な体は、カウルの大きな体にすぽっと包まれてしまっている。カウルはわたしを抱き締める腕に力を込めると、髪に擽るように鼻をすり、額や頬に軽くキスをした。

「ゆづかは可愛いな。俺が守ってやるから、無茶はするなよ」

(お、おしりがムズムズするーーーー!!)

どう反応していいかわからなかったわたしは、汗をだらだら欠いて硬直した。

カウルは元々、リアに気持ちがあったように思える。
日に日に、愛でられ度があがっていることに、恋愛レベルゼロなわたしは戸惑っていた。
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