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米を食いたいのです!8
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帰り道も、まだ探したいという気持ちは萎まない。
諦め悪く、もしかしたら、このあたりにあるかもしれないなどと、そんな気持ちでキョロキョロ視線を彷徨わせながらの帰路だった。
そんなことをしていたものだから、木の根っこに足をひっかけて転んだり、沼に落ちそうになったり、みんなから逸れそうになったりと、小さなミスをたくさんした。
結局、日暮れにはギリギリ間に合わず、野営は当初の予定していた位置より随分と手前となった。
予定の半分も進んでいない。
暗がりでの食事や野営の準備となってしまい、ここでもみんなに迷惑をかけた。
文句を言っていた若い男の子は、不満げに作業していた。
夕食はまた鍋となる。
葉物とキノコ類はそれなりに集められたが、獣を狩る時間は無く、昨夜より質素になった。たくさん体を動かした働き盛りの男にはちょっと物足りなく、それがさらに不満を募らせた。
みんなが寝静まった夜、みんなに申し訳ない気持ちもちゃんとあって、悶々としながらテント内で休んでいると、火の番を終えたカウルがやって来た。
「カウル。お疲れ様」
起こさないようにと気づかって、そっと入ってきたカウルは、声をかけると驚いた顔をした。
「ゆづか、まだ寝ていなかったのか。どうした? 傷が痛むのか?」
「ち、違うよ。傷は全然大丈夫」
心配した顔が迫った。
転んだ時に傷口を舐められたのを思い出し、お腹の奥をぞくっとさせた。
帰り道、木の根っこに足をひっかけて、スライディングするように転んだ。
膝に擦り傷と、腿の内側に切り傷を作った。
消毒だと言って皮膚を吸われ、膝からだんだん這い上がってくる舌の感触に、「ふぁっ」と、変な声がでてしまったのは一生の不覚。
その後の、みんなの視線と気まずさと言ったら。
カウルはカウルで、「こら、逃げるな。消毒はきちんとしておかないと」などとクソ真面目に語る始末で、自分ばかりが意識しているのがなんとも滑稽であった。
「本当か? ゆづかは子供のように消毒を嫌がるからな」
消毒は嫌じゃない。
舐められるのが恥ずかしいのに、カウルはそれを分かっていない。
「傷を確認するから、足を見せてみろ」
「っだ、大丈夫だってば……!」
狭いテント内で抵抗を試みたものの、片足を肩に担がれるという、あられも無い格好で勝負を終えた。撃沈だ。総長様に力で敵うはずがない。
大開脚をし、捲れ上がった衣服を気にしているのはわたしだけだ。
恥ずかしいから早く足をおろさせて。
「ふむ。血はとまっているようだな」
「ちょっと転んだだけじゃない。大した傷じゃなかったもん。本当に大丈夫だってば」
必死に申し立てをすると、納得したカウルは足をおろして、ふっと表情を和らげた。
「昔のリアは、ちょっと怪我しただけでも、傷跡が残るって大騒ぎだったんだ」
ふと、自分の体を見下ろす。そういえばそうだった。
自分はあまり気にしないたちでも、もしかしたらこの先、リアの意識に戻ってしまう事もあるのかもしれない。
なんで今までその可能性を考えなかったのか。
それならば、人の体を借りているのだから、大切にしなければならない。
腕や足は生傷だらけ。
リアが大切にしていたという髪の毛はボブほどに短くなっているし、以前より確実に日に焼けていた。
いまこの瞬間に体が戻ったら、リアは憤慨するだろう。
もしリアの意識が戻ったら、わたしはどこへいくのかな。
元の世界では死んだと思っていたけれど、それを確かめたわけじゃない。
本当はどうなっているのかな。
リアの意識は眠っているだけで、彼女の意識が戻ったら、わたしは今度こそ、お役御免で死後の世界へ行くとか。
ありがちなパターンを幾つか考えて、やっぱりわからなくて諦めた。
やめやめ、考えたって正解なんてわからないもん。
