泣き虫王子はオとしたい

蟻と猿の糸つむぎ

文字の大きさ
20 / 35

20. 猛き子よ、虹光は見ゆるや

しおりを挟む
 

 森の中は夜でもないのに、深い闇に支配されていた。



 ジゼルとラルー、ユフィリスの3人は、体力の続く限り、必死に森を駆けた。

 少女達の手から溢れ出た光の子が、彼女達を先導し暗闇を照らし出す。



「はぁッ…………は、せいじょ、さま!あと、あと、どれくらい、ですか?」

「…………まだ、もうすこし。…………少しでも、遠くへ…………ッはぁ、あそこの…………崖の上にしましょう」



 ふらつくラルーを抱え、荷物を背負い直し、ジゼルと手を繋いで走る、走る。

 小さな光の精霊がまとわりつくように彼女達を巡れば、回復術を唱えたラルーがふぅと息をつき、また走る。



 あれだけいたはずの魔獣は、北に行けば行くほど減っていた。

 全ての獣が逃げ出したかのように森は静まり返り、虫の音ひとつしない。





 やがて、崖の上に辿り着いた。



 眼下には北の山岳から流れ出た湧き水が、大きな川となって轟々と音を立てている。





 遥か後方には鉄壁の要塞。

 必死に走ったつもりだが、それでもまだ、足りないような気がした。





「…………いいや、時間がない。あいつが近づく前に…………始めなければ」



 ガクガクと足が震える。

 普段使わない筋肉を総動員して走ったのだ。恐怖に支配された心臓が、それよりも早い震えを伴ってドクドクと脈打っていた。



「ジゼル、ラルー。準備は良いですか」



 光の子が舞う。

 自分よりもよほど小さな背中が、大きく上下して溢れ出る涙を拭った。



「ぐすッ………………はい、せいじょさま!」



 持ち出した染料を土の上に手分けして塗り広げていく。

 石床よりも吸収速度の速い土の上では、大した大きさの魔法陣は作れない。

 糸と杭を使ってとった正円に、何度も練習し描き慣れた文様をひたすらに刻んでいく。

 刻みながらも口ずさむのは、魔を退ける最も強き祝詞。片手で水晶の入った袋を漁り、聖女の力を描きかけの魔法陣へと次々に充填していく。



「ジゼル、ラルー。入って」



 2人を中心へと促し、ユフィリスは小さな円に乗り出すようにして少女達の頭を撫でた。



「せいじょさま…………あの、ほんとうに」



 ラルーが怯えたようにユフィリスを見上げる。

 最後まで言わせず、ユフィリスはにっこりと微笑んだ。



「もちろんです。さっき話したことは、覚えていますね?ラルー、ジゼル」



 強く噛み締めた唇に、決意の血の玉が滲んでいる。

 ジゼルがラルーの手を取れば、ラルーはごくりと唾を飲み込み、震える声で応えた。



「…………はい、せいじょさま。げんしょののりとを、さいごまで。となえきるまで、けっしてめをあけません」

「だいじょうぶです、せいじょさま。わたし、かんぺきにおぼえました。ラルーがとちっても、おしえてあげられるわ」



「ふふっ……そうだね、ジゼル。…………怖くなったら、ラルーを抱きしめてあげなさい。お互いの呼吸を感じたら、きっと耐えられる。…………頼んだよ」



 聖女はそう言うと、魔法陣を背に跪いた。

 少女達も跪き、手を組んだ気配を後ろに感じる。



 懐から出したカーファイの実をひと思いに口内へと放り込み、ユフィリスは祝詞を唱え始めた。

 やがて溢れ出す光の粒子に、ほんのりと周囲が明るくなっていく。



「天よ、いみじき力宿りて猛り狂ひし子、見ゆるや。あが子の悲しき涙は、見ゆるや。われ守る者なり、魔退けし力給はれ、仇なす心退けし力給はれ」

「…………われは天統ぶる祖の使ひなり。光満ちて、慈悲のしずく降り来たり。われは安寧ねがひし祖の心なり……闇深きにやすらけし光とどけむ。」



 2つの祝詞が重なり合う。

 水晶を握る手が熱く燃え、清涼なる神聖力をみるみる奪っていく。



「天の御心のままに、禍を祓わん」

「然らば祖の心、かしこかしこみて承らむ。天の御心、ここにまします」



 魔法陣がぼんやりと七色に輝き、2人の少女を覆っていく。その中心から絡み合う2つの光が、1筋の線となって真っ直ぐに空中へと立ち上っていった。







 ――――雷龍、ライデンストリア



 古より存在せしその大いなる存在は、昔、人と共にあった。

 空に輝く稲妻とおなじ、白金の鱗を持つ美しき龍。



 誰もが跪き慈悲を乞うた。強き力は畏れとともに、人々を守る盾として、瘴気迫りくる地を長い間守ってきた。



 ――――かつてのノースフォートを滅ぼす、その時まで。







 黒き巨体が羽ばたく。

 龍は抑えきれない怒りに、猛り狂っていた。



 昔、滅ぼしたはずの砦に、焔が灯っている。





 泳ぎ慣れた空の上、暗雲立ち込める稲妻の中を、龍は泳ぐ、泳ぐ。



 一刻も早くその灯りを消し去りたい。



 そうでなければ堪らなかった。腹の底から湧き上がる何かに、深く支配され、自身を見失ってしまいそうだったからだ。





 しかしもうすぐ砦というところで、龍は、暗闇の中に一筋の光を見つけた。



 人の匂い。



 しかもそれは、恐怖と勇気、何の理由もない大きな自信に支配された、龍の最も嫌いな人間の匂いであった。



 人間への憎しみ、恨み、嫌悪、赫怒…………狂おしいほどの感情に襲われる。

 己を苛立たせる人間どもは、一匹のこらず抹殺しなければならない。龍は焔灯る懐かしき砦へと向かおうとしていた巨体を翻し、七色の光が差す場所へと方向を定めた。







 …………かつて、人と共にあった龍は、しかし人と対峙し、その砦を自らの手で滅ぼした。





 悔しい。悔しい。悔しい。



 大切であったはずの小さき命が、聖なる稲妻に焼け焦げていく。

 この悔しみを、誰が理解できよう。



 刃を手に群がる人間達。我の血肉に群がる人間達。

 かつての記憶が蘇り、喉の奥底からふつふつと、言い知れぬ怒りが沸き起こる。





 ……行き行けば、虹のたもとには、小さき光があった。

 その光は黒き龍が現れたのにも気づかず、鳥のさえずるような声で何かをひたすらに、語りかけている。





『わが入らむとする道は、いと暗うやと思ふ。せめて見れば、ただ一筋のみ明けし。行き行けば、虹の下に至りぬ』





 …………これは、なんぞ。

 どこかで聞いたことのある、言葉だ。それは祈りのようでもありながら、何かの物語のようでもあった。

 龍は一瞬、憤怒も忘れて、その言葉の意味を咀嚼した。



 よくよく目を凝らせば、小さな光の中には小さな3匹の人影が見える。

 焼け焦げもせず、武装もしていない。その跪く姿は、かつて自分を信奉していた心安き民の姿と意図せずして重なった。



『出づる水のいと清らなれば、すくいのみて思い及ぶ』



 どこに清らな水があろうか。龍は己を振り返った。

 …………かつて、龍は清き水を呼ぶ天の呼び笛であったのに。人に汚されしこの身は、もう瘴気を祓う力すらない。

 我にあるのは恨みと憎しみ。白金色の鱗には、もう血の跡が残るだけである。



 光の中よく見れば、人間のうちの2匹は人間の中に現れるという、魔を祓う聖女であった。

 大きな虹を背負い、七色の翼にも見える光の粒子を1つの絆のように絡め合い、天高くにまで広げている。



 もう1匹はしかし、聖女ではなかった。

 小さく、今にも消えそうなぼんやりとした光の中……ただひたすらに、震え祈っている。





 ……人心の、げに弱しや。





 龍は何の感慨もなく、己の尾を振り回した。



 轟音と共に、崖が弾け飛ぶ。

 大きくえぐり取られた壁面に、龍は脆き人間達の死を確信した。





 ――――バヂリッ





 ……しかしその小さき命達は、なぜか変わる事なく、そこにただ跪いていた。





『さあれど、我もまた然り。人の世の理を知らざれば、知りはじめてにうち驚きて、ひとり惑へどもかひなし』



 …………なぜ、壊れない。



 龍は不思議に思った。

 小さき聖女達は、目を瞑っていた。恐れなどないように。信じるものにただ、突き進むように。



 龍はもう一度、尾を揮った。



 ――――バヂリ



 何かに弾かれるような感触。そこでようやく龍は、聖女達が周囲に漂うぼんやりとした光によって護られていることを知った。



『いとけなき命の、げに尊きや。知らでいかで背く』



 ……いとけなき命は、尊きや?

 知らで背いたのではない。……知って、背いたのだ。

 龍は人の醜さを知った。人の心の弱さを知り、己の愚かさを知った。



『わが身をなす光より、慈悲のしずくもたらしき』



 どうして人は、愚かなのだろう。我の慈悲は、無意味だったのか。

 龍の心に再び、悲しみが去来する。



 ――――バヂリ



 振るった爪が光に妨げられる。



 龍は、心のままに慟哭した。

 それは暗い暗い憎しみに勝る、強い強い悲涙であった。





「…………天よ。いみじき力宿りて、猛り狂ひし子、見ゆるや。あが子の悲しき涙は、見ゆるや」





 ―――その時。小さくちっぽけな人間の、震える小さな祈りが聞こえた。



 …………天よ。いみじき力宿りて、猛り狂ひし子、見ゆるや。あが子の悲しき涙は、見ゆるや。



 龍は衝撃を受けた。いみじき力とは、自分のことだろうか。猛り狂ひし子とは、自分のことだろうか。あが子の悲しき涙…………しかし、龍は泣いてなどいなかった。悲しくて悲しくて、しかし涙など流れなかった。