その時が来たら受け入れればいい。とりあえずわたしは、今を精一杯がんばるしかないのだから。
諦め悪く、もしかしたら、このあたりにあるかもしれないなどと、そんな気持ちでキョロキョロ視線を彷徨わせながらの帰路だった。
そんなことをしていたものだから、木の根っこに足をひっかけて転んだり、沼に落ちそうになったり、みんなから逸れそうになったりと、小さなミスをたくさんした。
結局、日暮れにはギリギリ間に合わず、野営は当初の予定していた位置より随分と手前となった。
予定の半分も進んでいない。
暗がりでの食事や野営の準備となってしまい、ここでもみんなに迷惑をかけた。
文句を言っていた若い男の子は、不満げに作業していた。
夕食はまた鍋となる。
葉物とキノコ類はそれなりに集められたが、獣を狩る時間は無く、昨夜より質素になった。たくさん体を動かした働き盛りの男にはちょっと物足りなく、それがさらに不満を募らせた。
みんなが寝静まった夜、みんなに申し訳ない気持ちもちゃんとあって、悶々としながらテント内で休んでいると、火の番を終えたカウルがやって来た。
「カウル。お疲れ様」
起こさないようにと気づかって、そっと入ってきたカウルは、声をかけると驚いた顔をした。
「ゆづか、まだ寝ていなかったのか。どうした? 傷が痛むのか?」
「ち、違うよ。傷は全然大丈夫」
心配した顔が迫った。
転んだ時に傷口を舐められたのを思い出し、お腹の奥をぞくっとさせた。
帰り道、木の根っこに足をひっかけて、スライディングするように転んだ。
膝に擦り傷と、腿の内側に切り傷を作った。
消毒だと言って皮膚を吸われ、膝からだんだん這い上がってくる舌の感触に、「ふぁっ」と、変な声がでてしまったのは一生の不覚。
その後の、みんなの視線と気まずさと言ったら。
カウルはカウルで、「こら、逃げるな。消毒はきちんとしておかないと」などとクソ真面目に語る始末で、自分ばかりが意識しているのがなんとも滑稽であった。
「本当か? ゆづかは子供のように消毒を嫌がるからな」
消毒は嫌じゃない。
舐められるのが恥ずかしいのに、カウルはそれを分かっていない。
「傷を確認するから、足を見せてみろ」
「っだ、大丈夫だってば……!」
狭いテント内で抵抗を試みたものの、片足を肩に担がれるという、あられも無い格好で勝負を終えた。撃沈だ。総長様に力で敵うはずがない。
大開脚をし、捲れ上がった衣服を気にしているのはわたしだけだ。
恥ずかしいから早く足をおろさせて。
「ふむ。血はとまっているようだな」
「ちょっと転んだだけじゃない。大した傷じゃなかったもん。本当に大丈夫だってば」
必死に申し立てをすると、納得したカウルは足をおろして、ふっと表情を和らげた。
「昔のリアは、ちょっと怪我しただけでも、傷跡が残るって大騒ぎだったんだ」
ふと、自分の体を見下ろす。そういえばそうだった。
自分はあまり気にしないたちでも、もしかしたらこの先、リアの意識に戻ってしまう事もあるのかもしれない。
なんで今までその可能性を考えなかったのか。
それならば、人の体を借りているのだから、大切にしなければならない。
腕や足は生傷だらけ。
リアが大切にしていたという髪の毛はボブほどに短くなっているし、以前より確実に日に焼けていた。
いまこの瞬間に体が戻ったら、リアは憤慨するだろう。
もしリアの意識が戻ったら、わたしはどこへいくのかな。
元の世界では死んだと思っていたけれど、それを確かめたわけじゃない。
本当はどうなっているのかな。
リアの意識は眠っているだけで、彼女の意識が戻ったら、わたしは今度こそ、お役御免で死後の世界へ行くとか。
ありがちなパターンを幾つか考えて、やっぱりわからなくて諦めた。
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その時が来たら受け入れればいい。とりあえずわたしは、今を精一杯がんばるしかないのだから。
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