 ……悲しみが憎しみに。憎しみが怒りに。

 怒りは憤怒となり、龍の全身を支配していたのだ。





 ――――我の悲しみは、見ゆるや。





 龍は確かに悲しんでいた。

 悲しくて悲しくて、いつしかそれが憎しみに、恨みに、怒りに変わってしまったけれど。





 ――――我の悲しみは、誰にぞ見ゆる。



 …………その呟きが聞こえた訳でもないだろう。

 しかしふと、小さきちっぽけな人間が、汗に塗れた顔を上げた。



 七色に光る砂粒のような瞳。あふれ出る涙に宿る、小さな小さな……薄ぼんやりとした、光の粒子。



「われ、守る者なり。魔退けし力、給はれ。仇なす心、退けし力、給はれ」



 白金色の髪が揺れる。虹色の光が、溢れ出す。



 ……それは神の色。かつて、雷龍がその身に宿せし鱗と同じ、光の色であった。



『光享くる、乙女は、見ゆるや』



 ――――ああ、見える。



『わが猛き子よ』



 ――――いいや、違う。 

 わたしはもう、あなたの猛き子ではない。



 ――――猛り狂ひし子。





 ……龍はかつて、神の使いであった。



 白金の鱗は神の慈悲に等しく、天貫く稲妻は、神の恵みをもたらす大地への呼び笛であった。



 ――――だが、殺してしまった。滅ぼしてしまった。



 人間は弱きものと……弱き心こそ、神の魅る愛であると……知っていたはずなのに。



『そは、汝が憂ひ払はむ。弱き心にこそ清き願い宿り』



 ――――ああ、神様。



 悔しい。悔しい。





 ――――そは、我が思ふ、心に等し。



 龍は深い慟哭の声を上げた。



 大地は揺れ、轟音と共に雷鳴が轟く。

 激しい感情に浚われた魂が、深い深い懺悔に沈んだ。



『然らば、闇深き地にも、安寧の光とどけしむ』



 ああ、神様。

 禍々しき黒き龍となったわたしを、どうか消し去ってください。



 闇に沈みしは悲しみに暮れ、光宿りしは喜びに震え。―――それが、創造神たる光の御心であったのに。

 ただ弱き人の営む、全てのものが、神の願いであったのに。



「天の御心のままに、禍を祓わん」



 瘴気に侵されしこの地を、どうか安寧に導いてください。

 わたしの願いは、あなたの願いと同じだったのだから。





『猛き子よ、虹光は見ゆるや』



 ――――ああ、見える。







 ――――然らば、共に行きて見よう。



 われ願いて、世にかてあらなむ。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界へ五人の落ち人~聖女候補とされてしまいます~

かずきりり
ファンタジー
望んで異世界へと来たわけではない。 望んで召喚などしたわけでもない。 ただ、落ちただけ。 異世界から落ちて来た落ち人。 それは人知を超えた神力を体内に宿し、神からの「贈り人」とされる。 望まれていないけれど、偶々手に入る力を国は欲する。 だからこそ、より強い力を持つ者に聖女という称号を渡すわけだけれど…… 中に男が混じっている!? 帰りたいと、それだけを望む者も居る。 護衛騎士という名の監視もつけられて……  でも、私はもう大切な人は作らない。  どうせ、無くしてしまうのだから。 異世界に落ちた五人。 五人が五人共、色々な思わくもあり…… だけれど、私はただ流れに流され…… ※こちらの作品はカクヨムにも掲載しています。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

奥様は聖女♡

喜楽直人
ファンタジー
聖女を裏切った国は崩壊した。そうして国は魔獣が跋扈する魔境と化したのだ。 ある地方都市を襲ったスタンピードから人々を救ったのは一人の冒険者だった。彼女は夫婦者の冒険者であるが、戦うのはいつも彼女だけ。周囲は揶揄い夫を嘲るが、それを追い払うのは妻の役目だった。

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

【完結】偽物聖女として追放される予定ですが、続編の知識を活かして仕返しします

ユユ
ファンタジー
聖女と認定され 王子妃になったのに 11年後、もう一人 聖女認定された。 王子は同じ聖女なら美人がいいと 元の聖女を偽物として追放した。 後に二人に天罰が降る。 これが この体に入る前の世界で読んだ Web小説の本編。 だけど、読者からの激しいクレームに遭い 救済続編が書かれた。 その激しいクレームを入れた 読者の一人が私だった。 異世界の追放予定の聖女の中に 入り込んだ私は小説の知識を 活用して対策をした。 大人しく追放なんてさせない! * 作り話です。 * 長くはしないつもりなのでサクサクいきます。 * 短編にしましたが、うっかり長くなったらごめんなさい。 * 掲載は3日に一度。

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている

潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

処理中です...